筋トレの「アフターバーンで痩せる」は本当か 海外研究の数値で検証
筋力トレーニング後に代謝が上がり消費カロリーが増える「アフターバーン効果(EPOC)」は、海外の研究データでは1回あたり約5〜53キロカロリー程度との結果が報告されている。
トレーニングの強度や方式によって差はあるが、数値で見る限りその規模は限定的であることが分かった。
筋力トレーニング後の「アフターバーン効果」による追加の消費カロリーは、海外の研究データを確認すると1回あたりおおむね数キロカロリーから50キロカロリー台にとどまる。「筋トレをすれば何時間も代謝が上がり続けて自然に痩せる」と言われることがあるが、数値で見る限りその効果は限定的である。
アフターバーン効果(EPOC)とは何か
アフターバーン効果とは、運動後も酸素摂取量が安静時より高い状態が続く「運動後過剰酸素消費量(EPOC:Excess Post-exercise Oxygen Consumption)」という生理現象を指す。運動で乱れた体内の酸素借りを返すため、心拍数や体温の回復、乳酸の除去、ホルモン分泌の正常化などにエネルギーが使われ続けることで生じる。消費される酸素量は実測できるため、研究ではこれをカロリーに換算して効果の大きさを比較している。
筋力トレーニングでのEPOCは数値でどのくらいか
海外の運動生理学分野の専門メディア、IDEA Health & Fitness Association掲載のレビュー記事によると、過去の研究では次のような数値が報告されている。
| 研究 | 条件 | EPOCの量 |
|---|---|---|
| Elliot et al.(1992) | 高強度:3セット・8種目・80〜90%1RMで3〜8レップ | 約10.6L(約53kcal) |
| Elliot et al.(1992) | サーキット形式:4セット・8種目・50%1RMで15レップ | 約10.2L(約51kcal) |
| Murphy & Schwarzkopf(1992) | サーキット形式:3セット・6種目・50%1RMで10〜12レップ | 約5L(約25kcal) |
| Murphy & Schwarzkopf(1992) | 標準形式:3セット・6種目・80%1RMで限界まで | 約2.7L(約13.5kcal) |
| Thornton & Potteiger(2002) | 高強度:2セット・85%8RMで8レップ | 約2.3L(約11.5kcal) |
| Thornton & Potteiger(2002) | 低強度:2セット・45%8RMで15レップ(総仕事量は同一) | 約1.1L(約5.5kcal) |
いずれの研究も、酸素摂取量1リットルあたり約5キロカロリーとして換算されている。数値を見る限り、1回のトレーニングでアフターバーン効果によって追加で消費されるカロリーは、せいぜいおにぎり半分程度にとどまる規模である。
強度やトレーニング方式でEPOCは変わるのか
Thornton & Potteiger(2002)の研究では、総仕事量を揃えたうえで強度だけを変えており、高強度(85%8RM)の方が低強度(45%8RM)よりEPOCが約2倍大きいという結果が出ている。一方でElliot et al.(1992)の数値を見ると、高強度の種目と50%1RMのサーキット形式ではEPOCの量に大きな差が出なかった。米テキサス大学のBørsheim氏とノルウェー・オスロスポーツ医科学大学院のBahr氏による系統的レビュー(2003年、Sports Medicine誌)では、高重量のレジスタンストレーニングはサーキット形式のウエイトトレーニングよりEPOCが大きい傾向にあるとまとめられている。研究によって結果にばらつきがあり、「強度を上げれば必ず比例してアフターバーンが増える」と単純に言い切れるわけではない点には注意が必要である。
種目数やセット数の一般的な目安は厚生労働省の運動ガイド2023の解説記事でも紹介している。
有酸素運動のアフターバーン効果と比べるとどうか
同じBørsheim & Bahr(2003)のレビューによると、有酸素運動でEPOCが顕著になるのは、最大酸素摂取量(VO2max)の50〜60%以上の強度で、かつ40分以上運動した場合とされる。短時間・低強度の有酸素運動ではEPOCはごくわずかにとどまる。筋力トレーニングと有酸素運動を同じ日に行う場合の注意点は別記事で解説している。
よくある質問
アフターバーン効果だけで痩せることはできるか。
研究で報告されている追加消費カロリーは1回あたり数キロカロリーから50キロカロリー台にとどまり、これだけで体重を大きく減らすのは現実的ではない。ダイエットの基本は、日々の総消費カロリーと摂取カロリーのバランスである。
高強度の筋トレほどアフターバーン効果は大きいか。
同じ総仕事量で強度だけを比較した研究では高強度の方がEPOCが大きかったが、種目構成やセット方式が異なる研究間では必ずしも強度に比例しておらず、研究によって結果にばらつきがある。
筋トレと有酸素運動、どちらがアフターバーン効果は大きいか。
系統的レビューでは高重量の筋力トレーニングの方がサーキット形式のウエイトトレーニングよりEPOCが大きい傾向が示されている一方、有酸素運動はVO2maxの50〜60%以上かつ40分以上で効果が顕著になるとされ、単純な比較は難しい。
KINNIKU TIMESの視点
アフターバーン効果は実在する生理学的現象だが、研究データを見る限りその規模は1回あたり数キロカロリーから50キロカロリー台と、間食1つ分にも満たないことが多い。「筋トレをすれば代謝が上がって勝手に痩せる」と過度に期待するより、トレーニングの継続的な積み重ねと日々の食事内容を基本に据える方が現実的だろう。大幅な減量を目指す場合は、必要に応じて医師や管理栄養士に相談することが望ましい。
出典:IDEA Health & Fitness Association「Exercise After-Burn」(Elliot et al. 1992、Murphy & Schwarzkopf 1992、Thornton & Potteiger 2002の研究データを引用)/Human Kinetics「The Role of Excess Postexercise Oxygen Consumption」(Børsheim & Bahr, 2003, Sports Medicine誌掲載レビューの解説)
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