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胸板を厚くする筋トレ 大胸筋を育てる種目・重さの伸ばし方・食事を研究で解説

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 9分
ベンチプレスを行う男性
SUMMARY|この記事の要約

胸板の厚みは大胸筋の厚さで変わる。ベンチプレスの24週間試験で見えた伸び方の変化、腕立て伏せでも大胸筋が厚くなった試験、インクラインで上部が厚くなった試験、増量と体脂肪の関係まで研究で整理した。

胸板を厚くするには、大胸筋を押す種目で鍛え、重さか回数を少しずつ伸ばしながら週10セット前後を続けるのが基本である。ベンチプレスでも、負荷をそろえた腕立て伏せでも大胸筋の厚みは増えた研究がある。鎖骨の下の上部を厚くしたいならベンチを30度ほど傾ける種目を加え、体重を増やす場合は脂肪が増えすぎないよう食べる量を少しずつ上げるとよい。胸の大きさの変わり方には個人差が大きい。

胸板の厚みは何で決まる?

横から見た胸の厚みは、肋骨の形と、その上にある大胸筋の厚さ、さらにその上の脂肪で決まる。肋骨の形は変えられないが、大胸筋は鍛えて厚くできる。大胸筋は鎖骨から胸骨、肋骨にかけて扇形に広がり、腕を体の前へ押し出す、腕を内側に閉じる動きを担う。種目による鍛え分けの基本は大胸筋の筋トレガイドで解説している。

個人差も大きい。ホルツバウアーらの2007年の研究(Journal of Biomechanics)は成人10人の腕と肩の筋肉の体積をMRIで測り、各筋肉が全体に占める割合はおおむね人によらず似ていたが、大胸筋はその割合のばらつきが最も大きかった。胸のつき方や育ち方に生まれつきの差があることを前提に、他人と比べず自分の変化を追うことが大切である。

どの種目で胸を厚くする?

中心はベンチプレス(Bench Press)、ダンベルプレス(Dumbbell Press)、腕立て伏せ(Push-up)などの押す種目である。菊池と中里の2017年の研究(Journal of Exercise Science & Fitness)では、男性18人がベンチプレスを1RMの40%で行う群と、膝つきなどで同じ負荷に調整した腕立て伏せの群に分かれ、週2回、8週間練習した。大胸筋の厚さは両群とも17.0mmから20.8mmに増え、負荷をそろえれば腕立て伏せでも同じように厚くなった。自宅で鍛える場合は腕立て伏せのやり方や自重で胸を鍛える筋トレ、負荷を上げるならデクラインプッシュアップが参考になる。

ベンチプレスの手順は次のとおり。フォームの詳細はベンチプレスのやり方にまとめている。

  1. ベンチにあお向けになり、目の真下にバーが来る位置に寝る。足裏を床につける。
  2. 肩甲骨を寄せて下げ、胸を軽く張る。お尻と頭はベンチにつけたままにする。
  3. 肩幅よりこぶし1〜2個分広く握り、手首を立ててバーを外す。
  4. 2〜3秒かけてみぞおちの少し上へバーを下ろし、胸に軽く触れる位置まで下げる。
  5. 胸を張ったまま押し上げる。8〜12回で限界に近づく重さから始める。

上部を厚くするにはインクラインが必要?

鎖骨の下を厚くしたいなら、ベンチを30度前後傾けたインクラインプレス(Incline Press)を加える価値がある。ロドリゲス=リダオらの2020年の研究(International Journal of Environmental Research and Public Health)では、30人がベンチの角度を0〜60度の5通りに変えて筋電図を測り、大胸筋上部の活動は30度で最も高く、45度を超えると三角筋前部の活動が強まった。チャベスらの2020年の試験(International Journal of Exercise Science)では、未経験の男性47人を水平、インクライン、両方の3群に分け、週1回、8週間練習した。第2肋骨の間で測った大胸筋上部の厚さの変化は、インクライン群が水平群より0.62cm大きかった。ほかの部位の厚さや筋力の伸びには大きな差がなかった。

何回・何セット・週何回が目安?

大胸筋に週10セット前後を、2回以上に分けて行うのが目安である。シェーンフェルドらの2017年のメタ分析(15研究)は週のセット数が多いほど筋肥大が大きくなる関係を示し、米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の指針も、筋肥大は週10セット以上で高まるとしている。セット数の考え方は週何セット必要かの解説を参照してほしい。

レベル 種目 回数 セット 休憩
初心者 ベンチプレスまたはダンベルプレス 8〜12回 3 2分
初心者 腕立て伏せ(膝つき可) 8〜15回 2〜3 60〜90秒
初心者 チェストプレスマシン 10〜12回 2 90秒
中級者 ベンチプレス 5〜8回 3〜4 2〜3分
中級者 インクラインダンベルプレス(30度) 8〜12回 3 2分
中級者 ディップス(Dips) 8〜12回 2〜3 90秒
中級者 ケーブルフライ(Cable Fly) 12〜15回 2〜3 60〜90秒

表は1回分の例で、週2回行う。毎回すべての種目を入れる必要はなく、1回目は水平のベンチプレス中心、2回目はインクラインとフライ中心のように分けてもよい。

伸びが止まったらどうする?

胸の厚みの伸びは、始めた直後が大きく、その後ゆるやかになるのが普通である。小笠原らの2013年の研究(European Journal of Applied Physiology)では、若い男性14人が1RMの75%で10回×3セットのベンチプレスを週3回、24週間続けた。休まず続けた群では、大胸筋の断面積と筋力は最初の6週間で順調に増えたが、その後は伸びる速さが少しずつ落ちた。6週間の練習と3週間の休みをくり返した群も、24週間後の伸びは続けた群と同程度だった。

伸びが鈍ったときは、同じ重さと回数を漫然と続けるのではなく、①回数を1回ずつ増やし上限に届いたら重さを上げる、②週のセット数を2〜4セット増やす、③種目や角度を一部入れ替える、といった調整を一つずつ試すとよい。数週間ごとに軽めの週を入れても筋肥大が落ちなかった試験はディロードの比較試験で紹介している。

体重を増やす食事の注意点は?

体の線が細い人は、筋トレに加えて食べる量を少し増やすと筋肉が増えやすい。ただし食べすぎると脂肪も増える。ガルテらの2013年の試験(European Journal of Sport Science)では、エリート選手39人が週4回の筋トレを加えた8〜12週間の増量期に、栄養指導で食事量を増やす群と自由に食べる群に分かれた。指導群は1日約3,585kcalをとり体重が3.9%増えたが、脂肪量も15%増えた。自由群は体重1.5%増、脂肪量3%増で、除脂肪量の増え方には差がなかった。たんぱく質は、モートンらの2018年のメタ分析(49研究・1,863人)で、1日体重1kgあたり約1.62gを超えると除脂肪量の上乗せは見られなかった。体重は月に少しずつ増える程度に食べる量を調整し、腹囲が急に増えるなら量を戻すとよい。

よくある間違いとチェックポイントは?

  • 重さを優先して可動域が浅い:胸に軽く触れる位置まで下ろし、伸びた位置の負荷を使う。
  • 肩がすくんで前に出る:肩甲骨を寄せて下げたまま押す。肩の前が痛む場合は手幅を少し狭める。
  • インクラインの角度が高すぎる:45度を超えると肩の種目に近づく。30度前後にする。
  • ベンチプレスだけを週1回:週のセット数が足りなくなりやすい。2回に分ける。
  • 増量で食べすぎる:脂肪が増えると胸の輪郭もぼやける。体重と腹囲の両方を見る。
  • 他人と比べて焦る:大胸筋は個人差が大きい筋肉である。自分の記録と写真で比べる。

胸のトレーニングで注意することは?

ベンチプレスは、つぶれたときにバーが胸や首に落ちる危険がある。重い重量を扱うときは補助者をつけるか、セーフティーバーのあるラックを使う。肩や肘、手首に持病がある人は、始める前に医師に相談してほしい。運動中に肩の奥や胸の筋肉に鋭い痛みが出たら中止する。胸が締めつけられるような痛みや息苦しさ、めまいは筋肉ではなく心臓などの病気のサインの可能性があるため、すぐに運動をやめて医療機関を受診する。乳腺のふくらみやしこりが気になる場合も、自己判断せず医師に相談する。

よくある質問

胸板はどれくらいで厚くなる?

研究では8週間で大胸筋の厚さが数mm増えた例があるが、見た目の変化には数か月かかることが多い。最初の数週間は伸びが大きく、その後ゆるやかになるのが普通である。

腕立て伏せだけで胸板は厚くなる?

負荷をそろえれば可能である。ベンチプレス40%1RMと同程度の負荷に調整した腕立て伏せで、8週間後の大胸筋の厚さはベンチプレスと同じように増えた。回数が増えすぎたら足を台に乗せるなどして負荷を上げる。

胸の上部が薄いときは?

ベンチを30度前後傾けたインクラインプレスを加える。筋電図では30度で大胸筋上部の活動が最も高く、8週間の試験ではインクライン群で上部の厚さの変化が大きかった。

胸の筋トレは週何回がいい?

週2回が目安である。大胸筋に週10セット前後を2回に分けると、1回の負担を抑えながら量を確保できる。

胸板を厚くするには増量が必要?

体の線が細い人は、食べる量を少し増やすと筋肉が増えやすい。ただし食べすぎると脂肪も増え、ある試験では体重増加の大きい群で脂肪量が15%増えた。体重と腹囲を見ながら少しずつ増やす。

KINNIKU TIMESの視点

胸板の厚みは大胸筋の厚さで変えられる。押す種目を週2回、合計10セット前後を目安に、重さか回数を少しずつ伸ばし、上部が薄ければ30度のインクラインを加えたい。伸びは最初の数週間が大きく、その後ゆるやかになるため、セット数や種目の調整を一つずつ試しながら長く続けることが大切である。増量は脂肪が増えすぎない範囲で行い、肩幅や腕の太さとのバランスも見ながら上半身を整えていくのが現実的である。


出典:Holzbaur KR et al. J Biomech. 2007/Kikuchi N, Nakazato K. J Exerc Sci Fit. 2017/Rodríguez-Ridao D et al. Int J Environ Res Public Health. 2020/Chaves SFN et al. Int J Exerc Sci. 2020/Schoenfeld BJ et al. J Sports Sci. 2017/Currier BS et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026/Ogasawara R et al. Eur J Appl Physiol. 2013/Garthe I et al. Eur J Sport Sci. 2013/Morton RW et al. Br J Sports Med. 2018

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