「クラスターセット法」とは何か パワーリフター対象の8週間研究で検証
クラスターセット法(セット中に短い休憩を挟む挙上法)は、ベンチプレスなどの最大挙上重量(1RM)の向上では通常のセット法と同程度だが、ジャンプ力やスプリントなど瞬発的な動作の向上では有利とする海外研究がある。パワーリフター24人対象の8週間研究と、259人を対象にしたメタ分析の結果から、効果と限界を整理した。
クラスターセット法(セット中に10〜30秒程度の短い休憩を挟みながら同じセットを続ける挙上法)は、ベンチプレスやスクワットなど基本種目の最大挙上重量(1RM)を伸ばす効果については、通常の連続したセット法と同程度であることが海外の研究で示されている。一方で、ジャンプ力やスプリントのような瞬発的な動作の向上では、クラスターセット法の方が有利とする報告もある。
クラスターセット法とは何か
クラスターセット法とは、1セットの中で数レップごとに10〜30秒程度の短い休憩(インターレップレスト)を挟み、同じセットの続きとして挙上を続けるトレーニング手法である。例えば「5レップを1セット」とする代わりに、「2レップ→短い休憩→2レップ→短い休憩→1レップ」のように分割する。狙いは、セット後半でも挙上スピードやフォームの質を落とさず、より高い強度を維持することにある。
パワーリフター対象の8週間研究で分かったこと
イランのギラン大学などの研究チームが2021年に学術誌「Scientific Reports」で発表した研究では、大学生の男性パワーリフター24人を、クラスターセット群・通常セット群・対照群の3グループ(各8人)に分け、8週間のトレーニングを実施した。その結果、ベンチプレス・バックスクワット・デッドリフトの1RMの伸びは、通常セット群とクラスターセット群で同程度だった。一方、瞬発的な挙上動作(インパルス)の指標は、クラスターセット群でより大きく改善したという。研究チームは「クラスターセットは瞬発的な動作に有利な適応を引き起こす」と結論づけている。
| グループ | 人数 | 1RM(ベンチ・スクワット・デッドリフト) | 瞬発的動作(インパルス) |
|---|---|---|---|
| クラスターセット群 | 8人 | 通常セット群と同程度 | より大きく改善 |
| 通常セット群 | 8人 | 同程度 | 比較対象 |
| 対照群 | 8人 | 比較対象(非トレーニング) | 比較対象 |
バレーボール・サッカー選手では瞬発力向上の報告も
2025年に学術誌「Frontiers in Physiology」に掲載されたシステマティックレビュー・メタ分析(ランダム化比較試験11件、参加者259人、14〜32歳の主に男性を対象)では、クラスターセット法を取り入れた競技者で、スプリントタイムの短縮(効果量SMD −0.32、95%信頼区間−0.56〜−0.07、p=0.012)や爆発的な動作の改善(SMD 0.39、95%信頼区間0.10〜0.68、p=0.009)に統計的な有意差がみられたと報告されている。特にバレーボール選手では爆発力の効果量が0.96(p=0.007)と大きく、サッカー選手でもピークパワーの改善(SMD 0.68、p=0.047)が確認された。ただし著者らは、分析対象11研究のうち無作為化の方法を明記していたのは1件のみだったとし、方法論的な質にばらつきがある点を限界として挙げている。
取り入れる際の注意点
クラスターセット法は、最大筋力そのものを伸ばす目的では通常のセット法と比べて優位性が明確ではなく、「必ず効果が上がる魔法のテクニック」ではない。ジャンプ力やスプリントなど瞬発力を重視する種目に取り組む人が、トレーニングの一部として試す価値がある手法と位置づけるのが妥当である。また、セット内の休憩の入れ方や総負荷量が変わることで、普段よりセットあたりの疲労が増える場合もあるため、フォームを最優先し、無理に重量を伸ばそうとしないことが望ましい。持病がある場合やトレーニング強度を大きく変える場合は、医師や専門家に相談することが推奨される。
よくある質問
クラスターセット法は筋肥大にも効果があるのか
今回紹介した研究は主に筋力・瞬発力を対象にしたもので、筋肥大(筋肉量の増加)への効果を直接比較したデータは限られている。筋肥大を主目的とする場合は、週あたりのトレーニングボリューム(セット数)の確保を優先するのが現時点では妥当である。
通常のセット法からクラスターセット法に替えるべきか
研究結果からは、最大筋力の向上という点では通常のセット法と同程度であるため、必ず切り替える必要はない。ジャンプやスプリントなど瞬発的な動作の向上を特に重視する場合に、トレーニングメニューの一部として試す選択肢と考えるのが適切である。
KINNIKU TIMESの視点
クラスターセット法は目新しいテクニックとして語られることがあるが、現時点の研究が示すのは「瞬発力向上には有利な可能性がある一方、最大筋力の伸びは通常のセット法と変わらない」という限定的な結果である。本サイトでは今後も、セット数・休憩時間・種目順序など基本的なトレーニング変数に関する研究を、原典に基づいて紹介していく。
出典:Arazi H, et al. "The effect of resistance training set configuration on strength and muscular performance adaptations in male powerlifters." Scientific Reports(2021)/Zhao X, et al. "The specificity of cluster training effects in sports: a systematic review and meta-analysis." Frontiers in Physiology(2025)/関連記事:筋肥大には週何セットが必要か/セット間の休憩は何秒がいい?
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