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毎セット限界まで追い込むべきか。15研究のメタ分析が示した「オールアウト」の実力

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
バーベルを持ち上げようとする人
SUMMARY|この記事の要約

筋トレで毎セット限界まで追い込む必要はあるのか。15件の研究を統合したメタ分析では、限界まで行う方法の優位性はごく小さく、条件によっては差が確認されなかった。

「最後の1回が上がらなくなるまで追い込まないと筋肉は大きくならない」という通説に、データは慎重な答えを出している。研究者らが2023年に発表したメタ分析によると、限界(失敗)まで行うトレーニングは、余力を残すトレーニングと比べて筋肥大の上乗せ効果が「ごくわずか」にとどまり、厳密に定義した比較では有意な差が認められなかった。

研究デザイン:3種類の比較を統合

分析を行ったのは、Martin C. Refalo氏、Eric R. Helms氏らのグループである。PubMed、SCOPUS、SPORTDiscusの3つのデータベースを検索し、健康な成人を対象に筋肥大を測定した15件の研究を抽出した。

対象となった研究は、比較の仕方によって大きく3つに分けられる。1つ目は、動作が続けられなくなる「瞬間的な筋の失敗」まで行う群と、そうでない群の比較。2つ目は、セットを失敗で終える群と終えない群の比較。3つ目は、挙上速度がどれだけ落ちたらセットを打ち切るかという「速度低下のしきい値」を変えた比較である。速度低下のしきい値が高いほど、限界に近いところまで反復していることを意味する。

結果:優位性は「ごくわずか」

セットを失敗で終える方法と終えない方法を比べた全体の分析では、失敗まで行う側にわずかな優位性がみられた(効果量0.19、95%信頼区間0.00〜0.37、p=0.045)。ただし効果量0.19は、研究者自身が「ごくわずか(trivial)」と評価する水準で、信頼区間の下限はゼロに接している。

セットを失敗まで行う場合と行わない場合の筋肥大効果を比較したフォレストプロット
図:Refalo MC, Helms ER, Trexler ET, Hamilton DL, Fyfe JJ「Influence of Resistance Training Proximity-to-Failure on Skeletal Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-analysis」Sports Medicine(2023)Figure 2(失敗 vs 非失敗のフォレストプロット)/出典:Sports Medicine/ライセンス:CC BY 4.0(改変なし)
比較 効果量(95%信頼区間) 評価
セット失敗 vs 非失敗(全体) 0.19(0.00〜0.37) ごくわずかな優位
瞬間的な筋の失敗 vs 非失敗 0.12(−0.13〜0.37) 有意差なし
速度低下25%超 vs 20〜25% 0.08(−0.16〜0.32) 有意差なし

また、総挙上量(ボリュームロード)や使用重量の相対的な重さは、この結果を左右していなかった。研究チームは、瞬間的な筋の失敗まで行うトレーニングは非失敗トレーニングより優れているとはいえず、速度低下のしきい値を高くしても必ずしも筋肥大が大きくなるわけではないと結論づけた。限界への近さと筋肥大の関係は、直線的ではない可能性があるという。

研究の限界

この結論には注意点もある。統合できた研究数が少なく、統計的な検出力には限りがある。また研究ごとに「失敗」の定義がばらばらで、非失敗群が実際にどこまで限界に近づいていたかが明確でない研究も含まれる。感度分析では前提条件の設定によって結果が有意でなくなることがあり、研究者らも結果の頑健性には限界があると認めている。

なお同じ研究グループは、その後、限界までの残り回数と筋肥大の関係を用量反応の形で調べる解析も進めており、「限界に近いほど筋肥大がやや大きくなる傾向」を示唆するデータも出ている。つまり「追い込みは無意味」ということではなく、「最後の1回を潰れるまでやるかどうか」の差は小さい、と読むのが妥当である。

KINNIKU TIMESの視点

ジムで活かすなら、「毎セット完全に潰れる」より「限界の1〜3回手前まで真剣に行う」ことを基本にするのが現実的である。失敗まで行うと疲労が大きく、次のセットの回数が落ちたり、フォームが崩れてけがのリスクが高まったりしやすい。特にスクワットやベンチプレスなど高重量の多関節種目では、余力を残して質の高いセットを積み重ねるほうが得策だろう。

一方で、マシン種目や単関節種目の最終セットなど、安全に限界まで行える場面では、たまに追い込んで「自分の本当の限界」を把握しておくのも有益である。余力の見積もりは経験が浅いほど甘くなりがちだからだ。大切なのは、限界からの距離を意識して、毎回きちんと強度の高いセットを行うことである。


出典:Refalo MC, Helms ER, Trexler ET, Hamilton DL, Fyfe JJ. Influence of Resistance Training Proximity-to-Failure on Skeletal Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Medicine(2023)Robinson ZP ほか. Exploring the Dose-Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions. Sports Medicine(2024)