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インクラインベンチプレスのやり方 ベンチの角度・重量・回数の目安を研究で解説

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 10分
ベンチプレスを行う男性
SUMMARY|この記事の要約

インクラインベンチプレスの正しい手順、ベンチの角度の決め方、バーを下ろす位置、フラットとの重量の違い、回数・セット数の目安、肩を痛めにくくする要点を、角度を比べた筋電図研究や8週間の試験、ACSMの指針をもとに整理しました。

インクラインベンチプレスは、背もたれを30度前後に起こしたベンチに寝て、肩甲骨を寄せたままバーを鎖骨の少し下に下ろし、斜め上へ押し上げる種目である。平らなベンチで行うベンチプレスより大胸筋の上部を使いやすいが、角度を45度より大きくすると肩の前の三角筋前部の関与が増える。重さはフラットのベンチプレスより軽くなるのが普通で、8〜12回で限界の1〜3回手前になる重さを2〜4セット行うのが目安だ。

インクラインベンチプレスで鍛えられる筋肉は?

主に鍛えられるのは大胸筋で、特に鎖骨の下に付く上部(鎖骨部)が働きやすく、肩の前の三角筋前部と腕の裏の上腕三頭筋も一緒に働く。

インクラインベンチプレス(Incline Bench Press)は、ベンチの背もたれを起こすことで、腕を押し出す方向が体に対して斜め上になる。大胸筋の上部は鎖骨から腕に向かって斜め上に走るため、この方向の押す動きで働きやすい。大胸筋の上部・中部・下部の違いや、胸全体の種目の組み合わせ方は大胸筋の筋トレで解説している。この記事では、インクラインベンチプレスそのもののやり方に絞って説明する。

インクラインベンチプレスの正しいやり方は?

ベンチを30度前後に設定し、肩甲骨を寄せて下げた姿勢を保ったまま、バーを鎖骨の少し下に下ろして押し上げるのが正しいやり方である。

  1. ベンチを設定する:背もたれを30度前後に起こす。ラックの高さは、腕を少し曲げた位置でバーに届く高さにする。
  2. 寝る位置を決める:ベンチに座って背もたれに寄りかかり、バーが目の真上あたりに来る位置に寝る。お尻はベンチから浮かせない。
  3. 足を置く:足を肩幅より少し広く開き、足裏全体を床につける。
  4. 肩甲骨を寄せる:肩甲骨を背骨の方へ寄せて下げ、胸を軽く張る。肩が前に出ないよう、この姿勢をセットの最後まで保つ。
  5. バーを握る:肩幅より少し広く、こぶし1〜2つ分外側を順手で握る。手首は立て、バーが手のひらの付け根に乗るようにする。
  6. ラックから外す:腕を伸ばしてバーを外し、肩の真上で止める。
  7. 下ろす:息を吸いながら、2秒ほどかけてバーを鎖骨の少し下(胸の上部)に下ろす。肘は体から45〜60度ほど開いた位置にする。
  8. 押し上げる:胸に軽く触れたら、息を吐きながら肩の真上へ押し上げる。肘は伸ばしきる手前で止め、次の回へ入る。

平らなベンチで行う基本のフォームはベンチプレスのやり方にまとめている。肩甲骨の寄せ方や足の踏ん張り方は共通なので、先にフラットのフォームを身につけておくと移行しやすい。

ベンチの角度は何度がいい?

大胸筋の上部を狙うなら30度前後が目安で、45度を超えると三角筋前部の働きが大きくなり、大胸筋の働きは下がる。

スペインのロドリゲス=リダオらの2020年の研究(International Journal of Environmental Research and Public Health誌)では、筋トレ経験のある30人が0度、15度、30度、45度、60度の5つの角度で、1RM(1回だけ挙げられる重さ)の60%のベンチプレスを行った。大胸筋上部の活動は30度で最も高く、大胸筋の中部と下部は0度(フラット)で高かった。三角筋前部の活動は60度で最も高く、45度を超える角度では三角筋前部の活動が大きく増え、大胸筋の働きが下がった。

米国のトレブスらの2010年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、健康な男性15人が0度、28度、44度、56度で1RMの70%のプレスを行い、大胸筋上部の活動は44度で0度や28度より高く、大胸筋の胸骨部(中部から下部)は0度で最も高かった。米国のラウバーらの2016年の研究(European Journal of Sport Science誌)では、筋トレ経験のある男性14人で、押し上げる動作全体では角度による大胸筋上部の差は見られなかったが、動作の途中の一部では30度と45度がフラットより高かった。

研究によって最適な角度は30〜45度で少し異なるが、45度を超えると肩の種目に近づく点は共通している。ベンチの目盛りが選べるなら30度前後から始め、肩に違和感がなければ45度までの範囲で調整するとよい。肩を主に鍛えたい場合はショルダープレスを別に行う方が目的に合う。

フラットとインクラインはどちらをやるべき?

胸全体を鍛えるなら両方を組み合わせるのが基本で、どちらか一方でも筋力の伸びは同程度だったという試験がある。

ブラジルのシャベスらの2020年の研究(International Journal of Exercise Science誌)では、筋トレ経験のない男性47人を、フラットのベンチプレス群(15人)、インクラインのベンチプレス群(15人)、両方を行う群(17人)に分け、セット数をそろえて週1回、8週間トレーニングした。フラットとインクラインの筋力(等尺性筋力)はどの群も同程度に伸びた(フラットで約10kg、インクラインで約11kg)。一方、胸の上部にあたる第2肋間の大胸筋の厚さの増え方は、インクライン群がフラット群や両方を行う群より大きかった。上部の発達を重視するならインクラインを入れる意味があり、筋力全体の向上が目的ならどちらでもよいといえる。握り幅による違いはベンチプレスの握り幅の研究で紹介している。

重量・回数・セット数の目安は?

筋肥大が目的なら、8〜12回で限界の1〜3回手前になる重さを2〜4セット、胸の種目全体で週10セット以上が目安になる。

米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解(Currierら、137本の系統的レビュー、3万人超のまとめ)は、筋力を高めるには1RMの80%以上の重さ、全可動域、2〜3セット、週2回以上が有利で、筋肥大には週10セット以上の量が有利と整理した。インクラインはフラットより扱える重さが軽くなるのが普通なので、初めはフラットで10回できる重さより1〜2割軽い重さから試すとよい。同じ日に両方行う場合は、優先したい方を先に行う。種目の並べ方は筋トレの順番の決め方が参考になる。

レベル 種目 回数 セット 休憩
初心者(週2回) インクラインベンチプレス(30度) 10〜12回(余力2〜3回) 2〜3 2分
初心者(週2回) ベンチプレス(フラット) 10〜12回 2 2分
中級者(週2回) インクラインベンチプレス(30〜45度) 6〜10回(余力1〜2回) 3〜4 2〜3分
中級者(週2回) インクラインダンベルプレス 10〜12回 2〜3 90秒〜2分

決めた回数を全セットこなせたら、次回は2.5kg重くするのが目安だ。バーベルの代わりにダンベルで行うと、左右の差を把握しやすく、肩の位置に合わせて手首の向きを調整しやすい。

よくある間違いとチェックポイントは?

多いのは「角度が急すぎる」「バーを下ろす位置が低すぎる」「肩甲骨の寄せが崩れる」の3つである。

  • 角度が急すぎる:45度を超えると肩の種目に近づく。胸を狙うなら30度前後にする。
  • 下ろす位置が低い:フラットと同じように胸の中央やみぞおちに下ろすと、手首や肩に負担がかかりやすい。鎖骨の少し下に下ろす。
  • 肩甲骨の寄せが崩れる:押し上げるたびに肩が前に出ると、肩の前に負担が集まる。肩甲骨を寄せて下げた姿勢を保つ。
  • お尻が浮く:重さを挙げようとしてお尻が浮くと、角度が変わり腰も反りすぎる。お尻はベンチにつけたままにする。
  • 肘が開きすぎる:肘を真横に90度開くと、肩に負担がかかりやすい。体から45〜60度の位置にする。
  • 手首が寝る:手首が後ろに倒れると痛めやすい。バーを手のひらの付け根に乗せ、前腕と一直線にする。

安全に行うための注意点は?

肩や胸に痛みがある日は、重さを下げるか中止し、痛みの出ない範囲で行うことが基本である。

重い重さで行うときは、補助者(スポッター)についてもらうか、セーフティーバーを胸の高さより少し下に設定する。最後の1回で挙げきれなくなりそうなら、無理をせずに重さを下げる。肩にけがや手術の経験がある人、高血圧などの持病がある人は、始める前に医師に相談してほしい。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止する。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨している。ジムに行けない日は、足を台に乗せて行う腕立て伏せでも胸の上部を含めた押す動きを補える。

よくある質問

インクラインベンチの角度は何度がいいですか?

大胸筋の上部を狙うなら30度前後が目安です。30人を対象にした研究では、大胸筋上部の活動は30度で最も高く、45度を超えると肩の前の筋肉の働きが大きくなりました。違和感がなければ45度までの範囲で調整してください。

フラットのベンチプレスより軽くなるのは普通ですか?

普通です。角度をつけると肩の前の筋肉の役割が増え、押す方向も変わるため、フラットより扱える重さは軽くなります。初めはフラットで10回できる重さより1〜2割軽い重さから試してください。

バーはどこに下ろせばいいですか?

鎖骨の少し下、胸の上部が目安です。フラットと同じように胸の中央やみぞおちに下ろすと、手首や肩に負担がかかりやすくなります。肩の真上から斜めに下ろし、同じ軌道で押し上げます。

インクラインだけで胸全体を鍛えられますか?

大胸筋全体が働きますが、中部と下部はフラットの方が活動が高いと報告されています。8週間の試験では筋力の伸びは同程度でしたが、胸全体を鍛えるならフラットと組み合わせるのが基本です。

ダンベルとバーベルはどちらがいいですか?

どちらでも構いません。バーベルは重さを少しずつ上げやすく、ダンベルは左右差を把握しやすく手首の向きを調整しやすい利点があります。肩に違和感が出にくい方を選ぶとよいでしょう。

KINNIKU TIMESの視点

インクラインベンチプレスは、角度をつけることで大胸筋の上部を使いやすくするプレス種目である。研究では30度前後で大胸筋上部の活動が高く、45度を超えると肩の種目に近づくことが示されている。成果を左右するのは重さより、角度を30度前後にすること、鎖骨の少し下に下ろすこと、肩甲骨を寄せた姿勢を保つことの3点だ。フラットのベンチプレスと組み合わせ、背中のベントオーバーロウなど引く種目ともバランスを取りながら、週2回続けるのが現実的である。


出典:Rodríguez-Ridao D, et al. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(19):7339/Trebs AA, et al. J Strength Cond Res. 2010;24(7):1925-30/Lauver JD, et al. Eur J Sport Sci. 2016;16(3):309-16/Chaves SFN, et al. Int J Exerc Sci. 2020;13(6):859-872/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて

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