筋トレの挙上スピード「テンポ」、0.5〜8秒なら筋肥大に差なしと海外メタ分析
筋力トレーニングの1レップにかける時間「テンポ」は、挙上・下降・静止を合計して0.5秒から8秒の範囲であれば筋肥大の効果に差はないと、海外の系統的レビュー・メタ分析が示している。
一方で1レップに10秒を超える極端なスロートレーニングは、筋肥大の観点ではやや不利とされる。
筋力トレーニングで1回の動作(1レップ)にかける時間、いわゆる「テンポ」は、挙上(求心性)・下降(遠心性)・静止(等尺性)を合計して0.5秒から8秒程度の範囲であれば、筋肥大の効果に統計的な差はないとする系統的レビュー・メタ分析が、米国の運動生理学者ブラッド・シェーンフェルド氏らにより学術誌「Sports Medicine」に発表されている。SNSなどでは「ゆっくり挙げたほうが効く」「スピードを上げたほうが効く」といった主張がしばしば見られるが、この論文はテンポの違いが筋肥大に与える影響を8件の研究データをもとに統合的に検証したものである。
「レップ・デュレーション(反復時間)」とは何か
論文は、レップ・デュレーション(反復時間)を「求心性局面(力を発揮して挙げる動作)・遠心性局面(力を発揮しながら下ろす動作)・等尺性局面(動きを止めた状態)の合計にかかる時間」と定義している。たとえばバーベルスクワットで「2秒かけて下ろし、1秒で挙げる」場合、レップ・デュレーションはおよそ3秒となる。この指標は、トレーニング中にどれだけの時間、筋肉に負荷がかかり続けているかを示す目安として用いられる。
海外メタ分析:0.5秒〜8秒なら筋肥大に差はない
この系統的レビュー・メタ分析は、2015年に学術誌「Sports Medicine」(45巻4号、577〜585ページ)に掲載された。シェーンフェルド氏とオグボーン氏、クリーガー氏の3名が、レジスタンストレーニングにおける反復時間と筋肥大の関係を調べた研究のうち、条件に合う8件の研究データを統合して分析した。論文の結論は「0.5秒から8秒の反復時間の範囲でトレーニングを行った場合、筋肥大の効果は同等である」というものである。その上で論文は「筋肉の成長を主な目標とするのであれば、かなり幅広い反復時間を採用できる」とまとめている。
10秒を超える超スロートレーニングは筋肥大にやや不利
一方で論文は、1レップあたり10秒を超えるような非常に遅いテンポでのトレーニングについては「筋肥大の観点からは劣っている」とも指摘している。極端なスロートレーニングでは、扱える負荷(重量)が大きく下がり、1セットあたりの総仕事量(ボリューム)も小さくなりやすいことが背景にあると考えられる。なお、この分析の対象となった研究の多くは、反復を限界まで行う条件のものであり、負荷の設定や限界まで追い込むかどうかによって結果が左右されうる点には注意が必要だと、この論文を引用する後続の研究でも指摘されている。
実践にどう生かすか
この結果が示すのは、「できるだけゆっくり挙げなければならない」「速く挙げたほうが絶対に有利」といった極端な思い込みを持つ必要はない、ということである。一般的なトレーニングで用いられる1秒から4秒程度のテンポは、この範囲に十分収まる。反対に、1レップに10秒以上かけるような極端なスロートレーニングを筋肥大目的で続ける根拠は、この分析からは見出しにくい。フォームが崩れない範囲で、扱う重量やレップ数、セット数を優先して考えるほうが、テンポそのものを細かく管理するよりも実践的だと言えるだろう。
よくある質問
ゆっくり挙げたほうが筋肉に効くというのは本当か
このメタ分析の結果からは、0.5秒から8秒の範囲であれば、ことさらゆっくり挙げることによる追加のメリットは確認されていない。極端に遅いテンポ(10秒超)は、むしろ筋肥大の観点では不利とされている。
筋力トレーニング初心者もテンポを気にする必要はあるか
フォームが安定しないうちは、テンポを厳密に管理するよりも、正しい動作を安全に行うことを優先したほうがよい。テンポは、基本的な動作が身についたあとに調整を検討する要素の一つと考えられる。持病がある場合やトレーニングを再開したばかりの場合は、医師や専門家に相談しながら進めてほしい。
KINNIKU TIMESの視点
「スロートレーニングのほうが効く」「できるだけ速く挙げるべき」といった主張は、SNSやトレーニング指導の現場でもしばしば対立する形で語られる。今回取り上げたメタ分析が示すのは、一般的なテンポの範囲内であれば、速度そのものよりも、扱う負荷やセット数、追い込み方といった他の変数のほうが筋肥大への影響は大きい可能性がある、という整理である。セット数や休憩時間については筋肥大には週何セットが必要かの解説記事やセット間の休憩は何秒がいいかの解説記事もあわせて参考にしてほしい。
出典:Schoenfeld BJ, Ogborn DI, Krieger JW. "Effect of Repetition Duration During Resistance Training on Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis." Sports Medicine, 45(4):577-585, 2015(PubMed抄録)/Lacerda et al. "Resistance training with different repetition duration to failure: effect on hypertrophy, strength and muscle activation." PeerJ 9:e10909, 2021(上記メタ分析を引用・検証する査読済み文献として参照)
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