腕立て伏せの正しいやり方と回数の目安 ひざつきから負荷を上げる方法を研究で解説
腕立て伏せは頭からかかとまで一直線を保ち、胸が床に近づくまで下ろすのが基本。壁・台・ひざつきから通常、足上げへと負荷を上げる段階、回数とセット数の目安、よくある間違いを研究で整理した。
腕立て伏せの正しいやり方は、手を肩幅よりこぶし1つ分ほど広くつき、頭からかかとまでを一直線に保ったまま、胸が床から5cmほどの高さになるまで下ろして押し返す動きである。回数の目安は、初心者なら正しいフォームで10〜15回×2〜3セットを週2〜3回。通常の腕立て伏せが10回できない人は、壁や台に手をつく、ひざをつくなど負荷を軽くした形から始めればよい。研究では、負荷をそろえた腕立て伏せはベンチプレスと同じように胸の筋肉を大きくし、筋力を伸ばした例がある。
腕立て伏せで鍛えられる筋肉は?
腕立て伏せ(Push-up)で主に働くのは、胸の大胸筋、腕の裏側の上腕三頭筋、肩の前側の三角筋前部で、体を一直線に保つために腹筋群も使う。道具がいらず、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、筋力トレーニングには腕立て伏せのような自重の運動も含まれると明記されている。同ガイドは成人に筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨している。
腕立て伏せでも筋肉は十分に育つ。日本体育大学のKikuchiとNakazatoによる2017年の研究(Journal of Exercise Science & Fitness、男性18人、8週間・週2回)では、1RMの40%のベンチプレスと、ひざつきなどで同じ負荷に調整した腕立て伏せを比べた。どちらもベンチプレスの1RMと大胸筋・上腕三頭筋の厚さが同じように増えた。Calatayudらの2015年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、筋トレ経験の豊富な大学生30人、5週間)でも、ゴムバンドで負荷を足して6回が限界になるようにした腕立て伏せは、6RMのベンチプレスと同じように1RMと6RMを伸ばした。重さの調整さえすれば、腕立て伏せはベンチプレスに近い効果を期待できる種目である。ジムでのやり方はベンチプレスのやり方とフォームで解説している。
腕立て伏せの正しいやり方は?
正しいやり方は、次の7つの手順で行うことである。
- 手をつく:四つんばいになり、手を肩の真下よりこぶし1つ分ほど外側につく。指先は前か、やや外に向ける。
- 脚を伸ばす:片脚ずつ後ろに伸ばし、つま先で支える。足は腰幅か、それより狭くそろえる。
- 一直線を作る:おなかとお尻に軽く力を入れ、頭・背中・お尻・かかとが一直線になるようにする。目線は手の少し前の床。
- 息を吸いながら下ろす:ひじを体の横に対して斜め45度ほどに曲げ、2秒ほどかけて体を下ろす。
- 胸を床に近づける:胸が床から5cmほどの高さ(こぶし1つ分)になるまで下ろす。
- 息を吐きながら押す:手のひら全体で床を押し、体を一直線のまま元の位置へ戻す。
- ひじを伸ばしきって整える:上で肩甲骨を軽く開き、姿勢を整えてから次の回へ移る。
よくある間違いとチェックポイントは?
多い間違いは、腰が落ちる、お尻が上がる、下ろす深さが足りない、の3つである。横からスマートフォンで撮影すると確認しやすい。
- 腰が落ちる:おなかの力が抜けると腰が反り、腰に負担がかかる。おなかとお尻を締めて一直線を保つ。
- お尻が高く上がる:体が「く」の字になると胸への負荷が減る。かかとから頭までを一枚の板のように保つ。
- 浅く下ろす:数cmしか曲げないと回数は増えても刺激が小さい。胸が床に近づくまで下ろし、それが難しければ負荷を軽い段階に戻す。
- ひじを真横に張る:ひじが肩の高さで真横に開くと肩を痛めやすい。斜め後ろに曲げる。
- 頭だけ先に下がる:あごを突き出して床に近づけても、胸は下りていない。頭は背骨の延長線上に置く。
- 速すぎる:反動で弾むと筋肉への負荷が抜けやすい。下ろす動作は2秒を目安にコントロールする。テンポと筋肥大の関係はレップのテンポのメタ分析で紹介している。
手幅を狭くすると、胸と腕の裏側の筋活動がともに高まる。Cogleyらの2005年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、40人)では、手を肩幅より狭くついた腕立て伏せは、広くついた場合より大胸筋と上腕三頭筋の筋活動が高かった。慣れてきたら手幅を狭める形も取り入れられる。
負荷を軽くする・重くする方法は?
負荷は、手を高い位置につくと軽くなり、足を高い位置に乗せると重くなる。Ebbenらの2011年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、男女23人)では、床反力計で6種類の腕立て伏せの負荷を測った。足を台に乗せた形は他のすべての形より負荷が大きく、手を台についた形とひざをついた形は他より負荷が小さかった。男女差は見られなかった。この結果をもとに、次の順番で段階を上げていける。
- 壁に手をつく腕立て伏せ
- 机や台に手をつく腕立て伏せ(台が低いほど重くなる)
- ひざつき腕立て伏せ
- 通常の腕立て伏せ
- 足を台に乗せる腕立て伏せ(台が高いほど重くなる)
今の段階で15回×3セットを正しいフォームでこなせたら、次の段階へ進むのが目安である。
何回・何セットが目安?
初心者は正しいフォームで10〜15回×2〜3セットを週2〜3回が目安である。1セットで20回以上できるようになったら、回数を増やし続けるより、足を高くする、下ろす動作をゆっくりにするなどで負荷を上げたほうが効率がよい。軽い負荷でも限界近くまで行えば筋肥大は起こりうることはレップ数のメタ分析で紹介している。毎セット限界まで追い込む必要があるかは限界まで追い込むべきかの試験が参考になる。週あたりの回数の考え方はトレーニング頻度のメタ分析で紹介している。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2〜3回) | 台に手をつく腕立て伏せ | 10〜15回 | 2〜3 | 60秒 |
| 初心者(週2〜3回) | ひざつき腕立て伏せ | 8〜15回 | 2〜3 | 60〜90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | 通常の腕立て伏せ | 12〜20回 | 3 | 90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | 足を台に乗せる腕立て伏せ | 8〜15回 | 2〜3 | 90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | 手幅を狭くした腕立て伏せ | 8〜12回 | 2 | 90秒 |
背中の筋肉とのバランスをとるには、引く種目も同じ週に入れるとよい。家でもできる引く種目は懸垂ができない人の練習方法で紹介している斜め懸垂が使いやすい。
腕立て伏せの回数は健康と関係がある?
腕立て伏せの回数と心臓や血管の病気との関連を調べた研究はある。Yangらの2019年の研究(JAMA Network Open)は、米国の男性消防士1,104人を約10年追跡し、37件の心血管疾患の発生を記録した。開始時に腕立て伏せが41回以上できた人は、10回以下だった人に比べて発生率が低く、発生率比は0.04だった。ただし年齢と体格指数(BMI)で調整した解析では統計的に有意な差とはいえず、対象は働き盛りの男性に限られる。回数が多いと病気にならないという因果関係を示すものではなく、体力の目安の一つとして受け止めるのが妥当である。
安全に行うための注意点は?
- 手首が痛む場合は、こぶしを握って床につく、プッシュアップバーを使うなどで手首の角度を浅くする。
- 肩やひじ、手首に鋭い痛みが出たら中止する。痛みが続く場合や持病がある場合は医師に相談する。
- 息を止めたまま続けない。高血圧などの持病がある人は特に、下ろすときに吸い押すときに吐く呼吸を守る。
- 運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休む。
よくある質問
腕立て伏せは毎日やってもいい?
軽い回数なら毎日でも大きな問題は起きにくいが、筋力や筋肉量を伸ばす目的なら週2〜3回、間に休息日を入れるほうが回復しやすい。厚生労働省は筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨している。
腕立て伏せが1回もできない場合は?
壁や机に手をつく形から始める。手をつく位置が高いほど負荷は軽くなる。台に手をつく形で15回×3セットできたら、台を低くするか、ひざつき腕立て伏せへ進む。
ひざつき腕立て伏せでも効果はある?
ある。負荷は通常の腕立て伏せより小さいが、今の筋力で胸が床に近づくまで正しく下ろせる形を選ぶことが大切である。Kikuchiらの研究でも、ひざつきなどで負荷を調整した腕立て伏せでベンチプレスと同等の筋肥大がみられた。
何回できれば平均的?
年齢や性別で大きく異なり、一律の基準はない。まずは正しいフォームで連続10回を最初の目標にし、その後は回数よりも負荷の段階を上げることを目安にするとよい。
手幅は広いほうが胸に効く?
研究では逆の結果もある。Cogleyらの2005年の研究では、手幅を狭くした腕立て伏せのほうが、広くした場合より大胸筋と上腕三頭筋の筋活動が高かった。肩に負担を感じない範囲で、手幅を変えて取り入れるとよい。
KINNIKU TIMESの視点
腕立て伏せは道具も場所も選ばない一方で、負荷の調整を忘れるとすぐに楽な運動になり、刺激が足りなくなる。大切なのは回数を競うことではなく、頭からかかとまで一直線、胸が床に近づくまで下ろす、というフォームを守れる段階を選び、15回×3セットこなせたら一段上げることである。壁から足上げまでの段階を使えば、運動経験の少ない人から鍛えている人まで、同じ種目で長く続けられる。
出典:Kikuchi N, Nakazato K. Low-load bench press and push-up induce similar muscle hypertrophy and strength gain(J Exerc Sci Fit, 2017)/Calatayud J, et al. Bench press and push-up at comparable levels of muscle activity(J Strength Cond Res, 2015)/Ebben WP, et al. Kinetic analysis of several variations of push-ups(J Strength Cond Res, 2011)/Cogley RM, et al. Comparison of muscle activation using various hand positions during the push-up(J Strength Cond Res, 2005)/Yang J, et al. Association Between Push-up Exercise Capacity and Future Cardiovascular Events Among Active Adult Men(JAMA Netw Open, 2019)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて
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