筋トレの疲労度を数値化する「RPE」「RIR」とは 使い方と目安表
筋トレの「限界までの余裕」を自己申告で数値化する指標が「RPE」と「RIR」であり、経験者では自己申告値と実際の残り反復数の相関がr=-0.88に達することが研究で示されている。
ただし訓練経験の浅い人や高回数セットでは精度が低下するため、専門家の指導のもとで段階的に活用することが推奨される。
筋トレの「限界までの余裕」を自己申告で数値化する指標が「RPE」と「RIR」である。残り反復回数(RIR)を基準にした10段階のRPEスケールでは、経験者の自己申告値と実際の残り反復数の相関がr=-0.88(p<0.001)に達することが、米フロリダアトランティック大学のマイケル・ズルドス(Michael C. Zourdos)氏らの研究で示されている。
RPEとRIRとは何か
RPE(Rating of Perceived Exertion、自覚的運動強度)は、運動のきつさを本人の感覚で申告する指標である。もともとは心拍数と相関する「ボルグスケール」として有酸素運動向けに考案されたが、筋力トレーニング向けには、ズルドス氏らが、セット終了時に「あと何回挙げられたか」という残り反復回数(RIR、Reps In Reserve)を基準にした0〜10の専用スケールを提案し、2016年に『Journal of Strength and Conditioning Research』誌(30巻1号、267〜275ページ)で発表した。
10段階のRPE目安表
| RPE | 感覚の目安 | RIR(残り反復回数) |
|---|---|---|
| 10 | 限界、追加で1回も挙げられない | 0回 |
| 9 | あと1回なら挙げられる | 1回 |
| 8 | あと2〜3回は挙げられる | 2〜3回 |
| 7 | あと4回程度は挙げられる | 4回 |
| 6以下 | まだ余裕がある | 5回以上 |
ズルドス氏らの研究では、この0〜10スケールを用いた自己申告が、訓練歴5.2±3.4年の経験者15人(平均24.0±3.4歳)では強い相関(r=-0.88、p<0.001)、訓練歴0.4±0.6年の初心者14人でも相関(r=-0.77、p=0.001)を示したと報告されている。対象者は1RM測定に加え、60%・75%・90%1RMでの単発挙上と、70%1RMでの8反復セットで検証された。
なぜ使うのか 筋トレでの役立て方
RPE・RIRは、同じ重量でもその日の体調や回復度で「きつさ」が変わることを数値で記録できる点が利点である。プログレッシブオーバーロードを進める際、重量だけを追うのではなく「同じRPEでより重い重量・多い回数を扱えているか」を基準にすれば、調子が悪い日に無理をして追い込みすぎるのを防げる。週あたりのセット数を設計する場面でも、各セットの到達RPEを揃えることで疲労管理と刺激量のバランスを取りやすくなる。
精度の限界 使うときの注意点
一方でRPE・RIRには申告のばらつきという限界もある。2021年に学術誌『PeerJ』に掲載されたラーセン(Larsen)氏らによるシステマティックレビュー(14研究・30の訓練グループ・参加者356人を統合分析、DOI:10.7717/peerj.10663)によると、RIR基準のRPEは挙上速度との間に強い相関を示す一方、訓練経験の浅い人や高回数(ハイレップ)のセットでは精度が低下し、セット中に知覚的な努力度を誤って申告する問題が報告されている。同レビューは、RPE・RIRは「経験を積んだ人が、比較的少ない反復回数のセットで使う場合により適切」と結論づけている。
よくある質問
RPEとRIRはどちらを使えばいいか
同じ尺度の表裏であり、どちらを使ってもよい。RIRは「残り回数」を直接数えるため直感的で、RPEは強度管理のログとして記録しやすいという違いがある。
筋肥大を狙うなら何RPEを目安にすればよいか
一般にRPE7〜9(RIR1〜3)付近まで追い込むレジスタンストレーニングが広く行われているが、適切な強度は種目・目的・経験によって異なる。自己判断で高強度を狙いすぎず、専門家の指導のもとで体調に合わせて調整することが望ましい。
初心者でも使える指標か
ズルドス氏らの研究では初心者でも相関は確認されたが、経験者より精度は低い。フォームや重量感覚に慣れるまでは高いRPEを無理に狙わず、専門家の指導を受けながら徐々に感覚をつかむことが推奨される。
KINNIKU TIMESの視点
RPE・RIRは、重量という「絶対値」だけでは見えない体調の波を可視化できる便利な物差しである。ただし本記事で紹介した研究が示す通り、感覚の申告には誤差がつきものであり、特に筋トレを始めたばかりの時期やハイレップ種目では過信は禁物だ。まずは軽めの重量で「あと何回挙げられるか」を数える練習から始め、フォームが安定してきたら徐々に強度の指標として活用するのが現実的だろう。持病がある場合や過度な追い込みに不安がある場合は、医師や専門のトレーナーに相談した上で取り入れてほしい。
出典:Zourdos MC, et al. "Novel Resistance Training-specific Rating of Perceived Exertion Scale Measuring Repetitions in Reserve." Journal of Strength and Conditioning Research 30(1):267-275, 2016(AUT大学リポジトリ掲載情報)/Larsen C, et al. "Effects of Subjective and Objective Autoregulation Methods for Intensity and Volume on Enhancing Maximal Strength During Resistance-training Interventions: A Systematic Review." PeerJ 9:e10663, 2021
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