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筋トレは限界まで追い込むべき?19人の8週試験、2回残しでも筋肥大・筋力に差なし

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
ジムでダンベルを握る手元
SUMMARY|この記事の要約

1〜3回の余力(RIR)を残して止めても、限界まで追い込んだ場合と比べて8週間後の上腕の筋厚(+0.205cm対+0.237cm)と1RM(+5.41kg対+6.00kg)の伸びに明確な差はなかった。筋トレ経験者19人が片腕ずつ条件を変えてプリーチャーカールを行った試験の結果である。

筋トレは毎セット限界まで追い込まなくても、1〜3回の余力を残して止めれば、上腕の筋肥大と筋力の伸びは限界まで行った場合とほぼ同じだった。ティアゴ・ヴァスコンセロス(Tiago Vasconcelos)氏らの研究チームが、筋トレ経験者19人に片腕ずつ別の条件で8週間トレーニングさせた試験の結果を、学術誌『Muscles』(MDPI)に2026年8月30日付で発表した。

限界条件とRIR条件の肘屈筋の筋厚変化を示す事後分布
図:Tiago Vasconcelosほか「Elbow Flexor Adaptations to Failure Versus Repetitions-in-Reserve Training: A Unilateral Within-Participant Study in Resistance-Trained Adults」Muscles(2026)Figure 1(両条件の筋厚変化と条件間の差の事後分布)/出典:Muscles(MDPI)/ライセンス:CC BY 3.0(改変なし)

「限界まで」と「余力を残す」をどう比べた?

対象は、2年以上の筋トレ歴があり週3回以上トレーニングしている若年成人19人(男性11人、女性8人)である。平均年齢は男性20.4歳、女性24.8歳。1人の左右の腕に別々の条件を割り当てる「被験者内比較」で、片腕は毎セット動かせなくなるまで続ける「限界条件」、もう片腕はあと1〜3回できる余力(RIR:Repetitions in Reserve)を残して止める「RIR条件」(目標は2回残し)とした。

項目 内容
種目 片腕のプリーチャーカール
負荷・回数 1RMの70〜80%で8〜12回
頻度 週2回(48〜96時間あける)
セット数 1種目3セット、期間の途中で4セットに増加
期間 8週間
測定 超音波で上腕3か所の筋厚、1RM(最大挙上重量)

筋肥大と筋力の結果は?

両条件とも筋厚・筋力ははっきり増えた。条件間の差は次の通りである。

指標 RIR条件 限界条件 差(限界−RIR)
筋厚(3か所の合計評価) +0.205cm +0.237cm +0.032cm(95%HDI −0.044〜0.113)
1RM +5.41kg +6.00kg +0.588kg(95%HDI −0.491〜1.66)

数値上は限界条件がわずかに上回ったが、ベイズ統計で求めた95%最高密度区間(HDI)はいずれもゼロをまたいでおり、差の向きさえはっきりしない。標準化した効果量(ヘッジズのg)は全体で0.112と小さく、男女別に見ても同様だった。著者らは「1〜3RIRで行うトレーニングは、限界まで行うトレーニングと同程度の肘屈筋の肥大と最大筋力の向上をもたらす」と結論づけている。

この研究の限界は?

  • 種目は単関節のプリーチャーカール1種目のみで、スクワットなどの多関節種目に当てはまるかは分からない
  • 19人と少人数で、小さな差を見つける力は限られる
  • 左右の腕で比べる設計のため、片側の練習が反対側の筋力にも影響する「クロスエデュケーション」の影響を受けうる
  • 利き腕を考慮した割り付けではなく、試験外の普段のトレーニングも統一されていない

限界まで追い込むべきかは長く議論されてきたテーマで、KINNIKU TIMESでも限界までのトレーニングに関するメタ分析を紹介している。今回の試験は同じ人の左右で比べたことで個人差の影響を抑えており、議論に新たなデータを加えた形である。

よくある質問

筋トレは毎回限界まで追い込むべき?

必須とは言えない。今回の試験では、1〜3回の余力を残しても8週間後の上腕の筋肥大と筋力は、限界まで行った場合とほぼ同じだった。

RIRとは何か?

「あと何回挙げられるか」という余力の回数である。RIR2なら「あと2回できるところでセットを終える」という意味になる。

女性でも同じ結果だった?

男女別の分析でも条件間の差は小さかった(女性のg=0.080)。ただし女性は8人と少なく、結論は慎重に扱う必要がある。

KINNIKU TIMESの視点

アーム種目のような単関節種目では、「あと2回できる」ところで止めるやり方を基本にしても、限界まで追い込んだ場合と遜色ない成果が期待できる。ただし、この試験では12回以上できたら1〜2kg重量を増やし、途中でセット数も3から4へ増やしていた。余力を残すことは手を抜くことではなく、重量と回数を記録して少しずつ伸ばしていく前提があってこその結果である。多関節種目や長期間での比較は今後の研究を待ちたい。


出典:Vasconcelos T, et al. Muscles 2026;5(3):61(2026年8月30日)/DOI: 10.3390/muscles5030061