増量(バルクアップ)のやり方と食事 カロリー・たんぱく質・ペースを研究で解説
筋肉を増やすための増量はどう進めればよいのか。ボディビルダーのオフシーズン栄養の総説、栄養指導の有無を比べた試験、たんぱく質のメタ分析をもとに、カロリー設定、食事例、メニューをまとめた。
増量(バルクアップ)は、維持カロリーより1〜2割ほど多く食べ、体重を週に体重の0.25〜0.5%ずつ増やすペースが研究に基づく目安である。食べる量を増やすほど筋肉の増え方は大きくなる傾向があるが、脂肪の増え方はそれ以上に大きくなりやすい。たんぱく質を体重1kgあたり1日1.6〜2.2g確保し、筋トレで重さか回数を少しずつ伸ばしながら、体重の増え方を週単位で調整するのが基本である。
増量はなぜ必要で、誰に向いている?
筋肉をつくるにはエネルギーと材料が要るため、エネルギーが余っている状態のほうが筋肉は増えやすい。Slaterらの2019年の総説(『Frontiers in Nutrition』)は、エネルギーの余剰には筋トレとは別に筋肉を増やす方向の刺激があることを示しつつ、筋肉の増加と脂肪の増加の釣り合いが最も良い「余剰の量」は、筋トレをする人で検証されていないと指摘している。
向いているのは、体脂肪が多くなく、体重を増やしても困らない人、筋力や筋肉量をはっきり伸ばしたい人である。体脂肪が多めの人や筋トレを始めたばかりの人は、無理に増量しなくても維持カロリー前後で筋肉が増えることがある(高たんぱくなら減量中でも筋肉は増えたとする試験)。体脂肪を減らしたい場合は筋トレのダイエット効果と仕組みを先に読んでほしい。
カロリーはどのくらい増やせばいい?
維持カロリーの10〜20%増しが一つの目安になる。Irakiらの2019年の総説(『Sports』、ボディビルダーのオフシーズンの栄養)は、初心者・中級者では約10〜20%のエネルギー余剰で、体重を週に約0.25〜0.5%増やすことを勧め、上級者ほど余剰と増加ペースを控えめにすべきだとしている。体重70kgの人なら、週に約0.2〜0.35kgの増加になる。
食べすぎの影響を示した試験もある。Gartheらの2013年の試験(『European Journal of Sport Science』)では、エリート選手39人が8〜12週間、週4回の筋トレを追加し、一方の群は栄養指導に従ってエネルギーを多めにとった。指導群は体重が多く増えた(3.9%と1.5%)が、脂肪量の増加も大きく(15%と3%)、除脂肪量の増え方には差がなかった。Ribeiroらの2019年の小規模な試験(『Journal of Human Kinetics』、ボディビルダー11人、4週間)でも、体重1kgあたり1日約67.5kcalをとった群は、約50kcalの群より筋肉量の増加が大きかった(2.7%と1.1%)が、体脂肪も7.4%増えていた。
研究からは、「多く食べるほど筋肉は増えうるが、増える分の多くは脂肪になりやすい」という傾向が読み取れる。速く増やすほど、その後の減量期間が長くなる点も考えておきたい。
増量の正しいやり方の手順は?
- 維持カロリーを確かめる:2週間ほどいつも通り食べ、毎朝の体重の週平均が横ばいになる摂取量を見つける。
- 10〜20%上乗せする:維持が2,400kcalなら、2,650〜2,900kcal程度から始める。
- たんぱく質を先に決める:体重1kgあたり1日1.6〜2.2gを、3〜6回の食事に分ける。
- 脂質は控えめ、残りを糖質にする:Irakiらは脂質を体重1kgあたり1日0.5〜1.5g、糖質を3〜5g以上とすることを勧めている。
- 週平均の体重で調整する:2週続けて増えなければ1日100〜200kcal増やし、目安より速く増えていれば減らす。
- 筋トレの記録が伸びているか確認する:体重が増えても重さや回数が伸びていなければ、トレーニング内容を見直す。
たんぱく質はどのくらい必要?
体重1kgあたり1日1.6g前後が一つの目安で、多めに見ても2.2g程度で十分と考えられる。Mortonらの2018年のメタ分析(『British Journal of Sports Medicine』、49研究・1,863人)では、1日の総たんぱく質摂取量が体重1kgあたり約1.62gを超えると、筋トレによる除脂肪量の増加はそれ以上伸びなかった。ISSNの2026年の公式見解も、筋トレと組み合わせた1.6〜2.2gで筋肉の合成が最大化しうるとしている。それ以上の量を大量にとる必要は乏しく、高たんぱく食と体の数値の関係は3.2g/kgの摂取を調べた試験の解説で扱っている。食事の回数は3食と6食を比べたメタ分析の解説も参考になる。
増量中の食事例は?
体重70kg、目標2,800kcal・たんぱく質約130gの場合の一例である。特定の食品にこだわる必要はなく、続けやすい組み合わせを選べばよい。
| 食事 | 内容の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 朝 | ご飯大盛り、卵2〜3個、納豆、みそ汁、果物 | 朝食を抜かず、糖質とたんぱく質をそろえる |
| 昼 | 丼もの(鶏や豚)、野菜の小鉢、牛乳 | 主食を多めにして量を確保する |
| 間食(練習前) | おにぎり、ヨーグルト、バナナ | 練習の1〜2時間前に軽く食べる |
| 夜 | ご飯、魚または肉のおかず、豆腐、野菜 | たんぱく質源を毎食入れる |
| 寝る前(足りない日) | 牛乳やヨーグルト、チーズ | 1日の目標に届かないときに補う |
食が細い人は、量より回数を増やす、飲み物でエネルギーをとる、油を少し使った料理を加えるなどで、満腹感を抑えながら摂取量を増やせる。
増量中の筋トレメニューは?
食事だけ増やしても、筋トレの刺激がなければ増えるのは主に脂肪である。重さか回数を少しずつ伸ばす(プログレッシブオーバーロードの実践法)ことを最優先にする。
| 対象 | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週3回・全身) | スクワット(Squat)、ベンチプレス(Bench Press)、ラットプルダウン(Lat Pulldown)、ショルダープレス(Shoulder Press) | 8〜12回 | 各2〜3 | 2分 |
| 中級者(上半身の日・週2回) | ベンチプレス、懸垂(Pull-up)、ダンベルロウ(Dumbbell Row)、ディップス(Dips)、アームカール(Arm Curl) | 6〜12回 | 各3 | 2〜3分 |
| 中級者(下半身の日・週2回) | スクワット、ルーマニアンデッドリフト(Romanian Deadlift)、レッグプレス(Leg Press)、カーフレイズ(Calf Raise) | 6〜15回 | 各3 | 2〜3分 |
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の公式見解は、筋肥大には1部位あたり週10セット以上を目安としている。曜日の割り振りは週2・週3・週4の1週間メニュー例を参考にしてほしい。
増量でよくある間違いとチェックポイントは?
- 「とにかく食べる」で体重を急に増やす:月に数kgのペースは、多くの場合脂肪の増加が大きい。週0.25〜0.5%を目安にする。
- 菓子や揚げ物でカロリーを稼ぐ:脂質や塩分が多くなり、たんぱく質や食物繊維が不足しやすい。
- 体重だけを見る:腹囲や鏡の見た目、筋トレの記録も合わせて確認する。腹囲が急に増えるなら余剰が大きすぎる。
- 増量期間を決めていない:数か月単位で区切り、体脂肪が増えすぎたら維持か減量の期間に切り替える。減量期に筋肉がどう変わるかはオリンピア級選手の増量・減量の事例研究が参考になる。
- 睡眠を軽く見る:睡眠不足は筋たんぱく質の合成を下げることが報告されている(徹夜1晩で筋たんぱく合成が低下した研究)。
増量で気をつけたい健康面は?
体重や体脂肪の増え方には個人差が大きく、同じ量を食べても結果は人によって違う。次の点を守ってほしい。
- 血圧、血糖、脂質、腎臓の数値などで指摘を受けている人、持病や服薬がある人は、食事量を大きく増やす前に医師に相談する。
- 健康診断の数値が悪化した場合は増量を中止し、医師に相談する。
- 関節の痛みが出たら、その種目を中止し、続く場合は医師の診察を受ける。
- トレーニング中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまいが出たらすぐに中止する。
よくある質問
増量中は1か月に何kg増やすのが目安ですか?
初心者・中級者では体重の週0.25〜0.5%が目安とされ、体重70kgなら月に約0.8〜1.4kgである。上級者ほどペースを控えめにする。これより速く増えている場合は脂肪の割合が大きくなりやすい。
クリーンバルクとダーティーバルクはどちらがいいですか?
研究で厳密に比べられているわけではないが、余剰のエネルギーが大きいほど脂肪が増えやすいことは示されている。食品の質を保ち、余剰を維持カロリーの10〜20%程度に抑える方法が、健康面でも後の減量の面でも扱いやすい。
増量しないと筋肉はつきませんか?
必須ではない。筋トレを始めたばかりの人や体脂肪が多めの人は、維持カロリー前後でもたんぱく質を十分にとれば筋肉が増えることがある。ただし、筋肉量を大きく伸ばしたい中級者以上では、適度な余剰があるほうが進めやすい。
たんぱく質は多ければ多いほどいいですか?
メタ分析では、体重1kgあたり1日約1.6gを超えると筋肉の増え方はそれ以上伸びなかった。1.6〜2.2gを目安にすれば十分で、それ以上は他の栄養素を減らしてまでとる必要は乏しい。
増量期はどのくらい続けるものですか?
決まった期間はないが、数か月単位で区切り、腹囲や体脂肪の増え方を見ながら維持期や減量期に切り替えるのが一般的である。体脂肪が増えすぎる前に区切ると、その後の減量が短く済む。
KINNIKU TIMESの視点
増量の目的は体重を増やすことではなく、筋肉を増やすことである。研究は、食べる量を増やすほど筋肉も増えうる一方で、脂肪はそれ以上に増えやすいことを示している。維持カロリーの1〜2割増し、週0.25〜0.5%の体重増加、たんぱく質1.6〜2.2g/kgという目安を出発点に、筋トレの記録と腹囲を見ながら少しずつ調整してほしい。持病や健康診断の数値に不安がある人は、食事を大きく変える前に医師に相談することが前提である。
出典:Iraki ら(Sports, 2019)/Slater ら(Front Nutr, 2019)/Garthe ら(Eur J Sport Sci, 2013)/Ribeiro ら(J Hum Kinet, 2019)/Morton ら(Br J Sports Med, 2018)/Aragon ら ISSN Position Stand(J Int Soc Sports Nutr, 2026)/ACSM Position Stand(Currier ら, Med Sci Sports Exerc, 2026)
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