筋肥大の3つの仕組み メカニカルテンション・筋損傷・代謝的ストレスとは
筋肉が大きくなる仕組みは「メカニカルテンション」「筋損傷」「代謝的ストレス」の3つに整理できると、2010年発表の海外レビュー論文が示している。
高重量・低回数と中重量・中回数では、筋肥大を引き起こす主な経路が異なるという。
筋トレでなぜ筋肉が大きくなるのか。その仕組みは「メカニカルテンション」「筋損傷」「代謝的ストレス」という3つの要因に整理できる。米国の運動生理学者ブラッド・シェーンフェルド氏が2010年、学術誌「Journal of Strength and Conditioning Research」に発表したレビュー論文が、現在も筋肥大のトレーニング科学の基礎として広く引用されている。
メカニカルテンションとは何か
メカニカルテンション(機械的張力)とは、筋肉が力を発揮し、引き伸ばされることで生じる物理的な張力を指す。論文は、この張力が筋肉の成長シグナルを起動させるうえで本質的な刺激だと位置づけている。高負荷・低レップ(回数)のトレーニングで最大化されやすく、とくに筋肉を伸ばしながら力を発揮する「エキセントリック(伸張性)局面」で張力が高まるとされる。
筋損傷は必須の要因か
トレーニングによって筋線維に生じる微細な損傷も、一定の条件下では筋肥大の反応を引き起こすとされる。とくにエキセントリック動作を含む運動で起こりやすく、損傷を修復する過程で衛星細胞(筋肉を修復・成長させる細胞)が活性化し、成長因子が放出されると論文は説明する。ただし、過度な筋損傷はかえって回復を遅らせるため、筋肉痛を無理に起こすこと自体を目的にすべきではないとも補足されている。
代謝的ストレスとパンプ感の関係
代謝的ストレスは、酸素を十分に使わない無酸素性の代謝によって、乳酸などの代謝産物が筋肉内に蓄積することで生じる。中程度のレップ範囲(目安6〜12回)と、比較的短い休憩時間(60〜90秒程度)の組み合わせで高まりやすく、ホルモン反応や筋細胞の膨張(いわゆる「パンプ」)を伴うとされる。ボディビルダーが伝統的に採用してきた中重量・中回数のトレーニングは、この経路を重視したものと整理できる。
3つの要因は独立していない
論文は、3つの要因が完全に切り離されたものではなく、実際のトレーニングでは互いに重なり合って作用すると述べている。高重量のパワーリフティング的なアプローチはメカニカルテンションを、中重量のボディビルディング的なアプローチは代謝的ストレスをより強く引き出す傾向があるが、どちらの方法でも他の2つの要因もある程度は働いているという。そのため、特定の1つの要因だけを狙ってトレーニングを設計する必要はないという考え方が示されている。
よくある質問
結局、高重量と中重量のどちらが筋肥大に有利か
この論文の時点では、どちらか一方が明確に優れているとは結論づけられていない。3つの要因それぞれが筋肥大に寄与しうるため、異なる負荷・レップ範囲を組み合わせる設計も選択肢になる。
筋肉痛が出ないと筋肥大しない?
筋損傷は筋肥大に関わりうる要因の1つだが、必須条件ではない。筋肉痛の有無だけでトレーニングの効果を判断する根拠にはならない。
KINNIKU TIMESの視点
「追い込めば追い込むほどよい」「高重量でなければ意味がない」といった単純化された語られ方をしがちなテーマだが、この論文が示すのは、筋肥大には複数の経路があり、トレーニング法によって重視される経路が変わるという整理である。セット数やレップ数、休憩時間といった個別の要素は、本サイトの他の解説記事でも扱っているので、あわせて参考にしてほしい。
出典:Schoenfeld BJ. The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. Journal of Strength and Conditioning Research 24(10): 2857-2872, 2010(PubMed)/論文全文PDF(lookgreatnaked.com掲載)/関連記事:筋肥大には週何セットが必要か/セット間の休憩は何秒がいいか
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