背中の筋トレ 広背筋を鍛える引く種目の選び方、自宅とジムのメニューを研究で解説
背中の筋トレは「上から引く」と「前から引く」の2系統で組む。ラットプルダウンの握り幅・握り方の研究や懸垂の筋電図研究を手がかりに、広背筋に効かせる手順、自宅とジムのメニュー、よくある間違いを整理した。
背中を鍛えるには、懸垂やラットプルダウンのように「上から引く」種目で広背筋を、ローイングのように「前から引く」種目で背中の厚みを作り、両方を週2回ほど組み合わせるのが基本である。ラットプルダウンでは握り幅を1〜2倍の肩幅の範囲で変えても広背筋の活動はほぼ同じで、逆手より順手の方が広背筋の活動が高かったという研究がある。
背中の筋肉はどこを鍛えればいい?
背中の主役は広背筋である。脇の下から腰まで広がる大きな筋肉で、腕を上や前から体に引き寄せる働きを持ち、発達すると逆三角形の輪郭を作る。その上に僧帽筋(首から背中の中央)、肩甲骨の間にある菱形筋、肩の後ろの三角筋後部があり、背骨に沿って脊柱起立筋が走る。
働き方で分けると、腕を上から下ろす「縦に引く」動きでは広背筋が、腕を前から後ろへ引く「横に引く」動きでは広背筋に加えて僧帽筋中部や菱形筋が強く使われる。どちらか一方だけでは背中全体を鍛えにくいため、縦と横の種目を1つずつ以上選ぶのが実践的である。さらに、腰を支える脊柱起立筋は、デッドリフトや前傾して行うローイングで同時に鍛えられる。
ラットプルダウンの握り幅や握り方で効き方は変わる?
握り幅による差は小さく、握り方(順手か逆手か)の方が影響しやすい。ラスクらの2010年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research)では、男性12人が1RMの70%で、広い順手・広い逆手・狭い順手・狭い逆手の4通りのラットプルダウン(Lat Pulldown)を行った。広背筋の活動は順手の方が逆手より高く、握り幅による差は認められなかった。著者らは、広背筋を狙うなら幅にかかわらず順手で体の前に引くことを勧めている。
アンデルセンらの2014年の研究(同誌)でも、男性15人が肩幅の1倍・1.5倍・2倍の順手でラットプルダウンを行ったところ、動作全体での広背筋の活動は3つの幅で同程度だった。6回で限界になる重さは、狭い(80.3kg)と中間(80.0kg)が広い(77.3kg)を上回った。肩幅の1〜2倍の範囲なら好みで選んでよく、重さを扱いやすい中間の幅が無難である。
自宅で背中を鍛えるには?
自宅では、懸垂(Pull-Up)と、テーブルや低い鉄棒にぶら下がって体を引き寄せるインバーテッドロー(Inverted Row)が中心になる。ユーダスらの2010年の研究(同誌)では、25人が順手の懸垂と逆手の懸垂(チンアップ、Chin-Up)を行い、広背筋の活動は最大収縮の117〜130%と高い水準だった。逆手では大胸筋と上腕二頭筋の活動が、順手では僧帽筋下部の活動が有意に高かった。握り方の違いは懸垂の順手と逆手の研究でも解説している。
フェンウィックらの2009年の研究(同誌)では、男性7人で3種類のローイングを比べ、インバーテッドローは広背筋・背中上部・股関節伸筋の活動が高く、腰の負担が小さかった。懸垂が1回もできない人は、インバーテッドローや、台に乗って上がった位置からゆっくり下りるネガティブ懸垂から始めるとよい。懸垂の基本手順は次のとおり。
- 肩幅よりこぶし1〜2個分広く、順手でバーを握ってぶら下がる。
- 肩をすくめず、肩甲骨を下げて胸を少し張る。
- 肘を脇腹に向けて引き下ろすイメージで、あごがバーを越えるところまで体を引き上げる。
- 上で一瞬止め、2〜3秒かけて肘が伸びきる手前までゆっくり下りる。
- 脚を振って反動をつけない。回数が落ちたらネガティブで補う。
- 慣れてきたら、上で1秒止める、下りる時間を3〜4秒に延ばすなどして負荷を上げる。
ジムで背中を鍛える種目は?
ジムでは、縦に引くラットプルダウン、横に引くシーテッドケーブルロー(Seated Cable Row)とワンハンドダンベルロー(One-Arm Dumbbell Row)、背中全体と脚を使うベントオーバーロー(Bent-Over Row)やデッドリフト(Deadlift)が中心になる。フェンウィックらの研究では、立って前傾するベントオーバーローは背中の上から下まで大きな筋活動を生んだが、腰の負担は3種目の中で最も大きかった。腰に不安がある人は、胸をパッドで支えるマシンローやケーブルローから始めるとよい。片手のケーブルローは体幹のひねりに耐える力も求められる。
握力が先に尽きて背中を追い込めない場合は、補助具の利用も選択肢になる。握る力と引く力の関係はリフティングストラップの研究で紹介している。デッドリフトの型による違いはコンベンショナルとスモーの比較を参照してほしい。
背中の種目で腕も鍛えられる?
引く種目では肘を曲げるため、上腕二頭筋もかなり使われる。ジェンティルらの2015年の研究(Asian Journal of Sports Medicine)では、トレーニング未経験の男性29人をラットプルダウンだけを行う群とアームカールだけを行う群に分け、週2回・10週間続けた。肘を曲げる筋肉の筋厚は、ラットプルダウン群で約6.1%、カール群で約5.8%増え、筋力の伸び(約10.4%と約11.9%)とあわせて両群に有意な差はなかった。初心者のうちは、背中の種目をしっかり行うだけでも腕はある程度育つということである。
重さの伸ばし方は他の部位と同じで、決めた回数の上限を全セットでこなせたら、次回に重さを一段階上げる。懸垂なら回数が10回を超えたあたりで、ゆっくり下ろす時間を延ばすか、加重を検討する。毎回限界まで追い込む必要はなく、2回の余力を残して終えても限界まで行う場合と筋肥大・筋力に差がなかった試験もある(限界まで追い込むべきかの8週試験)。動作を毎回同じ可動域でそろえ、記録を比べられるようにしておくことが、伸びを確かめるうえで役に立つ。
何回・何セット・週何回が目安?
1種目8〜12回を2〜4セット、背中全体で週10セット前後を週2回に分けるのが目安である。米国スポーツ医学会(ACSM)の2009年の指針は、初心者に8〜12回で限界になる負荷を週2〜3日行うことを勧めている。シェーンフェルドらの2016年のメタ分析では、同じ筋肉を週2回鍛える方が週1回より筋肥大の効果が大きかった。週の組み方は分割法の組み方も参考になる。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(自宅) | インバーテッドロー | 8〜12回 | 3 | 90秒 |
| 初心者(自宅) | ネガティブ懸垂 | 3〜5回 | 3 | 2分 |
| 初心者(ジム) | ラットプルダウン(順手・中間幅) | 10〜12回 | 3 | 90秒 |
| 初心者(ジム) | シーテッドケーブルロー | 10〜12回 | 3 | 90秒 |
| 中級者 | 懸垂(加重も可) | 6〜10回 | 3〜4 | 2〜3分 |
| 中級者 | ベントオーバーロー | 6〜10回 | 3 | 2〜3分 |
| 中級者 | ワンハンドダンベルロー | 左右各8〜12回 | 3 | 90秒 |
よくある間違いとチェックポイントは?
- 腕だけで引いている:手はフックと考え、肘を脇腹やお尻のポケットに向けて引く意識を持つ。
- 肩がすくんでいる:首の付け根に力が入ると僧帽筋上部ばかり使う。肩甲骨を下げてから引き始める。
- ラットプルダウンで上体を大きく後ろに倒す:反動になり負荷が抜ける。後傾は軽く、胸に向けて引く。
- 首の後ろに引いている:肩に負担がかかりやすい。体の前、鎖骨の高さへ引く。
- ベントオーバーローで背中が丸まる:腰を痛めやすい。背すじを保てる重さに下げる。
- 下ろす局面が速い:2〜3秒かけて戻し、広背筋が伸びるところまで使う。
背中のトレーニングで注意することは?
腰痛や椎間板の病気、肩の脱臼歴などがある人は、始める前に医師に相談してほしい。引く動作中に腰や肩に鋭い痛み、腕のしびれが出たら中止する。胸の痛みや息苦しさを感じたときも、すぐに運動をやめて医療機関を受診する。デッドリフトやベントオーバーローは腰への負担が大きいため、正しいフォームを軽い重さで覚えてから重量を上げる。ベルトの役割はトレーニングベルトの解説にまとめた。
よくある質問
懸垂が1回もできないときはどうする?
インバーテッドローで引く力をつけ、台を使って上がった位置からゆっくり下りるネガティブ懸垂を3〜5回×3セット行うのが現実的である。ジムならラットプルダウンで同じ動きを練習できる。
ラットプルダウンは広く握るほど効く?
肩幅の1〜2倍の範囲なら、広背筋の活動はほぼ同じだった研究がある。広い握りは扱える重さがやや下がったため、中間の幅を基本にし、握り方は順手を選ぶとよい。
懸垂は順手と逆手どちらがいい?
広背筋はどちらでも強く働く。研究では逆手で上腕二頭筋と大胸筋、順手で僧帽筋下部の活動が高かった。背中中心なら順手、腕も一緒に鍛えたいなら逆手と使い分ける。
背中に効いている感覚がないのはなぜ?
腕で引いている、肩がすくんでいる、反動を使っているのが主な原因である。重さを下げ、肘を引く方向を意識し、下ろす局面を2〜3秒かけると背中を使う感覚をつかみやすい。
背中の日に腕のトレーニングは必要?
引く種目で上腕二頭筋も使われるため、初心者は背中の種目だけでも腕はある程度鍛えられる。腕をさらに伸ばしたい場合はカールを数セット加える。
KINNIKU TIMESの視点
背中は「縦に引く」懸垂・ラットプルダウンと、「横に引く」ローイングを1種目ずつ以上組み、順手・中間幅を基本に週2回、合計週10セット前後を目標にするとよい。握り幅にこだわるより、肩を下げて肘で引くフォームと、下ろす局面を丁寧に行うことの方が効き方を左右しやすい。引く種目は上腕二頭筋も鍛え、体を固める点では腹筋・体幹の練習にもなる。
出典:Lusk SJ et al. J Strength Cond Res. 2010/Andersen V et al. J Strength Cond Res. 2014/Youdas JW et al. J Strength Cond Res. 2010/Fenwick CM et al. J Strength Cond Res. 2009/Gentil P et al. Asian J Sports Med. 2015/ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2009/Schoenfeld BJ et al. Sports Med. 2016
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