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ラットプルダウンのやり方 正しいフォームと握り幅・重量の目安を研究で解説

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 10分
懸垂バーにぶら下がる男性の後ろ姿
SUMMARY|この記事の要約

ラットプルダウンの正しい手順、握り幅と握り方の選び方、首の前と後ろのどちらに引くか、重量・回数・セット数の目安、よくある間違いを、筋電図研究とACSMの指針をもとに整理しました。

ラットプルダウンは、順手でバーを握り、胸を軽く張ったまま、バーを鎖骨から胸の上部あたりへ引き下ろすのが基本である。握り幅は肩幅の1〜2倍の範囲であれば広背筋の活動に大きな差は出にくく、首の後ろに引く方法は勧められていない。重量は10回前後で限界の1〜3回手前になる重さから始め、2〜3セットを週2回以上行うのが目安になる。

ラットプルダウンで鍛えられる筋肉は?

主に鍛えられるのは、背中の下部から脇の下に広がる広背筋(こうはいきん)である。あわせて大円筋、僧帽筋の中部、菱形筋、肩の後ろ側の三角筋後部、腕の上腕二頭筋も働く。ラットプルダウン(Lat Pulldown)は、ケーブルマシンに座ったまま頭上のバーを引き下ろす種目で、懸垂(チンニング)と似た動きを、自分の体重より軽い負荷から練習できるのが利点だ。

レーマンらの2004年の研究(Dynamic Medicine誌)では、ワイドグリップのプルダウン、逆手のプルダウン、シーテッドロウなどを比べ、広背筋と上腕二頭筋の活動の比率はワイドグリップのプルダウンとシーテッドロウで高かった。種目の違いによる筋活動の差は「小さな変化」にとどまるとも報告されており、どの引き方でも背中は使われる。大切なのは、細かな種目選びより、正しいフォームで十分な量をこなすことである。懸垂の握り方による違いは懸垂の順手と逆手の筋電図研究で詳しく紹介している。

ラットプルダウンの正しいやり方は?

座る位置と太もものパッドを合わせ、胸を張ったまま肘を体の横へ下ろす。この流れを毎回同じ形でくり返すのが正しいやり方である。

  1. パッドを合わせる:座ったときに太ももがパッドの下にぴったり収まる高さに調整する。体が浮かないことが条件だ。
  2. バーを握る:順手(手の甲が自分側)で、肩幅の1.5倍前後を目安に握る。親指はバーに回してしっかり握る。
  3. 姿勢を作る:座ったら胸を軽く張り、上体をわずかに(10〜20度ほど)後ろへ傾ける。腰は反りすぎない。
  4. 肩を下げてから引く:腕を伸ばしたまま、まず肩をすくめた状態から下げる意識を持つ。そのうえで肘を体の横へ下ろすように引く。
  5. 胸の上部まで引く:バーを顎の下から鎖骨・胸の上部あたりまで下ろす。肘は下と少し後ろに向ける。
  6. ゆっくり戻す:2〜3秒かけて腕が伸びきる手前まで戻す。重りが着地する直前で次の回に入る。
  7. 呼吸:引くときに息を吐き、戻すときに吸うと、リズムを保ちやすい。

握り幅と握り方はどれがいい?

握り幅は「肩幅の1〜2倍」の範囲なら広背筋の活動は同程度で、握り方は順手のほうが広背筋の活動が高いと報告されている。

アンデルセンらの2014年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、男性15人が肩幅(両肩の骨の間の距離)の1倍、1.5倍、2倍の3つの握り幅で6回が限界になる重さ(6RM)を測った。6RMは狭い握りが80.3kg、中間が80.0kg、広い握りが77.3kgで、広い握りだけが軽くなった。一方、広背筋・僧帽筋・棘下筋の筋活動は握り幅の間で同程度だった。著者らは、中間の握りにわずかな利点がある可能性を示しつつ、1〜2倍の範囲であれば同じような筋肥大が期待できるとまとめている。

ラスクらの2010年の研究(同誌)では、男性12人が1RMの70%の重さで、広い順手・広い逆手・狭い順手・狭い逆手の4通りを比べた。順手は逆手よりも広背筋の活動が高く、握り幅による差は見られなかった。このため「広く握るほど背中が広がる」とは言い切れず、まずは肩幅の1.5倍前後の順手で、肩や手首に痛みが出ない幅を選ぶのが現実的である。

バーは首の前と後ろ、どちらに引く?

バーは首の前(胸の上部)に引くのが基本で、首の後ろに引く方法は勧められていない。

スペランデイらの2009年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research誌)では、トレーニング経験のある男性24人が1RMの80%で、首の後ろに引く方法、首の前に引く方法、Vバーで引く方法を比べた。広背筋の活動には3つの方法で差がなかったが、著者らは目的を考えると首の前に引く方法がよく、首の後ろに引く方法は避けるべきだと結論づけている。首の後ろへ引くには肩を大きく外にひねる必要があり、肩への負担が増えやすい。

パドヴァンらの2024年の研究(Journal of Human Kinetics誌)では、トレーニング経験のある男性14人を高密度の筋電図で調べ、首の前に引く方法のほうが主な筋肉の活動が全体として高い傾向を示した。首の後ろへ引くメリットを示す根拠は乏しく、無理に選ぶ理由はない。

重量・回数・セット数の目安は?

筋肥大が目的なら、8〜15回で限界の1〜3回手前になる重さを2〜3セット、背中全体で週10セット以上が目安になる。

米国スポーツ医学会(ACSM)が2026年に出した筋トレの公式見解(Currierら、Medicine & Science in Sports & Exercise誌)は、137本の系統的レビュー(3万人超)をまとめたものだ。筋力を高めるには1RMの80%以上の重さ、全可動域、2〜3セット、週2回以上が有利で、筋肥大には週10セット以上の量が有利と整理された。限界まで追い込むかどうかは、結果に一貫した差がなかった。指針の詳細はACSMの2026年改定の解説にまとめている。

シェーンフェルドらの2017年のメタ分析(15研究、Journal of Sports Sciences誌)でも、週のセット数を1つ増やすごとに筋肉の増え方が平均0.37%ずつ大きくなる関係が示された。ただし量を増やすほど回復も必要になるため、初心者は少なめから始めるとよい。限界の何回手前かを測る方法はRPEとRIRの解説が参考になる。

レベル 種目 回数 セット 休憩
初心者(週2回) ラットプルダウン(順手・肩幅1.5倍) 10〜12回(余力2〜3回) 2〜3 90秒〜2分
初心者(週2回) ダンベルロウ 10〜12回(片側) 2 90秒
中級者(週2回) ラットプルダウン(順手) 6〜10回(余力1〜2回) 3〜4 2〜3分
中級者(週2回) ラットプルダウン(Vバーなど別の握り) 10〜15回 2〜3 90秒〜2分

同じ重さで決めた回数を全セットこなせたら、次回は2.5〜5kg重くするのが目安だ。重さの上げ方はプログレッシブオーバーロードの解説を参考にしてほしい。

よくある間違いとチェックポイントは?

多いのは「上体を大きく後ろに倒して反動で引く」「肩がすくむ」「腕だけで引く」の3つである。

  • 上体を倒しすぎる:45度近くまで倒すと、引き下ろす動きがロウ(漕ぐ動き)に近づき、反動も使いやすくなる。傾きは10〜20度ほどにとどめる。
  • 肩がすくむ:耳と肩が近づいたまま引くと、首まわりに力が入りやすい。引く前に肩を下げる。
  • 腕で引いてしまう:手首が曲がり、肘より手が先に動いているサインだ。「手はフック、肘を下ろす」と考える。
  • 可動域が狭い:重すぎるとバーが顎より上で止まる。胸の上部まで届かない重さは下げる。
  • 戻しで力を抜く:重りを落とすように戻すと、伸びた位置での負荷が抜ける。2〜3秒かけて戻す。
  • 握力が先に尽きる:背中より先に手が疲れる場合は、補助具を使う選択肢もある。根拠はリフティングストラップの研究で紹介している。

安全に行うための注意点は?

肩や首に痛みがある日は無理をせず、痛みが出ない握り幅と可動域で行うことが基本である。

始める前に軽い重さで1〜2セットのウォームアップを入れると、肩まわりを動かしやすくなる(筋トレ前のウォームアップの解説)。肩の脱臼や手術歴、腱板の痛みなど持病がある人は、事前に医師に相談してほしい。運動中に胸の痛みや息苦しさ、めまいを感じたらすぐに中止する。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しているが、量は体調にあわせて調整してよいとしている。

よくある質問

ラットプルダウンは懸垂の代わりになりますか?

どちらも広背筋を中心に背中を鍛える引く種目で、重さを細かく調整できるラットプルダウンは懸垂がまだできない人の練習にも向いています。懸垂ができるようになったら、両方を組み合わせるのも一つの方法です。

握り幅は広いほど背中に効きますか?

研究では肩幅の1〜2倍の範囲で広背筋の活動は同程度でした。広すぎる握りは扱える重さが少し下がると報告されているため、肩幅の1.5倍前後から始め、痛みのない幅を選ぶのが現実的です。

逆手(アンダーグリップ)で引いてもいいですか?

逆手でも背中は鍛えられますが、男性12人の研究では順手のほうが広背筋の活動が高くなりました。メインは順手にし、変化をつけたい日に逆手やVバーを取り入れるとよいでしょう。

何kgから始めればいいですか?

決まった重さはありません。正しいフォームで10〜12回行い、あと2〜3回できる余力が残る重さを選んでください。全セットこなせるようになったら2.5〜5kgずつ重くします。

週に何回やればいいですか?

ACSMの2026年の指針では週2回以上の頻度が筋力向上に有利とされ、筋肥大には背中全体で週10セット以上が目安です。ラットプルダウンとロウ系の種目を合わせて数えるとよいでしょう。

KINNIKU TIMESの視点

ラットプルダウンで結果を分けるのは、握り幅の数センチではなく、肩を下げてから肘を下ろすという基本の形と、それを週10セット前後くり返す継続である。研究では握り幅による広背筋の差は小さく、首の後ろへ引く利点は見つかっていない。まずは肩幅の1.5倍前後の順手、胸の上部まで引ける重さ、2〜3秒かけた戻し、この3点を固め、重さは少しずつ上げていきたい。背中の厚みを加えたいなら、ダンベルロウのやり方と組み合わせるとバランスがよい。


出典:Lusk SJ, et al. J Strength Cond Res. 2010;24(7):1895-900/Andersen V, et al. J Strength Cond Res. 2014;28(4):1135-42/Sperandei S, et al. J Strength Cond Res. 2009;23(7):2033-8/Padovan R, et al. J Hum Kinet. 2024;91:47-60/Lehman GJ, et al. Dyn Med. 2004;3(1):4/Currier BS, et al. ACSM Position Stand. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872/Schoenfeld BJ, et al. J Sports Sci. 2017;35(11):1073-1082/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

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