たんぱく質は体重1kgあたり何gが目安か。49試験・1,863人のメタ分析が示した「1.6g」
筋トレ中のたんぱく質補給の効果を49のランダム化比較試験から分析した研究で、除脂肪量の増加は1日体重1kgあたり約1.62gで頭打ちになる傾向が示された。広く引用される「1.6g」の根拠と、その数字の読み方を解説する。
筋トレと組み合わせたたんぱく質補給は、筋肉量と筋力の増加をわずかに後押しし、その上乗せ効果は1日あたり体重1kgにつき約1.62gで頭打ちになる傾向があった。カナダ・マクマスター大学のスチュアート・フィリップス教授らの研究チームが2018年、英国スポーツ医学誌『British Journal of Sports Medicine』に発表したメタ分析である。「体重1kgあたり1.6g」という目安は、現在も多くの解説で引用されている。
研究デザイン:49のランダム化比較試験を統合
研究チームは、健康な成人が6週間以上の筋トレを行い、たんぱく質を補給する群と補給しない群(または少ない群)を比べたランダム化比較試験を集めた。条件を満たした研究は49本、参加者は合計1,863人である。これらの結果を統合し、除脂肪量(体脂肪以外の重さ)、筋力、筋線維の太さなどへの影響を算出した。さらに、1日の総たんぱく質摂取量と効果の関係を調べ、どこで効果が頭打ちになるか(折れ点)を推定した。
結果:効果は「わずか」だが確かにあった
たんぱく質補給によって上乗せされた効果は以下のとおりである。
| 指標 | 補給による上乗せ(平均) |
|---|---|
| 除脂肪量 | +0.30kg |
| 最大挙上重量(1RM) | +2.49kg |
| 筋線維の断面積 | +310μm² |
| 効果が頭打ちになる摂取量 | 1.62g/kg/日(95%信頼区間:1.03〜2.20) |
除脂肪量への上乗せは、トレーニング経験者では0.75kgと大きく、年齢が上がるほど小さくなる傾向があった。一方で、筋トレそのものによる変化に比べると、補給による上乗せは控えめな大きさである。
研究の限界:「1.6g」は上限でも最低ラインでもない
注目すべきは、折れ点の95%信頼区間が1.03〜2.20gと幅広いことである。論文の著者らもこの点に触れ、より多くの人で効果を取りこぼさないためには、2.2g程度までの摂取が合理的な場合もあるとしている。つまり1.6gは「平均的にはこのあたりで頭打ちになる」という目安であり、全員にとっての正解値ではない。
また、対象研究は期間や対象者、トレーニング内容がさまざまで、減量中など摂取エネルギーが不足している状況は主な分析対象ではない。統合した研究の多くは比較的短期間であり、数年単位での効果は評価されていない。
KINNIKU TIMESの視点
実践的には、体重70kgの人なら1日約112g(70×1.6)が一つの目安になる。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品など普段の食事で届くなら、補助食品は必須ではない。届かない分を補う手段としてプロテインを使うのが、この研究の結果に沿った考え方である。
減量中やトレーニング歴が長い人は、信頼区間の上側である2g前後を意識してもよいだろう。ただし、腎臓病などの持病がある人や食事制限を受けている人は、摂取量を増やす前に医師や管理栄養士に相談してほしい。