ヒップスラストのやり方 正しい手順・重量の決め方・よくある間違いを解説
ヒップスラストの正しい手順、ベンチと足の位置、重量と回数の決め方、腰が反る・太ももに効くといったよくある間違いの直し方を、筋電図研究とトレーニング研究、ACSMの指針をもとに整理しました。
ヒップスラストは、肩甲骨の下あたりをベンチに預け、足裏で床を押して骨盤を持ち上げ、上で膝・腰・肩が一直線になったところでお尻を締める種目である。筋電図研究では、最も高い位置で大臀筋が強く働くことが示されている。重さは腰を反らさずに上で1秒止められる重さを選び、10〜15回を2〜3セットから始めるのが目安だ。
ヒップスラストで鍛えられる筋肉は?
主に鍛えられるのはお尻の大臀筋で、太ももの裏のハムストリングスと、太ももの前の大腿四頭筋も補助として働く。ヒップスラスト(Hip Thrust)は、床に座った状態でベンチに背中を預け、股関節を伸ばす動きでバーベルを持ち上げる種目だ。
コントレラスらの2015年の研究(Journal of Applied Biomechanics誌)では、トレーニング経験のある女性13人が10回で限界になる重さのバックスクワットとヒップスラストを比べた。ヒップスラストは大臀筋上部の平均活動が69.5%(スクワットは29.4%)、下部が86.8%(同45.4%)、太ももの裏の大腿二頭筋が40.8%(同14.9%)と高く、太ももの前の外側広筋には差がなかった。
ただし、筋活動が高いことがそのまま筋肉の増え方の差になるとは限らない。ヒップスラストとスクワットを9週間比べた試験では、お尻の筋肥大は同程度だった。研究の詳細はヒップスラストとスクワットの9週試験の解説にまとめている。本記事では、その結果を実際のトレーニングでどう生かすか、手順と重さの決め方に絞って解説する。
ヒップスラストの正しいやり方は?
ベンチの高さと足の位置を決め、あごを引いたまま骨盤を持ち上げ、上でお尻を締めて1秒止めるのが正しいやり方である。
- ベンチに背中を預ける:床に座り、膝の高さ前後(40cm前後)のベンチの縁に肩甲骨の下あたりを当てる。ベンチは動かないよう壁際などに固定する。
- バーを置く:バーベルを脚の上で転がし、骨盤の出っ張り(腰骨)の少し下に置く。痛みを防ぐため、バーにパッドを巻くか、厚手のタオルをはさむ。
- 足の位置を決める:足は腰幅程度に開き、つま先はやや外向き。持ち上げたときにすねが床とほぼ垂直になる位置が基準だ。
- あごを引く:目線は正面からやや下に向け、あごを軽く引く。上体とあごの向きを最後まで変えない。
- 骨盤を持ち上げる:息を吸ってお腹に力を入れ、かかと寄りで床を押して骨盤を持ち上げる。
- 上で1秒止める:膝・腰・肩が一直線になったところで、お尻を締めて1秒止める。腰を反らせて高さを稼がない。
- ゆっくり下ろす:2秒ほどかけて、お尻が床につく手前まで下ろす。息を吐きながら次の回へ入る。
重量はどうやって決める?
「上で1秒止められて、腰が反らない重さ」を基準に、決めた回数の余力が1〜3回残る重さを選ぶのがよい。
ヒップスラストはお尻が強く働く一番上の位置が要になるため、重すぎて上まで上がらない、上で止まらない重さでは狙いが外れやすい。最初はバーだけ、または自重のグルートブリッジ(床に寝て行う版)で形を覚え、1セット12〜15回を上で止めながら行えたら、2.5〜10kgずつ重くしていく。扱う重さの伸びは大きい種目なので、焦らずに回数とフォームを守ったまま上げていくのが現実的だ。
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解(Currierら、137本の系統的レビューのまとめ)は、筋肥大には週10セット以上の量が有利、筋力向上には1RMの80%以上の重さと週2回以上が有利としている。お尻を目的とするなら、ヒップスラストを中心に、スクワット系やブルガリアンスクワットと合わせて週10セット前後を目安にするとよい。余力の見積もり方はRPEとRIRの解説を参考にしてほしい。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | グルートブリッジ(床・自重) | 15回(上で1秒止める) | 2 | 60秒 |
| 初心者(週2回) | ヒップスラスト(バーのみ〜軽め) | 12〜15回 | 2〜3 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | ヒップスラスト(バーベル) | 8〜12回(余力1〜2回) | 3〜4 | 2〜3分 |
| 中級者(週2回) | ブルガリアンスクワット | 片脚8〜10回 | 3 | 2分 |
バーベルがないときはどうする?
自宅やバーベルのない環境では、床で行うグルートブリッジ、片脚のヒップスラスト、ダンベルを腰に乗せる方法で代用できる。
片脚で行うと、同じ重さでも片側にかかる負荷がほぼ倍になり、自重でも十分にきつくなる。ベンチの代わりにソファや安定した椅子の座面を使う場合は、滑らないか、倒れないかを先に確かめる。ジムによっては専用のヒップスラストマシンがあり、バーの準備が不要でセット間の移動も少ない。どの方法でも、上で1秒止める、腰を反らせないという基本は変わらない。
スクワットの代わりになる?
お尻の筋肥大だけを見れば同程度という試験がある一方、太ももの前や全体の発達ではスクワットが上回った報告もあり、置き換えるより組み合わせるのが無難である。
プロトキンらの2023年の試験(Frontiers in Physiology誌)では、トレーニング未経験の大学生34人が9週間、ヒップスラストかバックスクワットのどちらかを行い、お尻の筋肥大は同程度、太ももの前の大腿四頭筋はスクワットのほうが増えた。一方、バルバロらの2020年の試験(International Journal of Sports Medicine誌)では、トレーニング経験のある女性22人が12週間行い、大臀筋の筋厚の増加はスクワット群が9.4%、ヒップスラスト群が3.7%で、スクワットのほうが大きかった。
マッカーディらの2021年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)は、ヒップスラストは動作の上の位置、ブルガリアンスクワットは下の位置で大臀筋やハムストリングスの活動が高いことを示し、両方を取り入れることを勧めている。お尻が縮んだ位置で強いヒップスラストと、伸びた位置で強いスクワット系を組み合わせると、可動域全体で負荷をかけられる。スクワットの深さについてはフルとハーフを比べた研究も参考になる。
よくある間違いとチェックポイントは?
多いのは「腰を反らせて上げる」「太ももの前や裏ばかりに効く」「首や頭が動く」の3つである。
- 腰を反らせて上げる:上で肋骨が開き、腰が反っていると、お尻ではなく腰で高さを出している。あごを引き、お腹に力を入れたまま骨盤を後ろに傾けるように締める。
- 太ももの前に効く:足がお尻に近すぎると膝が大きく曲がり、太ももの前が働きやすい。足を少し前に出す。
- 太ももの裏がつる:足が遠すぎるとハムストリングスの負担が増える。すねが垂直になる位置に戻す。
- 上で止まらない:一番上でお尻を締めずに下ろすと、最も効く位置を使えない。1秒止められない重さは下げる。
- ベンチが動く・高すぎる:ベンチがずれると危険で、高すぎると肩が上がりにくい。膝の高さ前後の固定されたベンチを使う。
- バーが当たって痛い:パッドやタオルを使い、腰骨の少し下に置く。痛みで動作が乱れるなら重さを見直す。
安全に行うための注意点は?
腰に痛みが出る場合は、腰を反らせていないかを確かめ、それでも痛むなら中止することが基本である。
重いバーベルを使う日は、ウォームアップとして自重や軽い重さで2セットほど行う。腰や股関節に痛みやけがの経験がある人、妊娠中の人は、事前に医師に相談してほしい。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたらすぐに中止する。重い重さで強く息をこらえると血圧が大きく上がるため、バルサルバ法の解説も確認しておきたい。
よくある質問
ヒップスラストとグルートブリッジの違いは何ですか?
グルートブリッジは床に背中をつけて行い、ヒップスラストはベンチに背中を預けて行います。ヒップスラストのほうが股関節を大きく動かせ、重さも増やしやすいため、ブリッジで形を覚えてから移るのが一般的です。
何kgから始めればいいですか?
決まった重さはありません。上で1秒止められ、腰が反らずに12〜15回できる重さから始めましょう。バーだけ、または自重から始めても構いません。
腰が痛くなるのはなぜですか?
上の位置で腰を反らせて高さを出していることが多い原因です。あごを引き、お腹に力を入れ、膝・腰・肩が一直線になったところで止めてください。直しても痛む場合は中止し、医師に相談しましょう。
スクワットはやらなくてもいいですか?
お尻の筋肥大は同程度という試験がある一方、太ももの前の発達ではスクワットが上回りました。ヒップスラストは上の位置、スクワット系は下の位置で強く働くため、組み合わせるのが無難です。
週に何回やればいいですか?
週2回を基本に、お尻の種目を合わせて週10セット前後が目安です。ACSMの2026年の指針でも、筋力向上には週2回以上、筋肥大には週10セット以上が有利とされています。
KINNIKU TIMESの視点
ヒップスラストは、お尻を縮めた位置で強い負荷をかけられる数少ない種目であり、その強みを生かすには「上で1秒止める」「腰を反らせない」の2点を守ることが何より大切である。重さは伸びやすい種目だが、上で止まらない重さを扱っても狙いから外れる。研究では、お尻の筋肥大はスクワットと同程度という結果と、スクワットが上回る結果の両方がある。置き換えより組み合わせとして、ブルガリアンスクワットやレッグプレスと並べて週の量を組み立てたい。
出典:Contreras B, et al. J Appl Biomech. 2015;31(6):452-8/Plotkin DL, et al. Front Physiol. 2023;14:1279170/Barbalho M, et al. Int J Sports Med. 2020;41(5):306-310/McCurdy K, et al. J Strength Cond Res. 2021;35(5):1201-1207/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872
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