ベンチプレスは握り幅の違いで大胸筋の鍛えどころが変わると海外研究
ベンチプレスは握り幅と握りの向きを変えるだけで、大胸筋3部位の活動が大きく変わることが海外の筋電図(EMG)研究で判明した。トレーニング経験者13人を対象にした12パターンの比較から、目的別の握り方の指針が見えてきた。
ベンチプレスは握り幅とグリップの向きを変えるだけで、大胸筋のどの部位に効くかが大きく変わることが、海外の研究チームによる筋電図(EMG)実験で明らかになった。2021年6月に学術誌「International Journal of Strength and Conditioning」に掲載された論文で、トレーニング経験1年以上の健康な男性13人を対象に、角度・握り幅・握り方向を変えた12種類のベンチプレスのバリエーションを比較検証している。
どんな研究で何を比較したのか
論文の著者はXavier Roy氏、Keven Arseneault氏、Pierre Sercia氏の3人である。研究では、ベンチ台の角度・握り幅・握りの向きという3つの条件を組み合わせ、合計12パターンのベンチプレスを設定した。各動作は12RM相当の負荷で実施され、大胸筋の3部位(鎖骨部=上部、胸肋部=中部、腹部=下部)と上腕三頭筋長頭の筋電図を測定している。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | レジスタンス運動経験1年以上の健康な男性13人 |
| ベンチ角度 | デクライン(-15°)/水平(0°)/インクライン(30°) |
| 握り幅 | 肩峰幅の100%(狭い)/200%(広い) |
| 握りの向き | 順手(プロネーション)/逆手(スピネーション) |
| 負荷 | 各条件とも12RM相当 |
大胸筋の上部・中部・下部で「効きやすい握り方」はどう違うのか
結果は部位ごとにはっきりと分かれた。統計的に有意な差(p≤0.05)が確認されている。
| 部位 | 活動が高かった条件 | 活動が低かった条件 |
|---|---|---|
| 大胸筋 鎖骨部(上部) | 水平・インクラインの順手狭い/インクラインの逆手(狭い・広い) | 水平の順手広い、デクライン各条件 |
| 大胸筋 胸肋部(中部) | 水平・順手・広い | インクラインの逆手(狭い・広い) |
| 大胸筋 腹部(下部) | 水平・順手・広い/デクライン・順手・広い | インクラインの各条件 |
上腕三頭筋への影響は
上腕三頭筋長頭については、水平・順手・狭い/デクライン・順手・狭いの条件で活動が高く、水平・逆手・広い、インクライン・逆手・狭い、デクライン・逆手・広いでは活動が低かったと報告されている。握り幅を狭めるほど上腕三頭筋への関与が強まる傾向がうかがえる結果である。
ボディビルダー・トレーニーは実際どう握ればいいのか
論文は実践的な結論として、大胸筋全体の成長を目指す場合は「水平(0°)での順手狭い握りと順手広い握りの組み合わせで十分」と述べている。一方で逆手グリップについては、インクラインでの鎖骨部(上部)活動を除き優位性が確認されず、著者らは「通常は必要でなく推奨されない」としている。時間効率を重視する競技者も同じ組み合わせで最大の効果が得られるとしつつ、角度を変える意味は「種目特異的な動きの表現」にあるとまとめている。なお、広い握り幅は肩関節の可動範囲が大きくなる分、肩への負担も増えやすい。肩に違和感や痛みがある場合は、自己判断で握り幅を広げず専門家や医師に相談したうえで調整したい。
種目のバリエーションについては、スタンス幅で効く部位が変わるスクワットの検証記事や、デッドリフトのコンベンショナルとスモーの比較記事も参考にしたい。
よくある質問
「狭い」「広い」の握り幅はどのくらいの差なのか
本研究では肩峰(肩の骨)の幅を基準に、同じ幅を100%(狭い)、2倍の幅を200%(広い)と定義している。
逆手(アンダーグリップ)のベンチプレスは意味がないのか
インクライン条件に限り、逆手グリップは大胸筋鎖骨部(上部)の活動を高めたと報告されている。水平・デクラインでの逆手には優位性が確認されていない。
この結果は誰にでも当てはまるのか
対象は訓練経験1年以上の健康な男性13人に限られる。女性や高齢者、初心者にそのまま当てはまるとは限らず、一般化には注意が必要である。
KINNIKU TIMESの視点
この研究が示すのは、大胸筋を全体的に鍛えたいなら、特殊な逆手グリップを無理に取り入れるよりも、水平ベンチで順手の狭い握りと広い握りを使い分ける方が合理的だという点である。上部を強めに意識したい日は狭い握り、中部・下部を強めたい日は広い握りを選ぶといった使い分けが、根拠に基づいた一つの指針になる。ただしこの知見は健康な男性13人という小規模な調査結果であり、個人差も大きい。自分の肩の可動域や既往症に不安がある場合は、無理に握り幅を変えず、トレーナーや医師に相談しながら試すのが安全である。
出典:Arseneault, K., Roy, X., & Sercia, P. "The Effect of 12 Variations of the Bench Press Exercise on the EMG Activity of Three Heads of the Pectoralis Major." International Journal of Strength and Conditioning(2021年6月) / International Journal of Strength and Conditioning 論文ページ(DOAJ掲載・CC BY 4.0)
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