ディップスのやり方 胸と腕に効かせるフォーム・深さ・回数の目安を研究で解説
ディップスの正しい手順、胸と二の腕への効かせ分け、ベンチ・平行棒・リングの違い、沈む深さと肩への負担、できない人の練習法、回数・セット数の目安を、研究とACSMの指針をもとに整理しました。
ディップスは、平行棒(ディップスバー)を握って腕を伸ばして体を支え、肘を曲げて肩が肘の高さ近くまで沈んだら、腕を伸ばして体を押し上げる種目である。上体をやや前に倒すと胸、上体を立てると二の腕の上腕三頭筋に効きやすい。初心者は補助つきや足をついたディップスで6〜10回を2〜3セットから始め、肩に痛みが出ない深さで止めることが大切だ。
ディップスで鍛えられる筋肉は?
主に鍛えられるのは、二の腕の裏の上腕三頭筋、胸の大胸筋、肩の前の三角筋前部である。ディップス(Dips)は自分の体重を腕で押し上げる種目で、腕立て伏せより大きな負荷がかかり、上半身の押す力をまとめて鍛えられる。
マッケンジーらの2022年の研究(International Journal of Environmental Research and Public Health誌)では、トレーニング経験のある男性13人が、ベンチの縁に手をつくベンチディップス、平行棒で行うバーディップス、吊り輪で行うリングディップスの3種類を行い、動きと9つの筋肉の活動を比べた。上腕三頭筋の最大活動は、ベンチで0.83mV、平行棒で1.04mV、リングで1.05mVで、ベンチが最も低かった。大胸筋と三角筋前部も平行棒とリングのほうが高く、大胸筋はリングで最も高かった。腕と胸の鍛え方の全体像は上腕三頭筋の鍛え方と大胸筋の筋トレガイドにまとめている。
ディップスの正しいやり方は?
肩を下げて体を支え、2秒ほどかけて沈み、肩が肘の高さ近くまで来たら押し上げるのが基本の手順である。
- バーを握る:平行棒を肩幅程度の幅で握る。手のひらは内側に向け、手首はまっすぐに保つ。
- 体を支える:台を使って跳び上がり、腕を伸ばして体を支える。肩をすくめず、耳から遠ざけるように下げる。
- 姿勢を決める:胸を軽く張り、ひざを曲げて足首を交差させるか、脚をまっすぐ下に伸ばす。
- 沈む:息を吸いながら、2秒ほどかけて肘を曲げる。肘は真後ろか、やや外向きに曲げる。
- 止める:肩が肘の高さ近くまで下がったら止める。肩の前に突っ張る感じや痛みがあれば、その手前で止める。
- 押し上げる:手のひらでバーを押し、息を吐きながら腕を伸ばして元の位置に戻る。上で肘を勢いよく伸ばしきらない。
胸と二の腕、効かせ分けはできる?
上体を前に倒すほど胸と肩の前、上体を立てるほど上腕三頭筋に負荷が移りやすい。
胸を狙う場合は、上体を20〜30度ほど前に倒し、肘をやや外に開いて沈む。二の腕を狙う場合は、上体をできるだけ立てて、肘を体の横で真後ろに曲げる。マッケンジーらの研究でも、ベンチディップスは平行棒やリングより上体の前傾が小さく(平均約13度)、沈む深さの多くを肩を後ろに引く動きでまかなっていた。上体の角度によって、肩と肘のどちらで沈むかが変わることが分かる。
同じ研究グループの2022年の別の研究(同誌)では、健康な男性15人が平行棒のディップスを限界まで行い、最初の数回と最後の数回を比べた。疲れてくると1回にかかる時間は長くなったが、関節の最大角度は大きく変わらず、著者らはディップスが疲れても動きが崩れにくく、大胸筋と上腕三頭筋を効果的に鍛えられる種目だと述べている。二の腕を伸ばした姿勢で鍛える種目は頭上で行う上腕三頭筋の研究も参考になる。
ベンチディップスは避けたほうがいい?
ベンチディップスは手軽だが、肩を後ろに大きく引く姿勢になるため、肩に不安がある人は控えめにしたほうがよい。
マッケンジーらの研究では、ベンチディップスの肩の伸展(腕を後ろに引く動き)は平均88度で、参加者が自分で動かせる最大範囲の101%に達していた。リングディップスは62度(最大範囲の69%)だった。著者らは、肩の痛みやけがの経験がある人にベンチディップスを日常的に使うことは勧めないとし、平行棒のディップスを補助や足つきで負荷を調整する方法を挙げている。リングは不安定で落下の危険があるため、初心者や疲れているときは平行棒のほうが安全だとしている。
何回・何セットが目安?できない人は?
初心者は補助つきで6〜10回を2〜3セット、自重で10回以上できる中級者は重りをつけて6〜10回を3セットが目安である。
自重で1回もできない場合は、足を床や台についたまま行う、ゴムバンドやアシストマシンで体重を軽くする、跳び上がった姿勢から3〜5秒かけてゆっくり沈む動きだけを行う、といった段階から始める。腕立て伏せで押す力をつけておくのも近道だ(腕立て伏せの正しいやり方)。
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解(Currierら、137本の系統的レビューのまとめ)は、筋力向上には全可動域、2〜3セット、週2回以上が有利で、筋肥大には週10セット以上の量が有利と整理している。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを勧めている。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | 足つき・補助つきディップス | 8〜10回(余力2〜3回) | 2〜3 | 90秒 |
| 初心者(週2回) | ゆっくり下ろすディップス(3〜5秒) | 3〜5回 | 2 | 90秒〜2分 |
| 中級者(週2回) | 自重ディップス | 8〜15回(余力1〜2回) | 3 | 2分 |
| 中級者(週2回) | 加重ディップス(ベルトやダンベル) | 6〜10回 | 3 | 2〜3分 |
胸の日に行う場合は、ベンチプレスの後に入れると組みやすい。自重で15回以上できるようになったら、重りを2.5〜5kgずつ足して負荷を上げる。
よくある間違いとチェックポイントは?
多いのは「深く沈みすぎる」「肩がすくむ」「反動を使う」の3つである。
- 深く沈みすぎる:肩が肘より大きく下がるまで沈むと、肩の前に強い負担がかかりやすい。肩が肘の高さ近くまでを目安にする。
- 肩がすくむ:肩が耳に近づくと、首と肩の上に力が入る。体を支えるときから肩を下げておく。
- 反動を使う:脚を振ったり、下で弾んだりすると、関節に急な負担がかかる。下で一瞬止めてから押し上げる。
- 肘が大きく外に開く:肘が真横に開くと、肩をひねる力が強くなる。やや外向き程度にとどめる。
- 手首が反る:手首が後ろに折れると痛めやすい。前腕の真上にバーが乗るように握る。
- 上で肘を勢いよく伸ばしきる:肘に衝撃が加わる。伸びきる直前でコントロールする。
安全に行うための注意点は?
ディップスは肩を大きく動かす種目のため、肩に痛みや不安がある人は、深さを浅くするか、別の押す種目に置き換えるのが安全である。
コルバーらの2010年のレビュー(Journal of Strength and Conditioning Research誌)は、筋トレに関連したけがや障害のうち最大36%が肩に起きていると報告し、要因の一つに不適切なフォームを挙げている。沈む途中で肩の前に鋭い痛みや引っかかる感じがあれば、その日はすぐに中止する。肩や肘にけがの経験がある人、持病がある人は、始める前に医師に相談してほしい。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたら、ただちに中止すること。加重する場合は、ウォームアップで自重のディップスを数回行い、肩を温めてから始めたい。
よくある質問
ディップスは胸と腕のどちらに効きますか?
両方に効きますが、上体の角度で比重が変わります。上体を前に倒すと大胸筋と肩の前、上体を立てると上腕三頭筋に負荷が移りやすくなります。
どこまで深く沈めばいいですか?
肩が肘の高さ近くまで下がるところが目安です。肩の前に突っ張る感じや痛みがある人は、その手前で止めましょう。深く沈むほど肩を後ろに引く角度が大きくなり、肩への負担が増えます。
1回もできません。どう練習すればいいですか?
足を床や台についたまま行う、ゴムバンドやアシストマシンで体重を軽くする、上から3〜5秒かけてゆっくり沈む動きだけを行う、といった方法から始めましょう。腕立て伏せで押す力を高めておくのも有効です。
ベンチディップスでも代わりになりますか?
ベンチディップスは手軽ですが、平行棒より上腕三頭筋の活動が低く、肩を後ろに引く角度が大きくなります。肩に不安がある人は、足つきや補助つきの平行棒ディップスのほうが調整しやすいでしょう。
ディップスで肩が痛いときはどうすればいいですか?
その日は中止し、痛みが続く場合は医師に相談してください。再開するときは、沈む深さを浅くする、上体を立てすぎない、肩をすくめないといった点を確かめ、軽い負荷から始めましょう。
KINNIKU TIMESの視点
ディップスは、器具が平行棒だけで済み、自分の体重で胸と二の腕、肩の前をまとめて鍛えられる種目である。効かせ分けの鍵は上体の角度で、胸なら前傾、二の腕なら直立が基本になる。一方で、肩を後ろに大きく引く動きを含むため、深さは「肩が肘の高さ近くまで」を上限とし、痛みが出る深さまでは沈まないことが長く続けるための条件だ。できない人は足つきや補助つきから始め、自重で15回できたら重りを足していきたい。肩の後ろ側を鍛えて前後のバランスを整えるにはフェイスプルを組み合わせるとよい。肩全体の鍛え方は肩の筋トレガイドも参考にしてほしい。
出典:McKenzie A, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(20):13211/McKenzie A, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(21):14390/Kolber MJ, et al. J Strength Cond Res. 2010;24(6):1696-704/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
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