フォームローリングは本当に効く?32件のレビューで可動域改善を確認
フォームローリング(セルフ筋膜リリース)は、32件の研究を統合したメタ分析で可動域(ROM)を効果量d=0.76と大きく改善することが確認された。
一方、筋力やジャンプ力など競技パフォーマンスへの直接的な向上効果は、研究結果が一致していない。
フォームローラーを使ったセルフ筋膜リリース(フォームローリング)は、関節の可動域(ROM)を大きく改善する効果があると、32件の研究を統合した2020年のメタ分析で確認された。一方で、筋力や跳躍力といった競技パフォーマンスへの直接的な向上効果は、研究結果が一致していない。
フォームローリング(セルフ筋膜リリース)とは何か
フォームローリングとは、円柱状のフォームローラーに自分の体重を乗せ、筋肉や筋膜を圧迫しながら転がす手法である。専門家が手で行う筋膜リリースを自分一人で行えることから「セルフ筋膜リリース(SMR)」と呼ばれ、トレーニング前のウォームアップや、トレーニング後の回復手段として、ジムや競技現場で広く使われている。
可動域(ROM)にはどれくらい効果があるのか
英国ノーサンプトン大学の研究者らが、2005年から2018年6月までに発表された研究をMEDLINE・PubMed・EMBASE・SPORTDiscus・Science Directで検索し、32件を抽出してシステマティックレビューを行った(研究の質を示すPEDroスコアは平均5.56)。このうち、可動域を検証した13件の研究・18データセット(対象者計330人)を統合したメタ分析では、統合効果量は d=0.76(95%信頼区間0.55〜0.98)と大きな効果を示し、すべての研究でローリング後に可動域が改善していた。ただし、この効果が長期間続くかどうかまでは、今回のレビューでは確認されていない。
| 指標 | 統合した研究・データ | 結果 |
|---|---|---|
| 可動域(ROM) | 13研究・18データセット・330人 | 効果量d=0.76(大きな効果)、全研究で改善 |
| 回復(DOMS等) | 5研究 | 72時間までのDOMS軽減に役立つ可能性 |
| 実験室でのパフォーマンス | 14研究 | 7件で有意な改善、7件で有意差なし |
筋肉痛・運動後の回復への効果は
回復を検証した5件の研究では、下肢に毎日フォームローリングを行うと、運動後最大72時間まで、何もしない場合と比べて筋肉痛(DOMS)の軽減に役立つ可能性が示された。ただし、むくみ(腫れ)や筋肉が収縮する際の特性そのものには、明確な効果は見られなかった。乳酸の除去については、安静にしているだけの回復より良好だったが、軽いランニングと同程度の効果だったという。なお、アイシングや交代浴など他の回復法と直接比較した研究は今回のレビューには含まれておらず、どちらが優れているかは分かっていない。
挙上重量やジャンプ力への影響は
運動前に最大120秒程度フォームローリングを行っても、競技フィールドでのパフォーマンスに悪い影響は見られなかった。一方、実験室での測定指標(筋力・パワーなど)を検証した14件の研究では、7件が有意な改善を示し、7件は有意差がないという、結果が分かれる内容だった。可動域の改善以外について、パフォーマンスが直接向上すると結論づけることはこのレビューではできないとされている。最大酸素摂取量を調べた研究はなかった。有害な影響を報告した研究もなく、性別による効果の差も見られなかったが、女性の参加者自体が少なかった点には注意が必要である。
よくある質問
フォームローリングだけで筋肉は大きくなりますか
このレビューでは筋肥大そのものへの効果は検証されていない。筋力トレーニングを補う手段として位置づけ、筋肥大・筋力向上の主役はあくまでレジスタンストレーニングと考えるのが適切である。
毎日行っても問題ありませんか
レビュー対象の研究では下肢に最大72時間毎日行っても害は報告されていないが、強い痛みやしびれがある場合は使用を控え、医師や理学療法士など専門家に相談することが望ましい。
KINNIKU TIMESの視点
今回のメタ分析からは、トレーニング前に1部位あたり120秒程度フォームローリングを行っても、パフォーマンスを落とす心配は小さいとみられる一方、筋力・パワーそのものを直接伸ばす手段としては過信しないほうがよいことが読み取れる。可動域を広げるウォームアップの一環として取り入れ、トレーニング後は筋肉痛の軽減を目的に下肢を中心に行う、という使い分けが現状のエビデンスに沿った実践と言えそうだ。関節や筋肉に持続的な痛みがある場合は、無理に続けず専門家の診断を受けることを優先したい。
出典:Skinner B, Moss R, Hammond L. "A systematic review and meta-analysis of the effects of foam rolling on range of motion, recovery and markers of athletic performance." Journal of Bodywork and Movement Therapies 24(3):105-122(2020)(University of Northampton NECTARリポジトリ・オープンアクセス版)/関連記事:筋肉痛(DOMS)はなぜ起こる?遅発性筋肉痛の原因とケア方法
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