スクワットのやり方と正しいフォーム ひざの位置・深さ・回数を研究で解説
スクワットは股関節とひざを同時に曲げ、背中をまっすぐ保ってしゃがむのが基本。ひざはつま先より前に出てもよいのか、どこまでしゃがむか、自重からバーベルへの進め方と回数を研究で整理した。
スクワットの正しいフォームは、足を肩幅ほどに開いてつま先をやや外に向け、背中をまっすぐ保ったまま股関節とひざを同時に曲げ、太ももが床と平行になる深さまでしゃがんで立ち上がる動きである。ひざはつま先と同じ方向に曲げ、つま先より少し前に出ても問題ない。初心者は自重で10〜15回×2〜3セットから始め、フォームが安定したらダンベル、バーベルへと負荷を上げていく。
スクワットで鍛えられる筋肉は?
スクワット(Squat)で主に働くのは、太ももの前の大腿四頭筋、お尻の大殿筋、太ももの内側の内転筋群である。背中の脊柱起立筋や腹筋群も、体幹をまっすぐ保つために働く。立つ・座る・階段を上るといった日常動作に近いため、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、腕立て伏せと並んで自重で行える筋力トレーニングの例として挙げられている。
Schoenfeldの2010年のレビュー(Journal of Strength and Conditioning Research)は、スクワットの足首・ひざ・股関節・背骨の動きと力のかかり方を整理し、動作が複雑で変数が多いからこそ、正しいフォームの理解が筋肉の発達とケガの予防の両方に重要だとしている。
スクワットの正しいやり方は?
正しいやり方は、構え・しゃがむ・立ち上がるを次の手順で行うことである。まずは何も持たない自重スクワットで覚える。
- 足を置く:足は肩幅かやや広めに開き、つま先を15〜30度ほど外へ向ける。足幅による効き方の違いはスタンス幅の研究で解説している。
- 体幹を固める:胸を軽く張り、大きく息を吸っておなかに力を入れる。目線は2〜3m先の床か正面。
- お尻とひざを同時に曲げる:いすに腰かけるように、お尻を少し後ろへ引きながらひざを曲げる。お尻だけ、ひざだけが先に動かないようにする。
- ひざをつま先の方向へ:ひざは内側に入れず、つま先と同じ方向へ曲げる。つま先より少し前に出るのは自然な動きである。
- 太ももが床と平行になるまで:かかとが浮かず、背中が丸まらない範囲で、太ももが床と平行かそれより少し下までしゃがむ。
- 足裏全体で床を押して立つ:かかとと親指の付け根とその小指側の3点で床を押し、お尻と肩が同じ速さで上がるように立ち上がる。
- 立ち上がったら息を吐く:ひざを伸ばしきって一度姿勢を整え、息を吐いて次の回へ移る。
バーベルを使う場合は、バーを首の付け根ではなく肩の後ろの筋肉(僧帽筋の上部)に乗せ、手は肩幅より広く握ってバーを背中に固定する。
ひざはつま先より前に出てもいい?
ひざがつま先より少し前に出るのは問題ない。むしろ無理に止めると、負担が股関節や腰に移る。Fryらの2003年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、筋トレ経験のある男性7人、体重と同じ重さのバーベル)では、木の板でひざが前に出ないように制限したスクワットと、制限しないスクワットを比べた。制限するとひざにかかるトルク(回転させる力)は150.1N·mから117.3N·mに減ったが、股関節のトルクは28.2N·mから302.7N·mへ大きく増え、上半身の前傾も強くなった。著者らは、ひざの前方移動を制限すると力が股関節や腰に不適切に移る可能性があり、ひざがつま先を少し越える動きが適切な負荷の分散に必要だろうとしている。
どこまでしゃがむのが正しい?
背中が丸まらずかかとが浮かない範囲で、太ももが床と平行かそれより深くしゃがむのが基本である。深いスクワットはひざに悪いと言われることがあるが、Hartmannらの2013年のレビュー(Sports Medicine、164本超の論文を検討)は、ひざのお皿の裏にかかる圧迫力は90度前後で最も高く、それより深く曲げると太ももとふくらはぎが接して力が分散し、圧迫の負担はむしろ下がると整理した。そのうえで、正しい技術を指導のもとで身につけ、負荷を段階的に上げる条件では、深いスクワットがケガのリスクを高めるという懸念には根拠がないとまとめている。逆に、浅いスクワットで非常に重い重量を扱い続けると、長期的にひざや背骨の関節に負担が蓄積しうるとも指摘している。深さによる筋肥大の違いはフルスクワットとハーフスクワットの比較研究で詳しく紹介している。
よくある間違いとチェックポイントは?
多い間違いは、ひざが内側に入る、かかとが浮く、背中が丸まる、の3つである。横からと正面からスマートフォンで撮影すると確認しやすい。
- ひざが内側に入る:立ち上がるときにひざが寄ると、ひざの内側に負担がかかる。ひざをつま先の方向へ押し出す意識を持つ。
- かかとが浮く:重心がつま先に乗りすぎている。足裏全体で床を押し、しゃがむ深さを一時的に浅くする。
- しゃがみきったところで背中が丸まる:骨盤が後ろに傾く範囲まで深くしゃがむと腰に負担がかかる。丸まる手前を自分の深さとする。
- お尻だけ先に上がる:上半身が前に倒れて腰で持ち上げる形になる。お尻と肩を同じ速さで上げる。
- 反動で切り返す:一番下で弾むと関節に衝撃がかかる。下で一瞬止まるつもりでコントロールする。
- 息を止め続ける:重い重量では一時的に止めることもあるが、1回ごとに呼吸を整える。高血圧などの持病がある人は息を止めずに行う。
何回・何セットが目安?
初心者は自重で10〜15回×2〜3セットを週2〜3回が目安である。15回を楽にこなせるようになったら、ダンベルを胸の前で持つゴブレットスクワット、バーベルスクワットへと進む。ACSMの2026年の指針(137本のシステマティックレビューの総括)は、筋力の向上には1RMの80%以上の負荷、全可動域、2〜3セット、セッションの最初に行うこと、週2回以上が有効だったとしている。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2〜3回) | 自重スクワット | 10〜15回 | 2〜3 | 60〜90秒 |
| 初心者(週2〜3回) | ゴブレットスクワット | 8〜12回 | 2〜3 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | バーベルスクワット(重い日) | 3〜6回(1RMの80〜90%) | 3〜5 | 3分 |
| 中級者(週2回) | バーベルスクワット(軽い日) | 8〜12回 | 3 | 2分 |
| 中級者(週2回) | ブルガリアンスクワットなど片脚種目 | 各脚8〜12回 | 2〜3 | 90秒 |
バーベルの重量は、全セットで予定回数をこなせたら次回2.5〜5kg足すのが基本である。お尻をより重点的に鍛えたい場合はヒップスラストとスクワットの比較研究も参考になる。同じ下半身の種目であるデッドリフトのやり方と同じ日に行う場合は、スクワットを先にして疲労を分けるとよい。
安全に行うための注意点は?
バーベルスクワットでは、セーフティバーをしゃがんだときのバーの高さより少し低い位置に設定するのが第一の対策である。挙がらなくなったらバーをセーフティバーに置いて抜け出せる。
- 本番の重量の前に、自重→バーだけ→軽め→中程度と段階的に体を温める。方法はウォームアップの解説を参照。
- トレーニングベルトは重い重量で腹圧を高める補助になるが、初心者が最初から使う必要はない。判断の目安はベルトの必要性の記事で解説している。
- ひざや腰に鋭い痛みが出たら中止する。痛みが続く場合や、ひざ・腰の持病がある場合は医師に相談する。
- 運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休む。
よくある質問
スクワットは毎日やってもいい?
自重で軽く行う程度なら毎日でも大きな問題は起きにくいが、筋力を伸ばす目的なら週2〜3回で十分である。厚生労働省は筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しており、休息日をとることも重要としている。
ひざがつま先より前に出るのはダメ?
少し前に出るのは自然な動きで問題ない。Fryらの2003年の研究では、ひざの前方移動を制限すると股関節のトルクが約10倍に増え、上半身の前傾も強くなった。ひざはつま先と同じ方向へ曲げることを優先する。
深くしゃがむとひざに悪い?
正しい技術と段階的な負荷の上げ方を守れば、深いスクワットがひざのケガを増やすという根拠は乏しい。Hartmannらの2013年のレビューは、ひざのお皿の裏の圧迫は90度前後で最も高く、それより深いと分散するとしている。
スクワットでかかとが浮いてしまうのはなぜ?
重心が前に寄っている、足首が硬い、しゃがむ深さが今の柔軟性を超えている、などが原因になりやすい。足幅を少し広げてつま先を外に向ける、深さを一時的に浅くする、といった調整から試す。
自重スクワットだけでも筋肉はつく?
運動経験が少ない人なら自重でも筋力は伸びやすい。ただし楽に20回以上できるようになると刺激が不足しやすいため、ゆっくり下ろす、片脚で行う、ダンベルを持つなどで負荷を上げていく。
KINNIKU TIMESの視点
スクワットで大切なのは、重量よりも先に「股関節とひざを同時に曲げ、ひざをつま先の方向へ、背中をまっすぐ」という形を自重で固めることである。ひざが少し前に出ることを怖がる必要はなく、無理に止めるとかえって腰に負担が移る。深さは背中が丸まらない範囲で太ももが平行まで。この形で週2〜3回、自重からゴブレット、バーベルへと段階を踏めば、下半身全体を無理なく鍛えていける。
出典:Currier BS, et al. ACSM Position Stand: Resistance Training Prescription(Med Sci Sports Exerc, 2026)/Fry AC, et al. Effect of knee position on hip and knee torques during the barbell squat(J Strength Cond Res, 2003)/Hartmann H, et al. Analysis of the load on the knee joint and vertebral column with changes in squatting depth(Sports Med, 2013)/Schoenfeld BJ. Squatting kinematics and kinetics and their application to exercise performance(J Strength Cond Res, 2010)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて
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