ベンチディップスのやり方|椅子でできる二の腕の自重トレと肩の注意点
ベンチディップス(Bench Dips)は、椅子の座面に手をついて体を上下させ、二の腕の裏(上腕三頭筋)を鍛える種目です。道具は椅子1脚で足りますが、肩を後ろへ大きく引く動きなので、下ろすのは肘が90度までにとどめ、肩の前に痛みが出たらやめることが安全の基本です。椅子は壁につけ、動かない・滑らないものを使ってください。
ベンチディップス(椅子)の3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)
ベンチディップスはどこに効く?
答えは、二の腕の裏(上腕三頭筋)が中心で、胸(大胸筋)と肩の前(三角筋の前部)も補助として働きます。肘を伸ばす動きで体を押し上げるため、二の腕の裏に負荷が集まりやすいのが特徴です。
マッケンジーら(2022年)は、筋トレ経験のある男性13人で、椅子などを使うベンチディップ、平行棒で行うバーディップ、つり輪で行うリングディップを比べました。ベンチディップの二の腕の裏の筋活動の平均最大値は0.83mVで、バーディップ(1.04mV)やリングディップ(1.05mV)より低い値でした。著者らは、ベンチディップは主に二の腕の裏を使う種目で、より強い刺激がほしい人はバーディップへ進むのが適切だとしています。
つまり、ベンチディップスは自宅で始めやすい入り口の種目です。肩と腕をまとめて鍛えたい人は自重で肩と腕を鍛える方法もあわせてご覧ください。
肩は痛めやすい?どこに気をつける?
注意が必要です。同じ研究では、ベンチディップは3種類の中で肩を後ろへ引く角度が大きく、参加者が自分で動かせる範囲の約101%まで達していました。著者らは、この姿勢は肩の前側の関節包やじん帯に負担がかかりうると指摘し、肩に痛みやけがの経験がある人に処方する際は配慮が要るとしています。
そこで、次の3点を守ってください。
- 下ろすのは肘が90度まで: お尻を床すれすれまで下ろす必要はありません
- 肩をすくめない: 首を長く保ち、肩を耳から遠ざけます
- 肩の前にチクッとした痛みや引っかかりを感じたら、その日は中止する: 浅くしても痛む場合は、ダイヤモンドプッシュアップなど肩を後ろへ引かない種目に替えます
椅子の選び方と置き方は?
動かない、滑らない、倒れない椅子を選ぶことが安全対策の基本です。
- 使える椅子: 4本脚で座面が硬く、体重をかけてもきしまないもの。背もたれ側を壁にぴったりつけます
- 避ける椅子: キャスター付きの椅子、折りたたみ椅子、回転する椅子、座面が柔らかいソファ
- 床: フローリングで椅子の脚が滑る場合は、滑り止めマットを敷くか、ほかの場所に移します
- 確認: 始める前に座面の端に手をついて体重をかけ、椅子が前後に動かないかを確かめます
椅子が動いて後ろへ倒れると、頭や腰を打つ危険があります。少しでもぐらつく場合は使わないでください。
ベンチディップスのやり方は?
- 壁につけた椅子の座面の前の端に座り、両手を太ももの横の座面につきます。指先は前に向けます
- 手で座面を押してお尻を前に出し、座面から浮かせます。膝は90度に曲げ、足は腰幅に置きます
- 胸を張り、肩を下げて、背中を座面の端に沿わせるように保ちます
- 2〜3秒かけて肘を後ろへ曲げ、肘が90度になるところまで体を下ろします
- 手のひらで座面を押し、1〜2秒で肘を伸ばして元の位置に戻ります。肘は伸ばしきって固めません
- 下ろすときに吸い、押し上げるときに吐きます
動きの軌道は上の3Dアニメーションで確認できます。体は前に流さず、ほぼ真下へ下ろすのがこつです。
よくある間違いは?
- 深く下ろしすぎる: 肩の前への負担が増えます。肘90度で止めます
- お尻が椅子から離れすぎる: 体が前に出ると肩が強く引かれます。背中を座面の近くに保ちます
- 肘が外へ開く: 肘は真後ろへ曲げます
- 肩がすくむ: 首が短く見えたら、肩を下げ直します
- 脚で押し上げる: 回数は増えても腕への負荷が減ります。脚は支える程度にします
- 勢いよく下ろす: 反動で深く入りやすくなります。2〜3秒かけて下ろします
肩・肘・手首に痛みが出たら中止してください。肩に痛みやけがの経験がある人、持病のある人、妊娠中の人は、始める前に医師に相談してください。運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止してください。
何回・何セットやればいい?
8〜15回をきれいに行える形を選び、2〜3セットから始めます。アメリカスポーツ医学会(ACSM)の指針(2009年)では、筋トレ初心者は8〜12回で限界になる程度の負荷、週2〜3日が目安です。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、自重トレーニングを含む筋トレを週2〜3日行うことがすすめられています。
| レベル | 足の位置 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初級 | 膝を90度に曲げる | 8〜12回 | 2セット | 60〜90秒 |
| 中級 | 膝を軽く曲げて足を前に出す | 10〜15回 | 3セット | 60〜90秒 |
| 上級 | 膝を伸ばしてかかとを床につく | 12〜20回 | 3セット | 60秒 |
回数・セット・頻度の考え方は自重トレーニングの回数・セット・頻度にまとめています。
やさしくする・きつくする方法は?
やさしくする
- 足を体に近づける: 膝を深く曲げると脚で支える割合が増えます
- 下ろす幅を浅くする: 肘45〜60度から始め、痛みがなければ90度へ広げます
- 下ろす動きだけ行う: 3秒かけて下ろし、脚の力も使って戻ります
きつくする
- 膝を伸ばす: 腕で支える割合が増えます
- 下ろす時間を長くする: 4秒かけて下ろし、肘90度で1秒止めます
- 片足を浮かせる: 支える脚が減り、腕への負荷が増えます
足を別の椅子に乗せる方法もありますが、椅子が2脚とも動かないことが条件になり、転倒の危険も増えます。負荷を上げたいときは、まず回数とゆっくりした動きで調整しましょう。ほかの方法は自重で負荷を上げる方法で解説しています。
よくある質問
二の腕のたるみに効きますか?
ベンチディップスは二の腕の裏の筋肉を鍛えますが、腕だけ脂肪を減らすことはできません。見た目を変えたい場合は、全身の筋トレと食事、日常の活動量を組み合わせて考えましょう。女性向けの組み立ては自重トレーニングで女性がダイエットする方法をご覧ください。
肩の前が痛くなります。どうすればいいですか?
まず下ろす深さを浅くし、肩をすくめずに行えているか確認してください。それでも痛む場合は中止し、肩を後ろへ引かない種目に替えましょう。痛みが数日続くときや、何もしなくても痛むときは医師に相談してください。
椅子がない場合はどうすればいいですか?
しっかりした低い段差や、固定された公園のベンチでも行えます。ソファやベッドの縁は沈んだり滑ったりするため避けてください。
毎日やってもいいですか?
同じ部位を続けて強く使うと、回復が追いつきません。1〜2日あけて週2〜3回が目安です。毎日鍛えたい人は毎日の筋トレの考え方を参考にしてください。
ほかにどんな腕の種目がありますか?
腕立ての手幅を狭くするダイヤモンドプッシュアップも二の腕の裏に効きます。動きの違いは3D種目図鑑で見比べられます。記事全体は自重トレ大全のトップから探せます。
出典
- McKenzie A, et al. 2022「Bench, Bar, and Ring Dips: Do Kinematics and Muscle Activity Differ?」International Journal of Environmental Research and Public Health
- American College of Sports Medicine 2009「Progression models in resistance training for healthy adults」Medicine & Science in Sports & Exercise
- 厚生労働省 2024「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 筋力トレーニングについて」
この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。