ダンベルの重さの選び方 初心者は何kgから?回数と余力で決める手順を研究で解説
ダンベルは何kgから始めればよいか。ACSMの指針、軽い負荷と重い負荷を比べたメタ分析、余力(RIR)の研究をもとに、重さを決める手順、種目ごとの選び分け、重さを上げる時期、メニュー例をまとめた。
初心者のダンベルの重さは、「正しいフォームで8〜12回できて、最後の1〜2回がきつく、あと2〜3回で限界」という重さが目安である。米国スポーツ医学会(ACSM)の指針は、初心者に8〜12回が限界になる負荷(8〜12RM)を勧めている。最初は軽めから試し、目標の回数より1〜2回多くできるようになったら、少しずつ重くする。
初心者のダンベルの重さはどう決める?
「何kg」ではなく「何回できるか」で決める。ACSMの2009年の公式見解は、筋トレ経験のない人や数年ぶりに再開する人には、8〜12回で限界になる重さ(8〜12RM)を使うよう勧めている。同じ5kgでも、肩のサイドレイズでは重すぎ、ダンベルロウでは軽すぎることがあるため、種目ごとに回数を基準に選ぶのが基本である。
重さそのものにこだわりすぎる必要もない。Schoenfeldらの2017年のメタ分析(21研究、『Journal of Strength and Conditioning Research』)では、最大挙上重量の60%以下の軽い負荷と60%を超える重い負荷を、どちらも限界まで行って比べたところ、筋肥大の程度は同等で、1回だけ挙げる最大筋力(1RM)の伸びは重い負荷が上回った。Schoenfeldらの2021年の総説(『Sports』)も、筋肉を大きくする効果は幅広い負荷で得られるとしている。つまり初心者は、重さを急ぐより、限界近くまで丁寧に動かせる重さを選ぶほうが大切である。軽い負荷と重い負荷の比較は経験者49人の12週間比較の解説でも紹介している。
ちょうどいい重さを見つける手順は?
- 軽すぎると感じる重さから始める:初回は「これなら20回できそう」と思う重さを持ち、フォームの確認をかねて10回行う。
- 回数と余力を確かめる:10回終えたとき、あと何回できそうかを考える。5回以上余るなら軽すぎる。
- 1〜2段階重くして試す:1〜2分休み、次の重さで再び10回を目安に行う。
- 「あと2〜3回」の重さで止める:10回目で「あと2〜3回ならできる」と感じる重さを、その種目の今日の重さにする。
- フォームが崩れたら1段階戻す:反動を使う、背中が丸まる、可動域が狭くなるなら重すぎる。
- 重さと回数を記録する:種目名・重さ・回数・余力をメモし、次回の出発点にする。
最初の数回は、毎回この手順で重さを確かめてよい。筋トレを始めて間もない時期は、神経の働きが慣れることで、同じ重さでも急に楽になることがある。
「あと何回できるか」はどう判断する?
限界までの余力を回数で表す「RIR(Repetitions in Reserve)」を使うと判断しやすい。Zourdosらの2016年の研究(『Journal of Strength and Conditioning Research』)は、29人がスクワットを行う試験で、「RPE10=余力0回、RPE9=余力1回」のように、きつさの点数と余力の回数を対応させた尺度を検討し、日々の負荷を調整する実用的な方法だと結論づけた。
初心者は余力を少なく見積もりがちで、まだ余裕があるのに「限界」と感じることが多い。目安として、次のサインがそろえば余力2〜3回と考えてよい。
- 最後の2〜3回で、挙げる速さが目に見えて落ちてきた。
- フォームはまだ保てているが、呼吸が荒くなり集中が必要になった。
- もう1回やれと言われればできるが、5回は無理だと感じる。
余力の使い方はRPE・RIRの解説でも詳しく紹介している。毎セットを限界まで追い込まなくてもよいことは、2回残しと限界までを比べた試験が参考になる。
種目によって重さは変える?
変える。大きな筋肉を使う種目ほど重く、小さな筋肉の種目ほど軽くなる。目安として、次の順に軽くなると考えると選びやすい。
- 重め:ダンベルロウ(Dumbbell Row)、ゴブレットスクワット(Goblet Squat)、ダンベルルーマニアンデッドリフト(Dumbbell Romanian Deadlift)
- 中くらい:ダンベルベンチプレス(Dumbbell Bench Press)、ダンベルショルダープレス(Dumbbell Shoulder Press)
- 軽め:ダンベルカール(Dumbbell Curl)、トライセプスエクステンション(Triceps Extension)
- いちばん軽め:サイドレイズ(Side Raise)、リアレイズ(Rear Raise)
同じ日に同じ重さで全種目を行うと、ロウには軽すぎ、サイドレイズには重すぎることが多い。種目ごとのフォームはダンベルロウのやり方、ショルダープレスのやり方、上腕二頭筋の鍛え方で確認できる。
いつ、どれくらい重さを上げる?
目標の回数より1〜2回多くできたら上げる。ACSMの指針は、決めた回数より1〜2回多くこなせるようになったら、負荷を2〜10%増やすよう勧めている。ただしダンベルは1〜2kg刻みのことが多く、軽いダンベルでは1段階上げるだけで10%を超えてしまう。そこで初心者には、回数を先に伸ばす方法が使いやすい。
- 重さを決め、8〜12回の範囲で行う(例:6kgで8回)。
- 同じ重さで、全セット12回できるまで回数を増やす。
- 全セット12回できたら1段階重くし、再び8回前後から始める。
回数を増やす方法でも筋肉は育つことが、重量を上げる方法と回数を増やす方法を比べた8週間の試験で示されている。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、負荷を少しずつ高めることが重要で、負荷は重さや回数で調整できるとしている。
ダンベルの重さ選びでよくある間違いは?
- 見た目や他人の重さで選ぶ:体格や経験で適した重さは大きく違う。自分の回数と余力で決める。
- 反動で挙げて「できた」と数える:体を振って挙げた回は、狙った筋肉への負荷が減る。反動が出たら重すぎるサインである。
- 全種目を同じ重さで行う:小さな筋肉の種目は軽く、大きな筋肉の種目は重くする。
- 軽すぎる重さで回数だけこなす:20回以上楽にできる重さで10回だけ行っても、限界から遠く刺激が足りない。
- 毎回重さを上げようとする:回数が伸びていないのに重さだけ上げると、フォームが崩れやすい。
- 左右で同じ回数ができていない:片手ずつ行う種目は、弱い側ができる回数に合わせる。
初心者・中級者のダンベルメニューの例は?
| 対象 | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者 | ゴブレットスクワット(Goblet Squat) | 10〜12回(余力2〜3回) | 2〜3 | 1分30秒〜2分 |
| 初心者 | ダンベルベンチプレス(Dumbbell Bench Press) | 10〜12回(余力2〜3回) | 2〜3 | 1分30秒〜2分 |
| 初心者 | ワンハンドダンベルロウ(One-Arm Dumbbell Row) | 左右各10〜12回 | 2〜3 | 1分30秒 |
| 初心者 | サイドレイズ(Side Raise) | 12〜15回 | 2 | 1分 |
| 中級者 | ダンベルルーマニアンデッドリフト(Dumbbell Romanian Deadlift) | 8〜10回(余力1〜2回) | 3〜4 | 2分 |
| 中級者 | インクラインダンベルプレス(Incline Dumbbell Press) | 8〜12回(余力1〜2回) | 3〜4 | 2分 |
| 中級者 | ダンベルカール(Dumbbell Curl)、トライセプスエクステンション(Triceps Extension) | 10〜15回 | 各3 | 1分 |
休憩の決め方はインターバルの目安、1回の練習にかける時間は筋トレは何分やるべきかのガイドも参考になる。
自宅用のダンベルは何kgまで用意すればいい?
使う種目のうち、いちばん軽い種目と、いちばん重い種目の両方に合う重さを用意する。サイドレイズのような軽い種目に合う重さだけだと、スクワットやロウではすぐに物足りなくなる。逆に重いものだけでは、肩や腕の種目でフォームが崩れる。重さを細かく変えられるものを選ぶと、回数を伸ばしてから1段階上げる方法を続けやすい。
始めたばかりの数か月は扱える重さが伸びやすいため、「今ちょうどいい重さ」より少し重い範囲まで使えるものを想定しておくとよい。
安全のための注意点は?
- 重さを上げた日は、最初のセットでフォームを確認し、崩れるならすぐに戻す。
- ダンベルを床に落とすとけがや破損の原因になる。最後の1回のあとも、ゆっくり下ろせる重さを選ぶ。
- 関節に鋭い痛みが出たら中止する。痛みが続く場合や持病がある場合は、医師に相談してから再開する。
- 重い重さで息を止めて力むと血圧が大きく上がる。呼吸のしかたは筋トレの呼吸法のガイドで確認してほしい。
- 練習中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまいが出たら、すぐに中止する。
よくある質問
女性の初心者は何kgのダンベルから始めればいい?
性別よりも、種目ごとに「正しいフォームで10〜12回でき、あと2〜3回で限界」の重さを選ぶ。最初は軽すぎると感じる重さで10回試し、余力が5回以上あれば1段階ずつ重くしていくとよい。
重さを上げるタイミングは?
決めた回数の上限(たとえば12回)を全セットでこなせたら1段階上げる。ACSMは目標回数より1〜2回多くできたら2〜10%増やすことを勧めている。ダンベルの刻みが大きい場合は、回数を先に伸ばしてから上げる。
軽いダンベルで回数を多くするのは意味がない?
限界近くまで行えば、軽い負荷でも筋肥大は重い負荷と同程度になるとメタ分析で示されている。ただし最大筋力は重い負荷のほうが伸びやすい。楽に20回以上できる重さで少ない回数だけ行うのは刺激が足りない。
左右で力が違う場合、重さはどうする?
弱い側が正しいフォームでこなせる回数と重さに合わせ、強い側も同じ回数で止める。片手ずつ行う種目は、弱い側から始めると回数をそろえやすい。
毎セット限界までやったほうがいい?
初心者は余力2〜3回を残すくらいで十分である。限界まで追い込むとフォームが崩れやすく、疲れも残りやすい。慣れてきたら最後のセットだけ余力1回前後まで近づける方法もある。
KINNIKU TIMESの視点
ダンベルの重さは「何kgが正解」ではなく、種目ごとに「8〜12回で、あと2〜3回残る重さ」を探す作業である。研究は、限界近くまで丁寧に動かせば幅広い重さで筋肉が育つことを示しており、初心者が重さを急ぐ理由はない。軽めから試して1〜2段階ずつ上げ、決めた回数をこなせたら次の重さへ進む。重さ・回数・余力を毎回記録すれば、次に何kgを持てばよいかは記録が教えてくれる。
出典:ACSM Position Stand: Progression models in resistance training(Med Sci Sports Exerc, 2009)/Schoenfeld ら(J Strength Cond Res, 2017)/Schoenfeld ら(Sports, 2021)/Zourdos ら(J Strength Cond Res, 2016)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて
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