ベンチプレスのグリップ幅と筋力・筋肉の使われ方 28人の研究で比較
ベンチプレスはグリップ幅を変えると、挙げられる重量や上腕三頭筋・前部三角筋の使われ方が変わることが28人の研究で分かった。大胸筋の活動量そのものはグリップ幅で大きく変わらなかった。
ベンチプレスはグリップ幅を変えると、挙げられる重量も、胸・腕・肩の筋肉の働き方も変わることが、トレーニング経験者と初心者28人を対象にした研究で示された。ノルウェーのベスト大学(Western Norway University of Applied Sciences)のセーテルバッケン(Saeterbakken)氏らが2021年に学術誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に発表した研究をもとに、狭い・標準・広いグリップの違いを整理する。

何人を対象に、どうやって調べたか
研究の対象は成人男性28人。ベンチプレスで体重の125%以上を挙げられ、トレーニング歴5.5±1.9年の「トレーニング経験者群」15人と、体重の80%未満しか挙げられず、トレーニング歴1.0±0.7年の「初心者群」13人に分けて比較した。グリップ幅は3種類で、壁を背にして腕を水平に広げたときの両脇の間隔を「ナロー」、競技会で認められる最大幅81cmを「ワイド」、その中間を「ミディアム」と定義した。各グリップで6回挙げられる限界の重量(6RM)を測定し、挙上中は大胸筋(鎖骨部・胸骨部)・上腕三頭筋・前部三角筋・上腕二頭筋の表面筋電図(EMG)を記録した。等尺性の最大随意収縮(MVIC)は、EMGの数値を基準化するためだけに別途測定している。
狭いグリップは重量が落ちるのか
6RMの重量は、ナローがミディアム・ワイドより全体で有意に低かった(経験者群はいずれもP<0.001、初心者群はミディアムとの比較でP=0.040、ワイドとの比較でP=0.045)。一方でミディアムとワイドの間には有意差がなかった。バーを挙げ下げする時間(挙上スピード)には、グリップ幅による違いは見られなかった。

筋肉の使われ方はどう変わるか
全体平均の筋活動量(%MVIC)を比べると、上腕三頭筋はナロー70.3・ミディアム69.2・ワイド62.7で、ワイドがナロー・ミディアムより有意に低かった。大胸筋は鎖骨部(ナロー88.0・ミディアム89.0・ワイド84.8)・胸骨部(ナロー100.0・ミディアム97.9・ワイド96.1)のいずれも、グリップ幅による有意差はなかった。前部三角筋はミディアムがナローより有意に高く(P=0.036)、上腕二頭筋はグリップ幅が広いほど活動量が増える傾向が見られた。著者らは、グリップを広げるほど肘の曲げ伸ばしに関わる上腕三頭筋・上腕二頭筋の役割が変化し、肩関節の動きに関わる前部三角筋の働きが増えると考察している。ただし大胸筋そのものの活動量はグリップ幅で大きく変わらなかった点は注目してよい。
経験者と初心者で傾向は同じか
グループ別に見ると、経験者群では上腕三頭筋と上腕二頭筋に、初心者群では前部三角筋と上腕二頭筋にグリップ幅の影響が見られたが、論文では経験者群と初心者群を直接統計的に比較してはいない。この研究は1回の測定で動的なベンチプレスのEMGを比較したものであり、数週間・数カ月単位で続けた場合の筋肥大の差を直接示したものではない点には注意したい。
グリップ幅ごとの特徴まとめ
| グリップ幅 | 6RM重量 | 上腕三頭筋の活動 | 大胸筋の活動 | 前部三角筋の活動 |
|---|---|---|---|---|
| ナロー(脇の間隔) | 最も低い | 高い(70.3%MVIC) | 差なし | やや低い |
| ミディアム(中間) | ナローより高い | 高い(69.2%MVIC) | 差なし | 最も高い |
| ワイド(競技会上限81cm) | ナローより高い | 最も低い(62.7%MVIC) | 差なし | やや高い |
よくある質問
上腕三頭筋を鍛えたいならどのグリップがいい?
この研究ではナロー・ミディアムの方がワイドより上腕三頭筋の活動量が高かった。ただし1回の測定結果であり、長期的な筋肥大量を直接比較したものではない点には留意したい。
大胸筋を鍛えるにはグリップ幅を変えるべき?
この研究では、大胸筋の活動量はグリップ幅による有意差が見られなかった。グリップ幅よりも、可動域を十分に使うことや扱う重量の方が影響しやすいと考えられる。
ナローグリップは重量を軽くすべき?
この研究でも、ナローは6RMの重量がミディアム・ワイドより低かった。同じ回数を狙う場合は重量を調整するか、無理のない範囲で行うことが前提になる。
KINNIKU TIMESの視点
ベンチプレスはグリップ幅を変えるだけで、扱える重量や上腕三頭筋・前部三角筋の使われ方が変化する可能性がある一方、大胸筋の活動量そのものは大きく変わらないという結果は、グリップ幅選びに悩む人には参考になりそうだ。もっとも今回の研究は1回の測定にとどまるため、普段のトレーニングではベンチプレスの基本フォームを固めたうえで、関節に痛みが出ない範囲でグリップ幅を選ぶのが現実的だろう。肩や手首に違和感がある場合は無理をせず、医師や理学療法士に相談してほしい。あわせて上腕三頭筋の筋トレガイドも参考にしてほしい。
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