ワイドプッシュアップのやり方|胸を使う手幅と回数の目安
ワイドプッシュアップ(Wide Push-up)は、手幅を肩幅の約1.5倍に広げて行う腕立て伏せです。胸を開く感覚をつかみやすい一方、研究では手幅を広げても筋活動が大きくなるわけではないと報告されています。広げすぎず、肘の角度を守って行うのがポイントです。
ワイドプッシュアップの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)
ワイドプッシュアップでは、どこが鍛えられる?
主に大胸筋(胸)、補助として肩の前側と上腕三頭筋(二の腕の裏側)が働きます。
よく「手幅を広げると胸に効く」と言われますが、研究の結果は少し違います。コグリーら(2005年)は40人(男性11人、女性29人)を対象に、肩幅・広い手幅・狭い手幅の腕立て伏せで筋活動を比べました。すると、大胸筋も上腕三頭筋も、狭い手幅のほうが広い手幅より筋活動が大きかったのです。
インツィエギアンニら(2026年)が若い男性20人で行った研究でも、大胸筋と上腕三頭筋の相対的な筋活動は、ダイヤモンド(狭い手幅)で通常・ワイドより高くなっていました。
それでもワイドプッシュアップを行う理由はあります。
- 腕の負担が減るぶん、胸の動きに意識を向けやすい
- 手幅が狭い種類で手首や肘に違和感がある人の選択肢になる
- 胸を大きく開く動きで、種目の変化をつけられる
ほかの腕立て伏せとの違いは腕立て伏せの種類で一覧にしています。
ワイドプッシュアップは、どんな人に向いている?
通常の腕立て伏せに慣れ、胸の動きをより意識したい人に向いています。
- 通常の腕立て伏せを10〜15回できるようになり、変化をつけたい人
- 手幅の狭い種類で、手首や肘に違和感が出やすい人
- 胸を開いて閉じる感覚をつかみ、胸の種目の質を上げたい人
- 自宅でのメニューに、胸の種目を2種類以上入れたい人
一方で、肩に痛みがある人は、手幅を広げることで肩の前側への負担が増える場合があります。その場合は手幅を通常に戻すか、膝つきで負荷を軽くしてから様子をみてください。
ワイドプッシュアップの正しいやり方は?
手は肩幅の約1.5倍、肘は体に対して45〜60度くらいの角度で下ろします。
- うつぶせになり、手を肩幅の約1.5倍の位置につく。指先は前か、やや外向きにする
- 手は肩の真横か、少し下(胸の横)に置く
- 脚を後ろに伸ばし、頭からかかとまでを一直線にする
- 息を吸いながら、2秒ほどかけて胸を床に近づける。肘は真横に張らず、斜め後ろへ曲げる
- 胸が床から拳1つ分の高さまで下りたら、息を吐きながら床を押して戻る
- 上で肩甲骨を軽く開き、次の回に入る
基本の姿勢は腕立て伏せの正しいやり方と同じです。違いは手幅だけと考えてください。
ワイドプッシュアップでよくある間違いは?
- 手幅を広げすぎて、胸が十分に下りない
- 肘を真横(体と90度)に張り出し、肩の前側に負担をかけている
- 手を顔の横につき、肩がすくんで首が縮こまる
- 腰が落ちる、またはお尻が上がって体が一直線になっていない
- 下ろす動きが速く、反動で押し返している
手幅は「下ろしたときに前腕が床とほぼ垂直になる位置」が目安です。肘が手より内側に入りすぎたり、外へ流れたりしない幅を探しましょう。
自分では姿勢が見えにくいので、スマートフォンで横から撮影して確かめるのもおすすめです。頭・肩・腰・かかとが一直線に並んでいるか、胸が手の高さ近くまで下りているかを見てください。3Dの動きと見比べると、違いが分かりやすくなります。
ワイドプッシュアップは何回・何セットやればいい?
正しいフォームで10〜15回できる段階を選び、3セットが目安です。
| レベル | やり方 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初級 | 膝つきワイド | 10〜15回 | 2〜3 | 60〜90秒 |
| 中級 | 通常のワイド | 10〜15回 | 3 | 60〜90秒 |
| 上級 | 足を台にのせたワイド | 8〜12回 | 3〜4 | 90〜120秒 |
アメリカスポーツ医学会(ACSM、2009年)の指針では、筋トレを始めたばかりの人は週2〜3日、決めた回数より1〜2回多くできるようになったら負荷を上げるようすすめています。
菊池と中里(2017年)は、若い男性18人の研究で、膝をつくなどして負荷を調整した腕立て伏せを週2回・8週間続けたところ、大胸筋の厚みが増えたと報告しています。回数を限界近くまで行うことで、膝つきでも胸への刺激を得やすくなります。
1週間のメニューへの組み込み方
ワイドプッシュアップは、胸の日の最初か2番目に入れると、胸の動きを意識しやすくなります。手幅の違う種類を組み合わせると、胸と腕をまんべんなく使えます。
| 順番 | 種目 | 回数 | セット |
|---|---|---|---|
| 1 | ワイドプッシュアップ | 10〜15回 | 3 |
| 2 | 通常の腕立て伏せ | 8〜12回 | 2 |
| 3 | ダイヤモンドプッシュアップ | 6〜10回 | 2 |
これを週2回、間を2〜3日空けて行うのが目安です。セット間の休み方はセット間の休憩時間の目安も参考にしてください。
ワイドプッシュアップをやさしく・きつくするには?
やさしくする方法
- 膝をついて行う
- 机やベンチに手をつく(インクラインの形)
- 下ろす深さを半分にする
きつくする方法
- 下ろす動きに3〜4秒かける
- いちばん下で1〜2秒止まる
- 足を椅子や台にのせる(デクラインプッシュアップの形)
- 左右のどちらかに体重を寄せ、片腕に多く負荷をかける(アーチャー型)
胸を鍛えるほかの種目との組み合わせは自重で胸を鍛えるメニュー、負荷の上げ方は自重トレーニングで負荷を上げる方法で解説しています。
肩・手首・肘に痛みが出たら、すぐに中止してください。持病のある人、妊娠中の人、けがをしている人は、始める前に医師に相談してください。胸の痛み・息苦しさ・めまいを感じたら、ただちに運動をやめてください。
よくある質問
ワイドプッシュアップは通常の腕立て伏せより胸に効きますか?
研究では、手幅を広げても大胸筋の筋活動は大きくならず、狭い手幅のほうが大きいという結果が出ています。胸を鍛えたい場合は、ワイドだけにこだわらず、通常やダイヤモンドプッシュアップと組み合わせてください。
手幅はどれくらいが正解ですか?
肩幅の約1.5倍が目安です。下ろしたときに前腕が床とほぼ垂直になり、肩に痛みが出ない幅を選んでください。広げすぎると動ける範囲が狭くなり、肩への負担も増えます。
肩が痛くなります。どうすればいいですか?
肘を真横に張っていないか確認し、斜め後ろへ曲げるようにしてください。手幅を少し狭める、膝つきで負荷を減らすのも有効です。痛みが続く場合は中止し、医師に相談してください。
膝つきのワイドでも意味はありますか?
あります。菊池と中里(2017年)の研究では、膝をつくなどして負荷を調整した腕立て伏せでも、8週間で大胸筋の厚みが増えていました。大切なのは、正しいフォームで限界に近い回数まで行うことです。膝つきで15回×3セットが楽になったら、膝を離した形に進みましょう。
どのくらいで胸の変化を感じますか?
個人差がありますが、研究では8週間ほどで筋肉の厚みの変化が測られています。見た目の変化はさらに時間がかかることもあります。目安は筋トレの効果が出るまでの期間を参考にしてください。動きは3D種目図鑑で、そのほかの記事は自重トレ大全のトップから確認できます。
出典
- Cogley RMら 2005年「Comparison of muscle activation using various hand positions during the push-up exercise」Journal of Strength and Conditioning Research
- Intziegianni Kら 2026年「Electromyographic Activation of the Pectoralis Major and Triceps Brachii Muscles During Standard, Diamond, and Wide Hand Position Push-Ups」Muscles
- Kikuchi N, Nakazato K 2017年「Low-load bench press and push-up induce similar muscle hypertrophy and strength gain」Journal of Exercise Science and Fitness
- American College of Sports Medicine 2009年「Progression models in resistance training for healthy adults」Medicine and Science in Sports and Exercise
この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。