フェイスプルのやり方 肩の後ろと背中上部に効くフォーム・回数を研究で解説
フェイスプルの正しい手順、ケーブルの高さとロープの握り方、鍛えられる肩の後ろと背中上部の筋肉、軽めの重さと回数・セット数の目安、腰を反らす・重すぎるといった間違い、押す種目とのバランスの考え方を、研究をもとに整理しました。
フェイスプルは、顔の高さにセットしたケーブルのロープを両手で握り、肘を高く横に開きながら顔に向かって引き、最後に拳を後ろに回すように肩を外にひねる種目である。肩の後ろの三角筋後部、肩を外にひねる棘下筋・小円筋、背中上部の僧帽筋中部・下部をまとめて鍛えられる。重さは15〜20回できる軽めが目安で、ベンチプレスなど押す種目が多い人のメニューに加えやすい。
フェイスプルで鍛えられる筋肉は?
主に鍛えられるのは、肩の後ろの三角筋後部、肩を外にひねる回旋筋腱板(棘下筋・小円筋)、肩甲骨を寄せる僧帽筋中部・下部と菱形筋である。フェイスプル(Face Pull)は、腕を横に開いて後ろへ引く動き(水平外転)と、肩を外にひねる動き(外旋)、肩甲骨を寄せる動きを一度に行う種目だ。
なお、ケーブルで行うフェイスプルそのものの筋活動を調べた研究は、現時点では多くない。そのため、ここではフェイスプルと同じ動きを含むリハビリ種目の研究を手がかりにする。レイノルドらの2004年の研究(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy誌)では、健康な10人の肩の筋肉に細い針状の電極を入れ、肩を外にひねる7つの種目を比べた。棘下筋と小円筋の活動は横向きに寝て行う外旋で最も高く(最大筋力の62%と67%)、腕を横に100度開いて親指を外に回しながら後ろに引く種目では、棘上筋の活動が最も高かった。肩の3つの部位の鍛え分けは肩の筋トレガイドにまとめている。
フェイスプルの正しいやり方は?
ケーブルを顔の高さにセットし、ロープを親指が後ろを向く向きで握り、肘を横に開いて顔に向けて引き、最後に拳を後ろに回すのが基本の手順である。
- ケーブルを合わせる:ケーブルの滑車を、顔から額の高さにセットし、ロープの付属品を取りつける。
- ロープを握る:ロープの両端を、手のひらを下か内側に向けて握る。親指がロープの端(自分の側)に来る握り方にすると、最後に拳を後ろへ回しやすい。
- 構える:一歩下がってケーブルに張りをつくり、足を前後か腰幅に開いて立つ。腕はまっすぐ前に伸ばし、肩を下げておく。
- 引く:息を吐きながら、肘を肩の高さで横に開き、ロープの中央を鼻から額のあたりに向けて引く。
- 拳を後ろに回す:引き終わりで、ロープを左右に引き離すようにして拳を耳の横から後ろへ回し、肩甲骨を軽く寄せる。上から見ると両腕が「W」の字になる。
- ゆっくり戻す:息を吸いながら、2〜3秒かけて腕を前に伸ばす。肩が前に引き出されすぎない位置で止め、次の回に入る。
なぜ押す種目が多い人に勧められる?
ベンチプレスや腕立て伏せのような押す種目ばかりを行うと、肩の前と後ろで筋力の偏りが生じやすく、肩の後ろ側を鍛える種目でバランスを整える考え方があるためである。
コルバーらの2014年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、週2日以上筋トレをする男性46人と、筋トレをしない男性31人を比べると、筋トレをする人で肩のインピンジメント(腱が骨に挟まれる状態)の特徴が多く見られた。一方で、肩を外にひねる筋肉(外旋筋)を鍛えている人ほど、その特徴が少ないという逆の関連があった。同じグループの2017年の研究(同誌)でも、インピンジメントの特徴がある筋トレ愛好者24人は、ない31人に比べて、体重あたりの外旋筋と僧帽筋下部の筋力が低かった。
これらは関連を調べた研究で、フェイスプルが肩の痛みを防ぐと証明したものではない。ただし著者らは、外旋筋や僧帽筋下部のような肩を安定させる筋肉を重視したメニューを勧めており、フェイスプルはその目的に合う種目の一つといえる。押す種目のやり方はベンチプレスのやり方で解説している。
肩甲骨まわりはどう使う?
引き終わりで肩甲骨を軽く寄せ、肩をすくめないことで、首の上の僧帽筋上部ではなく、背中上部の僧帽筋中部・下部を使いやすくなる。
クールスらの2007年の研究(American Journal of Sports Medicine誌)では、健康な45人が肩甲骨まわりの12種目を行い、僧帽筋の上部と中部・下部の活動の比を調べた。うつ伏せで腕を横に開きながら外にひねる種目は、横向きの外旋などと並び、上部に対して中部・下部を多く使える種目に選ばれた。アンデルセンらの2012年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)でも、女性17人の測定で、片手のダンベルロウやうつ伏せで腕を横に開く種目が、僧帽筋上部より中部を多く使っていた。肩がすくむと上部ばかり働くため、肩を下げたまま引くことが大切だ。背中を引く種目はダンベルロウのやり方やラットプルダウンのやり方で紹介している。
重さと回数・セット数の目安は?
フェイスプルは15〜20回できる軽めの重さで、2〜3セットが目安である。重さを追うより、肘の高さと拳を後ろに回す動きを毎回同じように行うことを優先する。
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解(Currierら、137本の系統的レビューのまとめ)は、筋力向上には全可動域、2〜3セット、週2回以上が有利で、筋肥大には週10セット以上の量が有利と整理している。フェイスプルは小さな筋肉を使う種目なので、上半身の日の後半や、押す種目の合間に入れると組みやすい。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | ケーブル・フェイスプル(軽め) | 15〜20回(余力2〜3回) | 2 | 60秒 |
| 初心者(週2回) | ゴムバンド・フェイスプル(自宅) | 15〜20回 | 2 | 60秒 |
| 中級者(週2〜3回) | ケーブル・フェイスプル | 12〜20回(余力1〜2回) | 3 | 60〜90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | リアレイズ(ダンベル) | 12〜20回 | 2〜3 | 60秒 |
自宅ではゴムバンドを柱やドアに固定して同じ動きができる。上限の回数を全セットこなせたら、1段階重くするか、バンドを強いものに替える。
よくある間違いとチェックポイントは?
多いのは「重すぎて体を後ろに倒す」「肘が下がる」「肩がすくむ」の3つである。
- 体を後ろに倒して引く:重すぎると上体を反らして体重で引いてしまう。上体を固定したまま腕だけで引ける重さにする。
- 肘が下がる:肘が肩より大きく下がると、ロウ(引く種目)に近くなり、肩の後ろへの負荷が減る。肘は肩の高さを保つ。
- 肩がすくむ:肩が耳に近づくと僧帽筋上部ばかり働く。肩を下げたまま引く。
- 拳を後ろに回さない:引くだけで終わると、肩を外にひねる動きが抜ける。引き終わりで拳を耳の横から後ろへ回す。
- ケーブルの高さが低い:胸の高さだと肘が下がりやすい。顔から額の高さにセットする。
- 戻すのが速い:ケーブルに引っ張られるように戻すと、肩が前に引き出される。2〜3秒かけて戻す。
安全に行うための注意点は?
フェイスプルは軽い重さで行う種目だが、肩に痛みがある人は、痛みの出ない範囲で行い、痛みが続くなら中止することが大切である。
肩の痛みやけがの経験がある人、持病がある人は、始める前に医師に相談してほしい。肩の痛みの治療やリハビリとして行う場合は、医師や理学療法士の指示に従うこと。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止する。ケーブルのピンやロープの取りつけが外れると顔に当たる恐れがあるため、始める前に確かめておきたい。
よくある質問
フェイスプルは肩のどこに効きますか?
主に肩の後ろの三角筋後部、肩を外にひねる棘下筋・小円筋、背中上部の僧帽筋中部・下部に効きます。引き終わりで拳を後ろに回すと、肩を外にひねる筋肉も使いやすくなります。
何kgで行えばいいですか?
決まった重さはありません。上体を反らさずに15〜20回でき、あと2〜3回の余力が残る軽めの重さから始めましょう。重さより、肘の高さと拳を後ろに回す動きを毎回そろえることが大切です。
猫背や巻き肩は治りますか?
フェイスプルで姿勢が治ると示した研究は見当たりません。肩の後ろや背中上部の筋肉を鍛える種目の一つとして取り入れ、姿勢の悩みや痛みがある場合は医師や理学療法士に相談しましょう。
ケーブルがない自宅ではどうすればいいですか?
ゴムバンドを柱やドアに顔の高さで固定すれば、同じ動きができます。ダンベルを使う場合は、上体を前に倒して腕を横に開くリアレイズが近い種目です。
いつ行うのがいいですか?
上半身の日の後半や、ベンチプレスなど押す種目の合間に入れると組みやすいでしょう。軽い重さで行う種目なので、押す種目の前のウォームアップに使う人もいます。
KINNIKU TIMESの視点
フェイスプルは、押す種目では鍛えにくい肩の後ろ側と背中上部を、軽い重さでまとめて鍛えられる種目である。ケーブルの高さを顔に合わせ、肘を肩の高さで開き、最後に拳を後ろに回す。この3点を守れば、重さに頼らずに狙った筋肉を使える。フェイスプルそのものの研究はまだ少ないが、肩を外にひねる筋肉や僧帽筋下部を鍛えることの意味を示す研究は積み重なっている。押す種目が多い人は、ディップスやベンチプレスと同じ日に組み合わせ、肩の横を鍛えるサイドレイズとあわせて肩全体を育てたい。背中全体の鍛え方は背中の筋トレガイドも参考にしてほしい。
出典:Reinold MM, et al. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(7):385-94/Kolber MJ, et al. J Strength Cond Res. 2014;28(4):1081-9/Kolber MJ, et al. J Strength Cond Res. 2017;31(4):1024-1032/Cools AM, et al. Am J Sports Med. 2007;35(10):1744-51/Andersen CH, et al. J Strength Cond Res. 2012;26(9):2408-16/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872
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