伸ばした位置での「半分レップ」でも筋肥大はフル可動域と同等。経験者25人の8週間比較
筋肉が伸びた位置だけを使う「レングスンド・パーシャル」とフル可動域を、同じ人の左右の腕で比べた8週間の研究で、上腕の筋厚の伸びはほぼ同じだった。研究チームは「筋肥大には伸展位を重視すべき」と結論づけている。
可動域は常に「フル」でなければならないのか。筋肉が最も伸びた位置の付近だけで動作を繰り返す「レングスンド・パーシャル(伸展位での部分可動域)」は、近年トレーニーの間で話題となっている手法である。ブラッド・シェーンフェルド博士らの研究チームは、筋トレ経験者を対象にこの手法とフル可動域を比較し、上腕の筋肥大に明確な差はなかったとする結果を2025年2月、学術誌「PeerJ」に発表した。著者には科学派YouTuberとして知られるジェフ・ニパード氏も名を連ねている。
対象者と方法
対象は筋トレ経験のある健康な男女で、30人が参加し、25人(男性19人、女性6人)が最後まで完了した。平均のトレーニング歴は約5年である。左右の腕を無作為に「部分可動域」と「フル可動域」に割り当てる「個人内比較」で、体質や食事など個人差の影響を抑えた設計となっている。

プログラムは週2回、8週間。マシンチェストプレス、ダンベルロウ、ダンベルオーバーヘッドトライセプスエクステンション、ケーブルプッシュダウン、各種カールなど、片腕ずつ行える上半身の8種目を使い、1回につき4種目・各4セット、すべて限界まで行った。部分可動域側は、下ろしきった位置(筋肉が伸びた位置)から本人のフル可動域の約50%までを往復する「半分レップ」とした。両条件とも、伸展位で1秒間止めるよう指示されている。筋厚は超音波で上腕二頭筋側(肘屈曲筋群)と上腕三頭筋側(肘伸展筋群)を測定した。
結果:筋厚の増加はほぼ同じ
8週間後の筋厚の変化は次のとおりである。
| 測定部位 | 部分可動域 | フル可動域 |
|---|---|---|
| 肘屈曲筋群(上腕の45%地点) | +1.4mm | +1.2mm |
| 肘屈曲筋群(同55%地点) | +1.8mm | +1.8mm |
| 肘伸展筋群(同45%地点) | +2.6mm | +3.1mm |
| 肘伸展筋群(同55%地点) | +1.9mm | +3.0mm |
三頭筋側ではフル可動域がやや大きい数値だったが、差の推定値の幅は大きく、明確な優劣とは言えない。ベイズ流の分析では、すべての指標で「差がない」という仮説を中程度に支持する結果(ベイズ因子0.16〜0.39)となった。片腕ラットプルダウンの10RMも、両条件で同程度に向上した。
研究の限界
著者ら自身も多くの限界を挙げている。経験者の微小な差を検出するには人数が少ない可能性、8週間という期間の短さ、測定が上腕に限られ下半身には当てはまらない可能性、参加者ごとの可動域が厳密には統一されていない点などである。また今回のフル可動域条件も伸展位を強調していたため、「伸展位を含むこと」自体が重要であった可能性がある。「部分可動域の方が優れている」という結論ではない点には注意が必要だ。
KINNIKU TIMESの視点
この研究から読み取れるのは、「可動域の広さ」よりも「筋肉が伸びた位置で負荷をかけること」が重要である可能性だ。実践では、まず基本としてフル可動域で下ろしきった位置をしっかり使うことを優先したい。そのうえで、セット終盤にフルレンジが挙がらなくなったら、下の半分だけで数回追加するといった使い方は、追い込みの選択肢として検討に値する。肘や肩に痛みが出る場合に、上の可動域を省く代替案としても考えられる。一方で、下半身や長期間での検証はまだ十分とは言えず、すべての種目を半分レップに置き換える根拠にはならない。以前紹介した「上腕三頭筋は頭上で伸ばして鍛えると太くなる」という研究とも共通する、「伸展位」を意識した種目選びが鍵となりそうだ。
出典:Wolf M, et al. Lengthened partial repetitions elicit similar muscular adaptations as full range of motion repetitions during resistance training in trained individuals. PeerJ(2025年2月12日)/同論文 全文(PMC)