リーンバルクとは 増量ペースは月何kg?カロリー上乗せ量を研究で解説
リーンバルクは、カロリーの上乗せを小さくして脂肪の増加を抑える増量法だ。オフシーズンの栄養レビューが示す週0.25〜0.5%の増加ペースを体重別の表にし、上乗せ5%と15%を比べた試験、たんぱく質1.6g/kgの根拠までまとめた。
リーンバルクとは、体脂肪の増え方を抑えるために、カロリーの上乗せを小さくして体重をゆっくり増やす増量法だ。研究に基づく目安は、維持カロリーの約10〜20%以内の上乗せと、週に体重の0.25〜0.5%の増加(初心者〜中級者)である。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
「リーンバルク」は学術用語ではなく、トレーニングの現場で使われてきた呼び方だ。ただ、その中身である「上乗せを控えめにした増量」は、ボディビルダーのオフシーズンの栄養をまとめたレビューや、上乗せ量を変えて比べた試験で検討されている。本記事は、PubMed に収載された論文の要旨で確かめた数字だけを使い、増量ペース、カロリーの上乗せ量、たんぱく質の量を整理する。増量全般のやり方は増量(バルクアップ)のやり方と食事で解説しているので、本記事は「太りすぎない増量」に絞る。
リーンバルクとは何か、普通の増量と何が違うのか
筋肉を増やすには、筋トレの刺激に加えて、体に材料とエネルギーが足りている状態が有利だと考えられている。2019年に Frontiers in Nutrition に載ったレビュー(Slater ら)は、エネルギーの余剰(食べる量が使う量を上回る状態)には、筋トレがなくても同化(体をつくる方向)の刺激があるという証拠は明確だと述べる。一方で、筋肥大を最大にするために必要な余剰の大きさは「分かっていない」とも書いている。
つまり「食べるほど筋肉が増える」わけではない。余剰を大きくすると体重は早く増えるが、増えた分のうち脂肪の割合が高くなりやすい。リーンバルクは、この脂肪の増え方を抑えるために、余剰を小さめに、体重の増え方をゆっくりにする考え方だ。反対に、食べる量をあまり管理せず大きく体重を増やすやり方は、現場では「ダーティーバルク」と呼ばれることが多い。
競技ボディビルでは、大会に向けて脂肪を落とす「減量期」と、それ以外の「オフシーズン」を繰り返す。オフシーズンに脂肪を増やしすぎると、次の減量が長く厳しくなる。リーンバルクが競技者に好まれるのはこのためで、一般のトレーニーにとっても、増量後に体脂肪を落とす期間を短くできるという利点がある。
増量ペースは1か月に何kgが目安か
ナチュラル(薬物を使わない)ボディビルダーのオフシーズンの栄養をまとめた2019年のレビュー(Iraki ら、Sports 誌)は、初心者〜中級者について、週に体重の約0.25〜0.5%の増加を目標にすることを勧めている。上級者は、カロリーの上乗せも週の増加量も、より控えめにするべきだとしている。上級者ほど筋肉の伸びしろが小さく、同じペースで体重を増やすと脂肪の割合が高くなりやすいためだ。
この「週0.25〜0.5%」を体重別に計算すると次のようになる。1か月は約4.3週として計算した。
| 体重 | 週あたりの増加(0.25〜0.5%) | 1か月あたりの増加の目安 |
|---|---|---|
| 50kg | 約0.13〜0.25kg | 約0.5〜1.1kg |
| 60kg | 約0.15〜0.30kg | 約0.6〜1.3kg |
| 70kg | 約0.18〜0.35kg | 約0.8〜1.5kg |
| 80kg | 約0.20〜0.40kg | 約0.9〜1.7kg |
| 90kg | 約0.23〜0.45kg | 約1.0〜1.9kg |
上級者はこの範囲の下側、あるいはそれ以下を目安にする。体重70kgの中級者なら、1か月に1kg前後、3か月で3kg前後の増加が一つの目安になる。体重は水分や食事の量で1日に1kg近く動くこともあるため、毎日の数字ではなく、週の平均で増え方を見るのが現実的だ。
カロリーはどれだけ上乗せするのか
同じ Iraki らのレビューは、オフシーズンの食事として維持カロリーより約10〜20%多いエネルギーを勧めている。では、上乗せの大きさを実際に変えると何が起きるのか。主な試験の結果を表にまとめた。
| 研究 | 対象と期間 | 比べた条件 | 主な結果 |
|---|---|---|---|
| Helms ら(2023、Sports Medicine - Open) | 筋トレ経験者21人を割り付け、17人が完了。週3回・8週間 | 維持カロリー/5%上乗せ/15%上乗せ | 筋厚とスクワットの1RMに群の差の証拠なし。15%群はベンチプレスの伸びが大きく、皮下脂肪の厚みも増えやすかった |
| Garthe ら(2013、European Journal of Sport Science) | エリート選手39人。8〜12週間の増量期 | 栄養指導で余剰をつくる群/自由に食べる群 | 指導群は摂取量が多く(1日3,585kcal対2,964kcal)体重の増加も大きかった(3.9%対1.5%)が、除脂肪量の増加は差がなく、脂肪量の増加は15%対3% |
Helms らは、体重の変化を使った回帰分析も行い、体重の増え方が速いほど皮下脂肪の厚みが増えることを「強い証拠」として示した。結論として、体重を速く増やす(上乗せを大きくする)ことは、1RM や筋厚を伸ばすよりも主に脂肪の増え方を速める、と書いている。ただし、最も刺激を受けた上腕二頭筋では、体重の増加がわずかにプラスに働いた可能性にも触れている。対象は経験がまちまちな人たちで、週3回・8週間という条件の範囲での結果だと著者自身が断っている。
Garthe らの試験は、エリート選手でも「たくさん食べるほど筋肉が増える」わけではないことを示した。体重は指導群のほうが増えたが、増えた分は主に脂肪だった。2つの試験とも人数が少なく期間も短いため、最適な上乗せ量を一つに決めることはできない。それでも、上乗せは大きくしすぎないほうがよい、という方向は一致している。
計算の例
1日の消費カロリー(TDEE)が2,500kcal の人なら、5%の上乗せは125kcal、10%は250kcal、20%は500kcal になる。250kcal はおにぎり1〜2個程度の量で、リーンバルクの上乗せは「1食増やす」ほど大きくない。自分の TDEE はTDEE(1日の消費カロリー)の計算方法で求められる。計算式の数字はあくまで推定なので、2〜3週間ほど体重の動きを見て、上の表の範囲に収まるように上乗せ量を調整するのが確実だ。
たんぱく質・脂質・炭水化物の配分は
Iraki らのレビューは、オフシーズンの栄養素の目安を次のように示している。
| 栄養素 | レビューの目安 | 体重70kgの場合 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 1日に体重1kgあたり1.6〜2.2g。1食0.40〜0.55g/kg を3〜6食に分ける | 1日112〜154g、1食28〜39g |
| 脂質 | 体重1kgあたり0.5〜1.5g | 35〜105g |
| 炭水化物 | 残りのカロリー。少なくとも3〜5g/kg を確保 | 210〜350g以上 |
たんぱく質については、49試験・1,863人のデータをまとめた2018年のメタ分析(Morton ら、British Journal of Sports Medicine)が、1日の総摂取量が約1.62g/kg を超えると、筋トレによる除脂肪量の増加はそれ以上大きくならなかったと報告している(詳しくはたんぱく質は体重1kgあたり何gが目安か)。国際スポーツ栄養学会(ISSN)の2017年の公式見解も、運動する人の多くには1日1.4〜2.0g/kg で十分としている。増量期はカロリーに余裕があるので、たんぱく質を極端に増やすより、炭水化物でトレーニングのエネルギーを確保するほうが理にかなう。
上乗せが小さいリーンバルクでは、間食やドリンクの「ちょっと多め」で予定を簡単に超える。食事を作り置きして量を決めておくと、上乗せ量のぶれを小さくしやすい。
リーンバルクの進め方と調整のしかた
研究の目安を、実際の手順に落とし込むと次のようになる。手順そのものは編集部の整理で、数値の根拠は上で紹介した論文だ。
- 2週間ほど、今の食事で体重がほぼ動かないことを確かめ、維持カロリーの見当をつける
- 維持カロリーに5〜10%ほどを上乗せして始める(Iraki らの目安の上限は20%)
- 週に3回以上、同じ条件(起床・排尿後など)で体重を測り、週の平均を記録する
- 2〜3週間の平均が「週0.25〜0.5%」より速ければ上乗せを100〜200kcal 減らし、遅ければ同じだけ増やす
- ウエストや体脂肪率も月に1回ほど記録し、体重の増加に対して腹回りが急に増えていないかを見る
Helms らの試験で、体重の増え方は皮下脂肪の増え方を予測した。体重計の数字は、脂肪が増えすぎていないかを知る最も手軽な目安でもある。筋トレの内容が伴っていなければ、上乗せしたエネルギーは筋肉に回りにくい。食事の調整と同時に、扱う重量や回数が少しずつ伸びているかも確認したい。
よくある質問
リーンバルクとクリーンバルクは同じ意味ですか?
重なる部分はあるが同じではない。リーンバルクは主に「上乗せの量とペース」を抑える考え方で、クリーンバルクは「食品の質」(加工度の低い食品を選ぶなど)を指して使われることが多い。どちらも正式な定義がある言葉ではない。
リーンバルクだと筋肉の増え方は遅くなりませんか?
紹介した2つの試験では、上乗せを大きくしても筋肉量(筋厚や除脂肪量)の増加ははっきり大きくならず、主に脂肪が増えた。Helms らの試験ではベンチプレスの1RMは15%上乗せ群がよく伸びたため、筋力の面では上乗せが大きいほうが有利な可能性は残る。
増量期は何か月続ければいいですか?
期間を決めた研究上の基準はない。体重の増え方を月1kg前後に抑えるなら、数か月単位で続けることになる。体脂肪が増えて動きにくさや腹回りが気になってきたら、減量や維持期に切り替える人が多い。
体重が増えないときは何を見直せばいいですか?
まず、食べた量を正確に記録できているかを確かめる。目分量の記録はずれやすい。2〜3週間の平均で体重が増えていなければ、上乗せを100〜200kcal ずつ増やす。
KINNIKU TIMESの視点
日本のトレーニーには、もともと体重が軽く「とにかく食べろ」と言われて増量を始める人が多い。しかし、上乗せを大きくしても筋肉が比例して増えるわけではない、というのが今回確かめた研究の共通点だ。体重70kgなら月1kg前後というペースは、SNS で見かける「1か月で5kg増量」のような話に比べると地味に見えるが、増えた体重の中身を考えると合理的である。
初心者には、まず「たんぱく質を体重1kgあたり1.6g前後とる」「週の平均体重を記録する」の2つから始めることを勧めたい。増量の目的は体重計の数字ではなく筋肉を増やすことであり、自分の筋肉量の変化はFFMI計算で追うこともできる。脂肪を増やしすぎずに筋肉を増やせれば、次の減量も短く済む。減量のペースについては減量のペースは1週間に何kgが目安かで解説している。
出典
- Iraki J, et al. Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review. Sports (Basel). 2019
- Helms ER, et al. Effect of Small and Large Energy Surpluses on Strength, Muscle, and Skinfold Thickness in Resistance-Trained Individuals. Sports Med Open. 2023
- Garthe I, et al. Effect of nutritional intervention on body composition and performance in elite athletes. Eur J Sport Sci. 2013
- Slater GJ, et al. Is an Energy Surplus Required to Maximize Skeletal Muscle Hypertrophy Associated With Resistance Training. Front Nutr. 2019
- Morton RW, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength. Br J Sports Med. 2018
- Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017
筋メシナビ
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