座りっぱなし1時間ごとにがん死亡リスク9%増 9万人の加速度計研究で判明
30分以上続く「座りっぱなし」が1日1時間長いごとに、がんによる死亡リスクが9%高かったと、英国の9万1,292人を約12年追跡した研究が報告した。同じ1時間を軽い活動に置き換えるとリスクは12%低い関連がみられたが、観察研究のため因果関係は証明されていない。
30分以上続けて座る「座りっぱなし」が1日1時間長いごとに、がんによる死亡リスクが9%高い関連がみられた。英グラスゴー大学などの研究チームが、英国の大規模研究「UKバイオバンク」の参加者9万1,292人の加速度計データを中央値12.38年追跡した結果を、2026年7月に医学誌『PLOS Medicine』で発表した。

「座りっぱなし」と「こまめに立つ座り方」はどう違う?
この研究の特徴は、座っている時間を「続け方」で2種類に分けた点である。自己申告ではなく、手首に7日間装着した加速度計の記録を機械学習で分類した。
- 座りっぱなし(長時間の座位):30分以上続き、その時間の90%以上を座って過ごした状態
- 途切れのある座位:30分未満で終わる、または立ち上がりなど座位以外の動きが10%を超える状態
つまり同じ「1日8時間座る人」でも、30分ごとに立って歩く人と、何時間も続けて座る人は別のグループとして扱われている。
がんのリスクはどれくらい違ったのか
年齢、性別、喫煙、飲酒、食事内容などを調整したうえで、1日あたり1時間の増加ごとのリスク(ハザード比)は次の通りである。
| 指標(1日1時間増えるごと) | 座りっぱなし | 途切れのある座位 |
|---|---|---|
| がんによる死亡 | 9%高い(1.09) | 18%低い(0.82) |
| がん全体の発症 | 3%高い(1.03) | 6%低い(0.94) |
| 肥満に関連するがんの発症 | 5%高い(1.05) | 9%低い(0.91) |
同じ「座っている時間」でも、続け方によって関連の向きが逆になった点が目を引く。
座る時間を何に置き換えればいい?
研究チームは、座りっぱなしの時間を別の活動に置き換えた場合も試算している(アイソテンポラル置換モデル)。
- 座りっぱなし1時間を軽い活動(ゆっくり歩く、家事など)に置き換えると、がんによる死亡リスクが12%低い(ハザード比0.88)
- 30分を中強度の活動(早歩きなど)に置き換えると8%低い(0.92)
- わずか5分を高強度の活動に置き換えると、2型糖尿病に関連するがんの発症リスクが11%低い(0.89)
筋トレをしている人でも、仕事中に何時間も座り続けていれば「座りっぱなし」の時間は長くなる。ジムでの1時間とは別に、日中の座り方も見直す価値があることを示すデータである。
この研究の限界は?
本研究は観察研究であり、座りっぱなしががんの原因であるという因果関係を証明したものではない。論文自身も、調整しきれない交絡因子、健康意識の高い人が参加しやすい「健康ボランティアバイアス」、加速度計の装着が7日間だけで長年の習慣を表しきれない可能性、テレビ視聴か運転かデスクワークかといった座る場面の情報がない点を限界として挙げている。参加者の平均年齢は56.0歳で、日本人や若い世代にそのまま当てはまるとも限らない。
運動と寿命の関係については、ハーバード大学の約15万人追跡研究を解説した「筋トレ週90〜120分で死亡リスク13%低下」もあわせて読みたい。
よくある質問
座っている時間の合計が同じなら、リスクも同じ?
この研究では同じではなかった。30分以上続く座位は死亡リスクの上昇と、30分未満で途切れる座位は低下と関連していた。
ジムで筋トレしていれば座りすぎは帳消しになる?
この研究は運動習慣で座りすぎが相殺されるかを直接検証していない。ただ、座りっぱなしの時間そのものを短くすることに意味がある可能性を示している。
何分ごとに立てばいい?
研究の定義では、30分以上続く座位を「座りっぱなし」としている。目安として、30分に1回は立ち上がって少し動く工夫が考えられる。
KINNIKU TIMESの視点
週に数回ジムに通っていても、残りの時間をデスクで座り続けていれば、この研究でいう「座りっぱなし」は長くなる。スマートウォッチの座りすぎ通知を30分に設定する、トイレや給水のついでに1〜2分歩く、電話は立って受けるといった小さな工夫なら、トレーニングの回復を邪魔することもない。筋トレは「週に数時間の積み上げ」、座り方は「毎日の分散」と考え、両方を習慣にしたい。
出典:Zhou Zほか, PLOS Medicine(2026年7月2日)/ScienceDaily(2026年9月2日)