中学生・高校生の筋トレは何歳から?成長期の安全な始め方と回数を指針で解説
中学生・高校生の筋トレは何歳から始めてよいのか。国際的な合意声明や米国小児科学会の見解、救急外来のけがの調査をもとに、身長への影響、指導者や保護者の見守り方、医師に相談すべき場面、回数とメニューをまとめた。
筋トレを始めてよい年齢に決まった線引きはなく、指導者の指示を理解して守れ、体のバランスを保てるなら、中学生・高校生も筋トレを始めてよい。国際的な合意声明は、適切に計画され、資格のある指導者が見守る筋トレを子どもと青年に勧めている。「筋トレをすると背が伸びなくなる」という考えには科学的な裏づけがない。大切なのは年齢より、正しいフォームを身につける順番と、大人の見守りである。
筋トレは何歳から始めていい?
年齢そのものより、心と体の準備ができているかで判断する。Lloydらの2014年の国際合意声明(『British Journal of Sports Medicine』)は、適切に組まれた筋トレはあらゆる年齢の子どもに役立ち、5〜6歳の子どもでも基本的な種目で筋力の向上がみられたと整理している。そのうえで、年齢にかかわらず、指示を受け入れて守れる精神的な成熟と、十分なバランスや姿勢の保持能力があることを始める条件として挙げている。
米国ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の2009年の公式見解(Faigenbaumら、『Journal of Strength and Conditioning Research』)も、年齢に合った指針に従えば、大人の筋トレの利点の多くは子どもや青年でも得られるとしている。米国小児科学会(AAP)は2020年の見解(Strickerら、『Pediatrics』)で、近年の子どもの筋力の低下を背景に、運動部の選手だけでなく運動をしていない子どもにも筋トレが必要だと述べている。中学生・高校生であれば、始める年齢として早すぎることはない。
筋トレで身長が伸びなくなるのは本当?
本当ではない。Lloydらの合意声明は、筋トレが成長期の骨の端にある成長軟骨(骨端線)を傷めるという心配は科学的な報告や臨床の観察で支持されておらず、筋トレが子どもや青年の身長の伸びに悪影響を与えたり、大人になってからの身長を低くしたりする科学的根拠はないと明記している。むしろ子どもの時期と思春期は、体重をかける運動で骨量を増やす大切な時期だとしている。
ただし、これは「適切な重さと正しいフォームで、見守りのもとで行う」ことが前提である。重すぎる重量を自己流で扱えば、年齢にかかわらずけがの危険は高まる。
中学生・高校生の筋トレで多いけがは?
年齢が低いほど、重りを落とす・指をはさむといった「事故」によるけがの割合が高い。Myerらの2009年の研究(『Journal of Strength and Conditioning Research』)は、2002〜2005年に米国の救急外来を受診した8〜30歳のウエイトトレーニング関連のけが4,111件を分析した。重りの落下や器具の誤った使い方による事故のけがは年齢が低いほど多く、8〜13歳のけがの3分の2は手と足で、「落とした」「はさんだ」という記録が目立った。一方、関節のねんざや筋肉の肉離れは年齢が上がるほど多かった。
Kerrらの2010年の研究(『American Journal of Sports Medicine』)でも、12歳以下は手のけがの割合が37.9%と、13歳以上の18.2%より高かった。Lloydらの合意声明は、こうしたけがの多くは見守りの不足や不適切な重さで起きており、適切な見守り、技術に合わせた段階的な負荷の上げ方、安全な環境で防げるとしている。つまり、成長期の筋トレで最も大切な安全対策は「大人の目」である。
どんな種目から、何回・何セット始めればいい?
最初は自重や軽い負荷で、正しい動きを覚えることから始める。Lloydらの合意声明は、筋トレの経験がない子どもと青年の最初の処方として、1〜2セットの少ない量と、最大挙上重量(1RM)の60%以下の低〜中程度の強度を勧めている。スクワットのような複数の関節を使う種目に初めて取り組む段階では、1セット1〜3回と少ない回数にして、1回ごとにフォームの助言を受けるほうがよいとしている。
基本の動きができるようになったら、2〜4セット・6〜12回・1RMの80%以下へと段階的に進める。経験と技術が身につけば、6回以下の重い負荷を取り入れる時期を設けてもよいが、それはフォームが安定していることが条件である。始めたばかりの段階では、1RMを実際に測る必要はないとしている。
- 自重で動きを覚える:スクワット、腕立て伏せ、プランクなどで、ひざやつま先の向き、背中の姿勢を身につける。
- 指導者にフォームを見てもらう:部活動の顧問やコーチ、ジムのスタッフに確認してもらう。
- 軽い道具を加える:棒やごく軽いダンベル、ゴムバンドで同じ動きを行う。
- 回数とセットを少しずつ増やす:12回を楽にこなせたら、重さを少しだけ上げる。
- 記録をつける:種目、重さ、回数、体の調子を書き、保護者や指導者と共有する。
自重の種目の具体的なやり方は自重スクワットのやり方、腕立て伏せのやり方、プランクのやり方で紹介している。
中学生・高校生向けのメニュー例は?
週2〜3回、日を空けて行う全身のメニューが基本になる。世界保健機関(WHO)の2020年の指針(Bullら、『British Journal of Sports Medicine』)は、5〜17歳に1日平均60分以上の中〜高強度の身体活動を勧め、筋肉と骨を強くする運動を週3日以上取り入れるよう求めている。筋トレはこの「筋肉と骨を強くする運動」にあたる。
| 対象 | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(始めて1〜2か月) | 自重スクワット(Bodyweight Squat) | 8〜12回 | 1〜2 | 1〜2分 |
| 初心者 | 腕立て伏せ(Push-up)※ひざつき可 | 6〜12回 | 1〜2 | 1〜2分 |
| 初心者 | ヒップリフト(Glute Bridge) | 10〜12回 | 1〜2 | 1分 |
| 初心者 | プランク(Plank) | 20〜30秒 | 1〜2 | 1分 |
| 経験者(フォームが安定した高校生) | ゴブレットスクワット(Goblet Squat) | 6〜12回 | 2〜3 | 2分 |
| 経験者 | ダンベルベンチプレス(Dumbbell Bench Press) | 6〜12回 | 2〜3 | 2分 |
| 経験者 | ラットプルダウン(Lat Pulldown)または斜め懸垂 | 8〜12回 | 2〜3 | 1.5〜2分 |
| 経験者 | ダンベルルーマニアンデッドリフト(Dumbbell Romanian Deadlift) | 8〜12回 | 2〜3 | 2分 |
Behringerらの2010年のメタ分析(『Pediatrics』)は、18歳未満の筋トレで筋力が大きく伸びること(全体の効果量1.12)を示し、成熟が進むほど伸びやすく、期間が長くセット数が多いほど効果が大きかったと報告した。思春期以降に筋肉の増え方が大きくなることは子どもの筋トレと筋肥大のメタ分析の解説でも紹介している。休みの取り方は筋トレは何日休むべきかのガイドを参考にしてほしい。
指導者や保護者はどう見守ればいい?
筋トレの内容を決め、そばで見守る大人がいることが最大の安全対策である。Lloydらの合意声明は、子どもと青年の筋トレは資格のある専門家が計画し、見守ることを条件に支持するとし、指導では体の成熟度(生物学的な年齢)や心の成熟度も考えるよう求めている。同じ学年でも成長の時期には数年の差があるため、学年や年齢で一律に重さを決めない。
- 初めの数か月は、一人で重い重量を扱わせない:部活動の顧問、コーチ、ジムのスタッフなどの目があるところで行う。
- 重さより「フォームがきれいか」をほめる:記録の伸びを競わせすぎない。
- 部活動の練習量と合わせて考える:合意声明は、筋トレを試合や練習の上乗せではなく、その一部と入れ替える形で組むよう勧めている。
- 体重や体型について過度に口出ししない:極端な食事制限や体重の増減を求めない。
- 施設のルールを確認する:ジムによっては年齢制限や保護者の同意が必要な場合がある。
ジムを使う場合のマナーはジムのマナーのガイドも参考になる。
医師に相談したほうがいいのはどんなとき?
持病がある場合や、痛みが続く場合は、始める前や続ける前に医師に相談する。
- 心臓の病気、高血圧、ぜんそく、てんかんなどの持病があるとき、または過去に指摘されたことがあるとき。
- ひざ、かかと、ひじ、腰などの痛みが数日たっても引かないとき。成長期は骨と筋肉の成長の差から関節周りに痛みが出ることがあり、自己判断せず整形外科などを受診する。
- 運動中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまい、動悸が出たとき。すぐに中止し、大人に知らせる。
- 急に体重が減った、月経が止まった、疲れが抜けないなど、体調の変化があるとき。
よくある間違いとチェックポイントは?
- 動画をまねて最初から重い重量を扱う:まず自重と軽い負荷でフォームを固める。
- 最大重量(1RM)を競う:始めたばかりの段階では測る必要がない。
- 毎日同じ部位を追い込む:回復の時間をとり、週2〜3回から始める。
- 一人で、誰もいない場所で行う:重りの落下やはさみ込みの事故は見守りで防げる。
- 筋トレだけに偏る:外遊びや有酸素運動、ほかのスポーツも合わせて行う。
- 食事を減らして体を絞ろうとする:成長期はしっかり食べ、よく眠ることが土台になる。
よくある質問
筋トレは何歳から始めていいですか?
決まった年齢はない。国際的な合意声明は、指示を理解して守れ、バランスや姿勢を保てることを条件に挙げており、5〜6歳でも基本的な種目で筋力が向上したとしている。中学生・高校生であれば、見守りのもとで始めてよい。
中学生が筋トレをすると身長が伸びなくなりますか?
筋トレが身長の伸びに悪影響を与えたり、大人になってからの身長を低くしたりする科学的根拠はない。ただし適切な重さと正しいフォームで、指導者や保護者の見守りのもとで行うことが前提である。
中学生・高校生は何回・何セットから始めればいいですか?
経験がなければ1〜2セット、最大挙上重量の60%以下の軽い負荷から始める。フォームが安定したら2〜4セット・6〜12回へと段階的に進める。
中学生がジムに通ってもいいですか?
施設によって年齢制限や保護者の同意が必要な場合がある。利用できる場合も、最初はスタッフや指導者にフォームを見てもらい、一人で重い重量を扱わないようにする。
筋トレ中にひざやかかとが痛くなったらどうすればいいですか?
その種目を中止し、痛みが数日続く場合は整形外科などの医師に相談する。成長期は関節の周りに痛みが出ることがあるため、自己判断で続けない。
KINNIKU TIMESの視点
中学生・高校生の筋トレは、年齢よりも「指示を守れるか」「正しい動きができるか」で始める時期を判断すればよい。国際的な合意声明や小児科学会の見解は、資格のある大人が計画し見守る筋トレを支持しており、身長が伸びなくなるという心配には根拠がない。成長期のけがの多くは重りの落下やはさみ込みといった事故であり、大人の見守りで防げる。自重と軽い負荷でフォームを固め、週2〜3回、少ないセットから段階的に進める。持病がある場合や痛みが続く場合は、指導者や保護者と相談し、医師に診てもらってほしい。
出典:Lloyd ら「Position statement on youth resistance training: the 2014 International Consensus」(Br J Sports Med, 2014)/Faigenbaum ら NSCA Position Statement(J Strength Cond Res, 2009)/Stricker ら 米国小児科学会「Resistance Training for Children and Adolescents」(Pediatrics, 2020)/Behringer ら(Pediatrics, 2010)/Myer ら(J Strength Cond Res, 2009)/Kerr ら(Am J Sports Med, 2010)/Bull ら「WHO 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour」(Br J Sports Med, 2020)
この記事の次に読まれている記事
筋トレに使える無料ツール
コメント
この記事について思ったことを書けます。誤解を招くのを避けるため、誘導のある宣伝、他者への中傷、個人情報、法令に反する内容は公開しません。体調や治療に関わる判断は、必ず専門家にご相談ください。