ヒップアブダクションのやり方 中臀筋に効かせるフォームと回数の目安を研究で解説
ヒップアブダクションマシンと自宅でできる横向きの脚上げのやり方を解説。中臀筋の筋活動やMRIでの筋肉の増え方を調べた研究をもとに、よくある間違い、回数・セット数の目安、メニュー例をまとめた。
ヒップアブダクションは、脚を体の外側へ開く「股関節の外転」で、お尻の横にある中臀筋と、お尻の上部を鍛える種目である。ジムではシートに座って脚を外へ押し開くヒップアブダクションマシン、自宅では横向きに寝て脚を上げるサイドライイング・ヒップアブダクションで行える。初心者は反動を使わずに15〜20回できる重さで2〜3セットを、スクワットやヒップスラストなどのあとに加えるのが目安である。
ヒップアブダクションで鍛えられる筋肉は?
ヒップアブダクション(Hip Abduction)で主に働くのは中臀筋で、その奥にある小臀筋、大臀筋の上部、太ももの外側の付け根にある大腿筋膜張筋も働く。中臀筋は、片脚で立ったときに骨盤が横に傾かないよう支える筋肉で、歩く、走る、階段を上るといった片脚になる場面で働く。
中臀筋がどの種目でよく働くかは研究で比べられている。Distefanoらの2009年の研究(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy、運動習慣のある健康な21人、12種目)では、中臀筋の筋活動は横向きに寝て脚を上げるサイドライイング・ヒップアブダクションが最大筋力の81%と最も高く、クラムシェル(38〜40%)、ランジ(48%)を上回った。片脚スクワット(64%)や片脚デッドリフト(59%)も中臀筋をよく使っていた。
また、Selkowitzらの2013年の研究(同誌、健康な20人、筋肉に細い電極を刺して測定)は、大腿筋膜張筋を使いすぎずにお尻の筋肉を働かせる種目を調べた。お尻の筋肉と大腿筋膜張筋の活動の比は、クラムシェル、横歩き(サイドステップ)、片脚ブリッジ、四つばいの脚上げで高かった。脚を開く動きでも、つま先の向きや骨盤の傾きで働く筋肉の割合が変わることを示している。お尻全体の鍛え方はお尻の筋トレメニューで解説している。
ヒップアブダクションで中臀筋は大きくなる?
脚を開く種目を続けると、中臀筋・小臀筋と大臀筋の上部が大きくなることが、MRIを使った研究で示されている。Attariehらの2026年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、若年成人17人、10週間・週2回・週約10セット・8〜12回)は、片脚をケーブルで後ろへ引く種目、反対の脚をケーブルで横へ開く種目でそれぞれ鍛えて比べた。大臀筋全体の増え方は後ろへ引く種目が9%、横へ開く種目が5%だった。一方で中臀筋と小臀筋の増え方は、後ろへ引く種目では2%にとどまり、横へ開く種目では4%だった。横へ開く種目では大臀筋も上部を中心に大きくなった。
この結果から、お尻全体を大きくする主役はヒップスラストなどの股関節を伸ばす種目で、ヒップアブダクションはお尻の横と上部を補う種目と位置づけられる。股関節を伸ばす種目の比較はヒップスラストとスクワットの研究で紹介している。
ヒップアブダクションマシンの正しいやり方は?
正しいやり方は、下の7つの手順で「骨盤をシートに固定したまま、お尻の横の力で脚を開く」ことである。
- 可動域を設定する:脚を閉じたスタート位置で、太ももの外側がパッドに軽く当たるように開始角度のレバーを合わせる。最初は脚をそろえた状態から始める。
- 重量を軽めに選ぶ:15〜20回反動なしでできる重さから始める。
- 深く座る:お尻をシートの奥まで入れ、背もたれに背中をつける。足はステップに乗せ、ひざの外側をパッドに当てる。
- グリップを握る:左右のグリップを軽く握り、上体を固定する。お腹に軽く力を入れる。
- 脚を外へ押し開く:息を吐きながら1〜2秒かけて、ひざの外側でパッドを押すように脚を開く。お尻の横が縮む感覚を確かめる。
- 開いたところで1秒止める:可動域の終わりで一瞬止め、反動で開いていないかを確かめる。
- 2〜3秒かけて戻す:おもりが下まで落ちてガシャンと鳴らない範囲で、ゆっくり閉じる。閉じ切る直前で次の回数に入る。
上体を前に倒して行うとお尻の上部に効きやすいと言われることもあるが、マシンでの上体の角度を比べた査読付きの研究は少なく、はっきりしたことは分かっていない。まずは背もたれにつけた基本の形で覚え、慣れてから角度を変えて感覚を確かめるとよい。
自宅でできるやり方は?
自宅では、横向きに寝て脚を上げるサイドライイング・ヒップアブダクションがよい。前述のDistefanoらの研究で中臀筋の筋活動が最も高かった種目である。
- 横向きに寝て、下の脚のひざを軽く曲げ、上の脚はまっすぐ伸ばす。
- 骨盤を床と垂直に立て、上側の腰が後ろへ倒れないようにする。
- つま先を正面か、やや下に向けたまま、かかとから天井へ押し上げるように脚を上げる。
- 脚が床から30〜40度ほど上がったところで1秒止め、2〜3秒かけて下ろす。
15〜20回が楽になったら、ひざの上にゴムバンドを巻く、足首に軽いおもりを付けるなどで負荷を上げる。
よくある間違いとチェックポイントは?
多い間違いは、重すぎて反動で脚を開く、上体や骨盤が動いてしまう、の2つである。
- 反動で開く:勢いよく開いて戻すと、お尻の横に負荷がかかる時間が短くなる。開くのに1〜2秒、戻すのに2〜3秒かける。
- お尻がシートから浮く:骨盤が動くと、お尻の横ではなく腰や太ももで押してしまう。深く座り、グリップで上体を固定する。
- 可動域が狭い:重すぎると数cmしか開かない。開き切れる重さに下げる。
- 寝て行うときに腰が後ろへ倒れる:骨盤が後ろへ倒れると、つま先が天井を向き、太ももの前側で上げてしまう。骨盤を立て、つま先を正面に保つ。
- 脚を高く上げすぎる:寝て行う種目で脚を高く上げると、腰の横で引き上げる動きになる。30〜40度で十分である。
何回・何セットが目安?メニュー例は?
ヒップアブダクションは、反動なしで12〜20回できる重さで2〜3セットが目安である。重い重量で少ない回数を行うより、可動域いっぱいを丁寧に動かすほうが向いている。セットの最後で「あと2〜3回できる」程度に止める考え方はRPE・RIRの解説が参考になる。米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の指針は、筋肥大には部位ごとに週10セット以上が有効とまとめた。お尻の週10セットは、ヒップスラストやスクワットと合わせて数えればよい。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | ヒップスラスト | 10〜12回 | 2〜3 | 2分 |
| 初心者(週2回) | ヒップアブダクションマシン | 15〜20回 | 2 | 60〜90秒 |
| 初心者(自宅) | サイドライイング・ヒップアブダクション | 各脚15〜20回 | 2 | 60秒 |
| 中級者(週2回) | ブルガリアンスクワット | 各脚8〜12回 | 3 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | ヒップスラスト | 8〜12回 | 3 | 2分 |
| 中級者(週2回) | ヒップアブダクションマシン | 12〜15回 | 3 | 90秒 |
メインの種目はヒップスラストのやり方とブルガリアンスクワットのやり方で解説している。スミスマシンを使ったヒップスラストはスミスマシンの使い方を参照。
安全に行うための注意点は?
- 股関節の外側や腰、ひざに鋭い痛みが出たら、その日は中止する。股関節の手術歴や持病、痛みが続く場合は医師に相談する。
- 運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休む。
- マシンの開始角度を大きく開きすぎると、最初から股関節が強く引き伸ばされる。脚をそろえた位置から始める。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨している。下半身の日にお尻の種目として組み込むと続けやすい。
よくある質問
ヒップアブダクションで太ももは太くなる?
ヒップアブダクションで主に働くのはお尻の横の中臀筋で、太ももの前や裏はあまり使われない。体型の変化は食事や全身の筋量にも左右されるため、この種目だけで太ももが目立って太くなるとは考えにくい。
ヒップアブダクションとヒップスラストはどちらをやるべき?
お尻全体を大きくしたいなら、まずヒップスラストやスクワットなど股関節を伸ばす種目を優先する。ヒップアブダクションはお尻の横と上部を補う種目として、そのあとに加えるとよい。
ヒップアブダクションマシンは何kgで行えばいい?
反動なしで15〜20回できる重さが出発点である。機種によって表示の重さと実際の負荷が違うため、数字ではなく回数と可動域で選ぶ。全セットで予定回数をこなせたら少しずつ増やす。
上体を前に倒すと効き方は変わる?
お尻の上部に効きやすいと言われることはあるが、マシンで上体の角度を比べた査読付きの研究は少なく、はっきりしたことは分かっていない。基本の形で覚えてから試すとよい。
自宅でもヒップアブダクションはできる?
できる。横向きに寝て脚を上げるサイドライイング・ヒップアブダクションは、研究で中臀筋の筋活動が高かった種目である。慣れたらゴムバンドや足首のおもりで負荷を上げる。
KINNIKU TIMESの視点
ヒップアブダクションは、お尻全体を大きくする主役の種目ではないが、股関節を伸ばす種目ではあまり育たない中臀筋とお尻の上部を補える種目である。MRIで調べた研究でも、脚を開く種目でお尻の横と上部が大きくなっていた。メニューの中心はヒップスラストやスクワットに置き、そのあとに反動を使わず15〜20回できる重さで2〜3セット、骨盤を動かさずに丁寧に行うのが現実的な取り入れ方である。ジムに行けない日は、横向きに寝て脚を上げる種目で代わりにできる。
出典:Distefano LJ, et al. Gluteal muscle activation during common therapeutic exercises(J Orthop Sports Phys Ther, 2009)/Selkowitz DM, Beneck GJ, Powers CM. Which exercises target the gluteal muscles while minimizing activation of the tensor fascia lata?(J Orthop Sports Phys Ther, 2013)/Attarieh P, et al. Regional Hypertrophy of the Gluteal Muscles Is Task-Specific: Hip Extension Versus Hip Abduction Training(J Strength Cond Res, 2026)/Currier BS, et al. ACSM Position Stand: Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults(Med Sci Sports Exerc, 2026)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて
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