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ストレッチで筋肉は大きくなる?25研究・710人のメタ分析、鍛えた人で小さな効果

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
マットの上で脚のストレッチをする女性
SUMMARY|この記事の要約

静的ストレッチだけで筋肉が大きくなる効果は、25研究・710人のメタ分析で標準化平均差0.118と「ごくわずかで不確か」だった。一方、トレーニング経験者では0.424の小さな効果がみられ、1回・1週間あたりのストレッチ時間が長いほど筋肥大が大きい傾向も示された。

静的ストレッチを続けても、筋肉を大きくする効果は全体としてはごくわずかである。ファビアン・アルンツ(Fabian Arntz)らの国際研究チームが2024年9月28日、学術誌『Sports Medicine - Open』に、健康な人を対象とした25研究・710人のデータを統合したメタ分析を発表した。筋肥大への効果は全体では「不確か」だったが、トレーニング経験者に限ると小さな効果が確認され、ストレッチの時間が長いほど筋肥大が大きい傾向も示された。

静的ストレッチと筋肥大のメタ分析、トレーニング状況などのサブグループ別の効果を示した図
図:Arntz F ほか『Chronic Effects of Static Stretching Exercises on Skeletal Muscle Hypertrophy in Healthy Individuals: A Systematic Review and Multilevel Meta-Analysis』Sports Medicine - Open(2024)Figure 7(筋肥大に対するカテゴリー別サブグループ解析)/出典:Sports Medicine - Open/ライセンス:CC BY 4.0(改変なし)

どんな研究か?対象者と方法

研究チームは、健康な人が静的ストレッチ(筋肉を伸ばした姿勢で一定時間保つストレッチ)を継続的に行った研究を系統的に集め、多層メタ分析という手法で効果を統合した。対象は25研究・計710人で、1研究あたりの人数は9〜58人(中央値23人)。筋肥大の測定は、すべての研究で超音波(Bモード)による評価だった。共著者には、筋肥大研究で知られるブラッド・シェーンフェルド(Brad J. Schoenfeld)氏も名を連ねる。

ストレッチで筋肥大する?全体の結果は「ごくわずか」

主な結果は次の通りである。効果量は標準化平均差(SMD)で示し、一般に0.2未満はごく小さい、0.2〜0.5は小さい、と解釈されることが多い。

評価項目 効果量(SMD) 95%信頼区間 論文の解釈
筋肥大(全体) 0.118 0.023〜0.213 ごくわずかで不確か
関節可動域(柔軟性) 0.698 0.526〜0.870 明確な中程度の効果

統計的には有意(p=0.017)だったものの、効果の大きさはごく小さく、予測区間はマイナスからプラスまで広がっていた。著者らは全体としての効果を「不確か」と結論づけている。柔軟性を高める効果ははっきりしている一方、筋肉を大きくする手段としては力不足といえる。

効果が出やすいのはどんな人・やり方?

トレーニング状況別に分けると、結果に差が出た。

  • 運動習慣のない人:−0.081(不確か)
  • レクリエーションとして運動する人:0.115(不確か)
  • トレーニング経験者:0.424(明確な小さな効果)

また、メタ回帰分析では、ストレッチ種目の数が多いほど、1回あたりの保持時間、1セッションあたり・1週間あたり・期間全体のストレッチ時間が長いほど、筋肥大が大きくなる関連がみられた。著者らは「長い時間をかけない限り、静的ストレッチは筋肥大を促すうえで高い効果はないかもしれない」としている。なお、柔軟性の向上と筋肥大の大きさの間には関連はみられなかった。

研究の限界は?

含まれた研究は方法や対象者がまちまちで、女性だけを対象にした研究は2件にとどまり、男性だけの研究が15件を占めた。測定方法も超音波に限られる。トレーニング経験者で効果が大きかった理由も、この分析だけでは説明できない。筋肉を伸ばした位置で負荷をかける「ストレッチ種目」の研究とは別の話である点にも注意したい。伸ばした位置でのトレーニングについては伸ばした位置での「半分レップ」の記事や上腕三頭筋を頭上で伸ばして鍛える研究の記事で紹介している。

よくある質問

ストレッチだけで筋肉は大きくなる?

25研究のメタ分析では、効果はごくわずかで不確かだった。筋肉を大きくしたいなら、筋トレの代わりにはならない。

ストレッチは長くやるほど筋肥大に効く?

明確な基準は示されていないが、1回の保持時間や週あたりの合計時間が長いほど筋肥大が大きい傾向がみられた。短時間のストレッチでは筋肥大はほぼ期待できない。

筋トレ経験者のほうが効果は大きい?

トレーニング経験者では効果量0.424の小さな効果が確認され、運動習慣のない人より大きかった。ただし理由はまだわかっていない。

KINNIKU TIMESの視点

静的ストレッチは柔軟性を高める手段としては有効だが、筋肉を大きくする主役にはならない。筋肥大が目的なら、まずは筋トレの量と質を確保することが先決である。そのうえで、すでに筋トレを続けている人が、伸びにくい部位の補助として長めのストレッチを取り入れるのは、試す価値がある選択肢といえる。短時間で済ませるのではなく、対象の筋肉をじっくり伸ばす時間を積み重ねる意識を持つとよいだろう。


出典:Arntz F, et al. Sports Medicine - Open 10, 106(2024年9月28日)