懸垂は順手と逆手で何が変わる?19人のEMG研究、二頭筋より僧帽筋に差
懸垂の順手・逆手・ニュートラルグリップを比較した筋電図研究で、上腕二頭筋の活動量に統計的な差は確認されなかった。僧帽筋中部のみ、順手グリップで有意に高い活動(60.1%MVIC対37.1%MVIC、P=0.004)を示した。
懸垂(プルアップ/チンアップ)の握り方を順手・逆手・ニュートラルと変えても、上腕二頭筋の筋活動量に統計的な差は見られなかった。筋力トレーニング経験者の男性19人を対象にした筋電図(EMG)研究で判明し、2016年11月に学術誌『Journal of Electromyography and Kinesiology』に掲載された。
どんな研究?順手・逆手・ニュートラル・ロープの4種類を比較
研究を行ったのは英ウィンチェスター大学の研究者を含むチームである。対象は週3日以上・6か月以上の筋力トレーニング歴がある男性19人(平均年齢24.9±5歳、体重81.3±11.3kg)。順手(プロネイテッド)、逆手(スピネイテッド)、ニュートラル、ロープの4種類の懸垂を行わせ、肩・上腕・前腕にある8つの筋肉(上腕二頭筋・腕橈骨筋・中部三角筋・大胸筋上部・僧帽筋中部・僧帽筋下部・広背筋・棘下筋)の表面筋電図を測定し、グリップの違いによる活動量の差を比較した。
結果:上腕二頭筋など大半の筋肉で「握り方による差」は確認できず
測定した8筋肉のうち、ピーク筋活動(%MVIC)で握り方の間に統計的な有意差が確認されたのは僧帽筋中部のみだった。SNSなどで広く語られる「逆手の方が二頭筋を使う」という説を、この研究の結果は支持していない。研究チームは上腕二頭筋・腕橈骨筋・広背筋・棘下筋などについて、グリップの違いによる有意差は見られなかったと報告している。
唯一差が出た僧帽筋中部、順手グリップで有意に高く
僧帽筋中部のピーク筋活動は、順手グリップがニュートラルグリップより有意に高かった(60.1±22.5%MVIC対37.1±13.1%MVIC、P=0.004、効果量は大きいとされるCohen's d=1.19)。動作全体の平均的な活動量を示す平均整流筋電図(EMGARV)でも同様の傾向が確認された(48.0±21.2%対27.4±10.7%、P=0.001)。
体を上げる局面は、下ろす局面より筋活動が高い
グリップの種類にかかわらず、体を持ち上げる短縮性(求心性)局面は、体を下ろす伸張性(遠心性)局面よりも、上腕二頭筋・腕橈骨筋・大胸筋上部の筋活動が有意に高かった(いずれもP<0.01)。局面ごとに筋肉の使われ方が変わる点は、エキセントリック(ネガティブ)トレーニングの考え方とも関係が深い。研究チームは、懸垂の効果を考えるうえでは握り方そのものより、動作のどの局面をどう使うかが重要になり得ると位置づけている。
よくある質問
逆手(チンアップ)の方が二頭筋に効くのは本当?
この研究では、順手・逆手・ニュートラルの間で上腕二頭筋のピーク筋活動に統計的な有意差は確認されなかった。経験的に「逆手の方がやりやすい」と感じる人は多いが、それが二頭筋の活動量の差を意味するとはこの研究からは言えない。
懸垂で背中を鍛えるなら、どの握り方がいい?
この研究では広背筋の活動量に握り方による有意差は見られなかった。僧帽筋中部だけが順手グリップでやや高い活動を示したが、1件の研究の結果であり、対象もトレーニング経験者の男性19人に限られる点には留意したい。種目の実施順序によっても筋肉の使われ方は変わるため、筋トレの種目順序に関する解説記事も参考にしてほしい。
KINNIKU TIMESの視点
握り方を変えるだけで「狙った筋肉が大きく変わる」と期待しすぎず、まずは正しい可動域とコントロールされた動作で行うことを優先したい。肩や肘に痛みや不安がある場合は、無理に特定のグリップにこだわらず、自分が安定して扱える握り方を選び、必要に応じて医師や専門家に相談してほしい。
出典:University of Winchester Research Repository: Dickie JA, Faulkner JA, Barnes MJ, Lark SD. "Electromyographic analysis of muscle activation during pull-up variations." Journal of Electromyography and Kinesiology, Vol.32, 30-36(2016) / ScienceDirect 論文ページ
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