ブルガリアンスクワットのやり方 足幅・台の高さ・回数の目安を研究で解説
ブルガリアンスクワットの正しい手順、前足の位置と台の高さ、お尻と太もものどちらに効かせるか、回数・セット数の目安、よくある間違いを、バイオメカニクス研究と筋電図研究をもとに整理しました。
ブルガリアンスクワットは、後ろ足の甲を膝ほどの高さの台に乗せ、前足に体重の大部分を乗せたまま、後ろの膝を床に近づけるように真下へしゃがむ片脚の種目である。研究では股関節(お尻)を主に使う種目と分析されており、両脚のバックスクワットと同程度に筋力が伸びたという報告もある。初心者は自重で片脚8〜12回を2〜3セットから始めるのが目安だ。
ブルガリアンスクワットで鍛えられる筋肉は?
主に鍛えられるのは、お尻の大臀筋(だいでんきん)と、太ももの前の大腿四頭筋、後ろのハムストリングスである。片脚で体を支えるため、お尻の横の中臀筋や体幹も働く。ブルガリアンスクワット(Bulgarian Split Squat)は、後ろ足を台に乗せたスプリットスクワットの一種で、研究では「リアフットエレベーテッド・スプリットスクワット」とも呼ばれる。
マッキーとリーマンの2021年の研究(International Journal of Exercise Science誌)では、トレーニング経験のある男性20人が、バックスクワット(1RMの70%)とブルガリアンスクワット(バックスクワット1RMの35%)を行い、関節ごとの負担を比べた。どちらも股関節の負担が膝や足首より大きい「股関節主体」の種目で、ブルガリアンスクワットは膝の曲がりがバックスクワットより小さかった。著者らは、膝への負担を抑えつつ股関節を伸ばす力を鍛えたい場面に向くとまとめている。
マウゼフントらの2019年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、11人が6〜8回で限界になる重さで片脚種目を比べ、大臀筋と外側広筋の最大の活動は種目間で差がなかった。一方、ブルガリアンスクワットは通常のスプリットスクワットよりハムストリングス(大腿二頭筋)の活動が高かった(最大随意収縮の76.1%対62.3%)。
ブルガリアンスクワットの正しいやり方は?
台からの距離を決め、上体をやや前に傾けたまま、前足のかかと寄りで床を押して立ち上がるのが正しいやり方である。
- 台を用意する:ベンチや台は自分の膝の高さ前後(40〜50cmほど)を目安にする。高すぎると後ろ脚の付け根が伸ばされすぎる。
- 足の位置を決める:台に背を向けて立ち、片足を大きく一歩前に出し、後ろ足の甲(または、つま先)を台に乗せる。しゃがんだときに前足の膝が足首の真上か、やや前に来る距離が基準だ。
- 体重を前足に乗せる:体重の大部分を前足に置き、後ろ足はバランスを取る程度にする。前足は足裏全体で床をとらえる。
- 真下へしゃがむ:息を吸い、後ろの膝を床に近づけるように真下へ下ろす。前の太ももが床と平行になるあたりまでが目安だ。
- 立ち上がる:前足のかかと寄りで床を押し、息を吐きながら元の位置に戻る。前の膝はつま先と同じ向きに保つ。
- 左右を入れ替える:弱い側から始め、反対側も同じ回数を行う。
お尻と太もも、どちらに効かせる?
上体を少し前に傾け、前足を遠めに置くとお尻寄りに、上体を立てて前足を近めに置くと太ももの前寄りに効きやすいとされる。
これは股関節と膝のどちらが大きく曲がるかで負担の配分が変わるためだ。上体を前に倒すほど股関節が深く曲がり、お尻やハムストリングスが伸ばされた状態で力を出すことになる。マッカーディらの2021年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、トレーニング経験のある女性20人が1RMの80%で行ったところ、ブルガリアンスクワットは動作の下の位置でヒップスラストより大臀筋やハムストリングスの活動が高く、全体を通した外側広筋の活動はヒップスラストより高かった(59.4%対43.6%)。しゃがんだ深い位置が、この種目の要になる。
上体の角度は極端にする必要はない。前傾は背中を丸めずに保てる範囲にとどめ、目的に応じて少しずつ調整すればよい。スクワットの深さとお尻の筋肉の関係はフルとハーフのスクワットを比べた東大の研究も参考になる。
両脚のスクワットとどちらがいい?
筋力や筋肥大の伸びは両脚種目と大きく変わらないとされ、目的や体の状態で選んでよい。
スピアーズらの2016年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、ラグビーのアカデミー選手18人が、ブルガリアンスクワットだけを行う群とバックスクワットだけを行う群に分かれ、週2回・5週間トレーニングした。両群ともバックスクワットとブルガリアンスクワットの1RM、40m走、方向転換の速さが向上し、群の間に差はなかった。
片脚種目は扱う重さが両脚より軽く、背骨に乗る重さを減らしやすい点も特徴だ。片脚と両脚の比較は24研究のメタ分析で、片脚だけ鍛えたときに反対の脚も強くなる現象はクロスエデュケーションの解説で詳しく紹介している。
回数・セット数・重さの目安は?
初心者は自重で片脚8〜12回を2〜3セット、慣れたらダンベルを持って6〜12回を3セットが目安になる。
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解(Currierら、137本の系統的レビューのまとめ)は、筋肥大には週10セット以上の量が有利、筋力向上には重めの負荷、全可動域、週2回以上が有利と整理している。ブルガリアンスクワットは片脚ずつなので、左右それぞれを1セットと数え、ほかの脚の種目と合わせて週の量を考えるとよい。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | ブルガリアンスクワット(自重) | 片脚8〜12回 | 2〜3 | 左右交互で60〜90秒 |
| 初心者(週2回) | ヒップスラスト(自重または軽いバーベル) | 12〜15回 | 2 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | ブルガリアンスクワット(ダンベル) | 片脚6〜10回(余力1〜2回) | 3〜4 | 2分 |
| 中級者(週2回) | レッグプレス | 8〜12回 | 3 | 2〜3分 |
重さは、決めた回数を左右とも余力1〜2回で全セットこなせたら、ダンベルを片手1〜2kgずつ重くするのが目安だ。
ダンベルやバーベルはどう持つ?
最初は両手にダンベルを持って腕を体の横に下ろす持ち方が、バランスを取りやすく扱いやすい。
慣れてきたら、胸の前で1つのダンベルを縦に抱える持ち方(ゴブレット)や、バーベルを肩に担ぐ持ち方もある。胸の前で抱えると上体が立ちやすく太ももの前寄りに、体の横で持つと上体をやや前に傾けやすくお尻寄りになりやすい。バーベルは重さを増やしやすい反面、ふらついたときに手を離しにくいので、片脚でのバランスが安定してから選ぶとよい。どの持ち方でも、重さより先に左右同じフォームで反復できることを優先したい。
よくある間違いとチェックポイントは?
多いのは「前足が台に近すぎる」「後ろ足で踏ん張る」「前の膝が内側に入る」の3つである。
- 前足が台に近すぎる:かかとが浮き、膝が大きく前に出る。しゃがんだ位置で前足のかかとが床についているか確かめる。
- 後ろ足で踏ん張る:後ろ足の甲で台を押すと、前脚の負荷が抜ける。後ろ足は添えるだけと考える。
- 膝が内側に入る:前の膝がつま先より内側に倒れていないか、鏡で確かめる。
- 骨盤が傾く・ねじれる:前足と後ろ足を一直線に並べるとふらつきやすい。左右の幅をこぶし1〜2個分あける。
- 浅くしゃがむ:深い位置で筋肉が強く働くため、前の太ももが床と平行になるあたりまで下ろす。
- 反動で立ち上がる:下でバウンドさせず、1〜2秒かけてしゃがみ、床を押して立つ。
安全に行うための注意点は?
バランスを崩しやすい種目なので、最初は自重で、必要なら壁や柱に手を添えて行うのが基本である。
ダンベルを持つ場合は、足を台から外すときと戻すときにふらつきやすいため、周りに十分な空間を確保する。膝や股関節、腰に痛みがある人や、けがや手術の経験がある人は、事前に医師に相談してほしい。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたらすぐに中止する。強い息こらえは血圧を大きく上げるため、高重量ではバルサルバ法の解説も確認しておきたい。
よくある質問
台の高さはどれくらいがいいですか?
自分の膝の高さ前後(40〜50cmほど)が目安です。高すぎると後ろ脚の付け根が引っ張られ、腰が反りやすくなります。慣れないうちは低めの台から始めても構いません。
膝が痛くなるのですが、どうすればいいですか?
前足が台に近すぎて膝が大きく前に出ていないか、膝が内側に入っていないかを確かめてください。フォームを直しても痛む場合は中止し、医師に相談しましょう。
お尻に効かせるにはどうすればいいですか?
前足をやや遠めに置き、背中を丸めずに上体を少し前に傾けると、股関節が深く曲がりお尻が使われやすくなるとされます。深い位置までしゃがむことも大切です。
バックスクワットの代わりになりますか?
ラグビー選手18人の5週間の研究では、ブルガリアンスクワットだけの群とバックスクワットだけの群で筋力や走力の伸びに差がありませんでした。背骨に乗る重さを減らしたい人には選択肢になります。
左右で回数が違ってもいいですか?
基本は左右同じ回数にそろえます。弱い側から始め、その回数に強い側を合わせると、左右差が広がりにくくなります。
KINNIKU TIMESの視点
ブルガリアンスクワットは、軽い負荷でも脚とお尻に強い刺激を入れやすく、両脚のスクワットと並べても筋力の伸びに大差がないと報告されている種目である。成果を左右するのは前足の位置、前足に乗せる体重、深い位置までしゃがむ可動域の3点だ。まずは自重で左右8〜12回を安定してこなせる形を作り、ダンベルは後から足していけばよい。お尻をさらに鍛えたいなら、ヒップスラストのやり方と組み合わせると、伸びた位置と縮んだ位置の両方で負荷をかけられる。
出典:Mackey ER, Riemann BL. Int J Exerc Sci. 2021;14(1):533-543/Mausehund L, et al. J Strength Cond Res. 2019;33 Suppl 1:S85-S94/McCurdy K, et al. J Strength Cond Res. 2021;35(5):1201-1207/Speirs DE, et al. J Strength Cond Res. 2016;30(2):386-92/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872
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