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名トレーナー、チャールズ・グラス氏「肘を立てればロウで僧帽筋は使わない」を検証

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 6分
ダンベルを持ってトレーニングする男性
SUMMARY|この記事の要約

著名トレーナーのチャールズ・グラス氏が、ダンベルのアップライトロウで「肘を主導させれば僧帽筋はほぼ使われない」とInstagramで語ったと海外専門メディアが報じた。

関連する学術研究(握り幅とEMGの比較試験)を確認すると、三角筋が主働筋になる点は支持されるものの、「僧帽筋がほぼゼロ」と言い切れるかどうかには留保が必要なことが分かった。

多くの大会を経験してきた元IFBBプロボディビルダーで、現在は「ボディビルのゴッドファーザー」とも呼ばれる著名トレーナーのチャールズ・グラス氏(Charles Glass)が、ダンベルを使ったアップライトロウについて「手ではなく肘を主導させ、肘を高く保てば僧帽筋はほぼ使われない」とInstagramのリール投稿で語ったと、海外の専門メディアFitness Voltが2026年10月13日(日本時間、現地時間は10月12日)に報じた。

ダンベルを持ち肩のトレーニングを行う様子
写真はイメージです(Unsplash)

チャールズ・グラス氏とはどんな人物か

グラス氏は1984年から1995年にかけて男子オープン部門のIFBBプロとして活動し、1995年の「オリンピア・マスターズ」で自己最高の4位に入った経験を持つ元選手である。現役引退後はトレーナーとして活動し、Fitness Voltなど海外の専門メディアから「Godfather of Bodybuilding(ボディビルのゴッドファーザー)」と呼ばれ、Instagram(@thecharlesglass)やYouTubeチャンネルでトレーニングのコツを発信している。

グラス氏は具体的に何を語ったのか

Fitness Voltによると、グラス氏は該当のリール内で次のように語ったという。

  • 「手を主導させるのではなく、肘に動きを導かせること(Don't pull it or let the hand lead. Let the elbow lead.)」
  • 「反動を使わず、1回ごとにダンベルを一度下に置くこと(Don't swing it. Just pick it up.)」
  • 「肘を高く保てば、僧帽筋の活動はほぼ無くなる、という趣旨(Keep the elbow up and there's no trap activation)」

グラス氏自身は、この種目を僧帽筋のための種目としてではなく、三角筋(特に外側部)を狙うための種目として紹介しているという。

科学的にはどうか――握り幅と筋活動のEMG研究で確認する

グラス氏の発言そのものを直接検証した研究は見当たらなかったが、関連するテーマとして、アップライトロウの「握り幅」が筋活動(表面筋電図・EMG)に与える影響を調べた研究がある。McAllisterらが米国ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の学会誌「Journal of Strength and Conditioning Research」27巻1号(2013年)に発表した論文で、週数回の筋力トレーニング経験がある健康な男性16人を対象に、肩峰間幅の50%・100%・200%の3段階の握り幅でアップライトロウを行わせ、外側三角筋・後部三角筋・上部僧帽筋・中部僧帽筋・上腕二頭筋の活動を比較した。

なお、この研究が調べたのは「握り幅」であり、グラス氏が語った「肘を主導させるか・手を主導させるか」という動かし方そのものとは厳密には別の変数である。そのため、この研究だけでグラス氏の発言が正しいか誤りかを断定することはできない点に注意が必要である。

筋肉・局面 握り幅による差 備考
上部僧帽筋(持ち上げる局面) 統計的に有意差なし(p=0.779) 握り幅を変えても、持ち上げる瞬間の上部僧帽筋の活動量に差は出なかった
上部僧帽筋(下ろす局面) 有意差あり(p<0.001) 広い握り(200%)の方が、狭い握り(50%・100%)より有意に活動量が高かった
外側三角筋(持ち上げる局面) 有意差あり(p<0.001) 握り幅が広いほど活動量が高かった
後部三角筋(持ち上げる局面) 有意差あり(p<0.001) 握り幅が広いほど活動量が高かった

つまりこの研究からは、三角筋がこの種目の主働筋であるという点はグラス氏の説明と整合する一方、上部僧帽筋も「持ち上げる瞬間」は握り幅の影響を受けにくいものの、ゼロにはなっておらず、「下ろす瞬間」は握り幅によって活動量が変わることが分かる。「僧帽筋がほぼ使われない」という言い切りについては、少なくとも今回確認した研究の範囲では、完全に実証されているとは言えない。

読者が実践するならどうすればいいか

アップライトロウで三角筋への刺激を重視したい場合、グラス氏が勧める「肘を主導させ、反動を使わない」というフォームの工夫自体は、三角筋を主働筋として使う一般的なコツと矛盾しない。ただし僧帽筋の活動を完全にゼロにできるとは考えず、肩周りに違和感や痛みがある場合は無理に続けず、フォームを自己判断だけで大きく変える前に、トレーナーや理学療法士など専門家に相談することを勧める。

よくある質問

アップライトロウは僧帽筋のための種目なのか

グラス氏も僧帽筋狙いの種目としては紹介しておらず、三角筋(特に外側部)をターゲットにする種目として説明している。今回確認した研究でも、三角筋の活動量が主体になると報告されている。

握り幅を変えれば僧帽筋の負担を完全になくせるのか

今回参照した研究では、持ち上げる瞬間の上部僧帽筋の活動量は握り幅による有意差がなかった一方、下ろす瞬間は広い握りほど活動量が高かった。握り幅やフォームで負担のかかり方を変えられる可能性はあるが、完全にゼロにできるとまでは言えない。

肩に不安がある人もこの種目をやってよいのか

痛みや違和感がある場合は無理に行わず、トレーナーや医療専門家に相談してから判断することを勧める。

KINNIKU TIMESの視点

著名トレーナーの実践的なコツは、フォームを工夫するヒントとして参考になる。ただし「ほぼゼロになる」のような言い切りは、検証に使える研究の変数(今回は握り幅)と発言の内容(肘の主導の仕方)が完全には一致しないことも多い。似た筋肉を比べた懸垂のEMG研究(懸垂は順手と逆手で何が変わる?19人のEMG研究、二頭筋より僧帽筋に差)と合わせて読むと、同じ僧帽筋でも種目や条件によって活動の出方が変わることが見えてくる。有名人の発言は「仮説」として受け止め、自分の体の感覚と専門家の指導を優先したい。


出典:Fitness Volt「Charles Glass Shows How to Master Dumbbell Upright Rows With Minimal Trap Activation」(2026年10月12日)/チャールズ・グラス氏 Instagram該当リール/Fitness Volt「Charles Glass」選手プロフィール/McAllister MJ, et al. "Effect of Grip Width on Electromyographic Activity During the Upright Row." Journal of Strength and Conditioning Research 27(1):181-187(2013年)

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