プロテインで運動能力は上がる?75試験・1,206人のメタ分析、効果は「カロリー差」次第か
プロテイン補給は、75試験・アスリート1,206人のメタ分析で持久力に小さな上乗せ(SMD 0.21)がみられたが、有意な効果はすべて摂取カロリーをそろえていない試験によるものだった。最も良い結果は1日の総たんぱく質が体重1kgあたり約2gのときで、エビデンスの確実性は「低」〜「非常に低」と評価された。
プロテインを飲むと運動能力は上がるのか――75件のランダム化比較試験を統合した分析の答えは「効果はあるが限定的で、摂取カロリーの差が大きく影響している可能性がある」というものだった。Shiao Zhao氏らの研究チームが、アスリート1,206人を対象とした試験を統合したベイズ型マルチレベル・メタ分析を、国際スポーツ栄養学会誌(Journal of the International Society of Sports Nutrition)に2025年12月に発表した。

どんな研究か 対象は75試験・アスリート1,206人
研究チームは7つのデータベースから6,129件の文献を検索し、条件を満たした75件のランダム化比較試験(RCT)を分析に採用した。対象は各種競技の選手や愛好家で、男性916人、女性220人、性別不明70人と男性が大半を占める。
調べたのは大きく「運動パフォーマンス(持久力・筋力)」と「運動後の回復(グリコーゲンの再合成・疲労回復)」の2領域である。たんぱく質の種類はホエイが35件と最多だった。
プロテインで持久力と筋力はどれだけ変わる?
主な結果は次の通りである。効果の大きさは標準化平均差(SMD)で示され、0.2前後が「小さい」、0.5前後が「中程度」の目安とされる。
| 項目(比較) | 試験数・人数 | 効果量 SMD(95%区間) |
|---|---|---|
| 持久力(全体) | 64件・1,048人 | 0.21(0.07〜0.35) |
| 持久力(プロテイン vs プラセボ) | ― | 0.37(0.02〜0.71) |
| 持久力(プロテイン+糖質 vs プラセボ) | ― | 0.57(0.20〜0.93) |
| 筋力(全体) | 30件・548人 | 0.31(−0.01〜0.64)※有意差なし |
| 筋力(プロテイン vs プラセボ) | ― | 0.72(0.18〜1.27) |
| グリコーゲン再合成(全体) | 32件・425人 | 0.17(−0.01〜0.35)※有意差なし |
| 疲労回復(全体) | 43件・663人 | 0.16(−0.01〜0.33)※有意差なし |
たんぱく質の種類別では、持久力(0.28)と筋力(0.53)の両方で統計的に意味のある効果が確認されたのはホエイのみだった。ただしホエイ以外は試験数が少なく、「ホエイ以外は効かない」と結論づけられる段階ではない。
効果は「カロリーの差」が生んだ可能性
この論文で最も注目すべき点は、統計的に有意だった効果がすべて「プロテイン群と対照群で摂取エネルギーをそろえていない試験」から得られていたことである。つまり、たんぱく質そのものの働きではなく、プロテインの分だけ総カロリーが増えたことが成績を押し上げた可能性を否定できない。著者らも結論で「運動パフォーマンスと回復に対するプロテイン補給の効果は限定的とみられる」と述べている。
プロテインは1日何gが目安?
調整分析では、1日の総たんぱく質摂取量が体重1kgあたり2gの場合に、1.0gや1.5gより良好な結果が示された。サプリメントからの上乗せ量は体重1kgあたり約1g、補給期間は40〜65日で運動パフォーマンスへの効果が最も大きかった。年齢が高い競技者ほど反応が小さい傾向もみられた。
なお、筋肥大を目的とした研究では体重1kgあたり1.6g前後で効果が頭打ちになるとの分析もある(関連記事:たんぱく質は体重1kgあたり何gが目安か)。今回の「2g」はアスリートの運動能力と回復を対象にした数字である点に注意が必要だ。
この研究の限界
- エビデンスの確実性(GRADE評価)は、持久力が「低」、筋力・グリコーゲン再合成・疲労回復は「非常に低」とされた。
- 運動パフォーマンスの分析で出版バイアス(効果が出た研究ほど発表されやすい偏り)が検出された。
- 参加者の大半が男性で、女性への当てはめには慎重さが必要である。
よくある質問
プロテインを飲めば持久力や筋力は上がりますか?
75試験の統合では小〜中程度の効果がみられたが、有意な効果はすべてカロリーをそろえていない試験によるもので、たんぱく質自体の効果かどうかは不確かである。
どの種類のプロテインが良いですか?
持久力と筋力の両方で有意な効果が確認されたのはホエイだけだったが、他の種類は試験数が少なく優劣は判断できない。
アスリートは1日何gのたんぱく質をとればよいですか?
この分析では食事とサプリメントを合わせて体重1kgあたり約2gで最も良い結果だったが、エビデンスの確実性は低い。
KINNIKU TIMESの視点
プロテインは「飲めば能力が上がる魔法の粉」ではなく、食事で足りないたんぱく質とエネルギーを補う道具と考えるのが妥当だ。今回の分析は、効果の一部が単純なカロリー増加で説明できる可能性を示した。まず1日の総摂取カロリーと総たんぱく質量(体重1kgあたり1.6〜2g程度)を食事で確保し、足りない分をプロテインで補うのが現実的である。比較して選びたい場合はプロテインの価格比較も参考にしてほしい。
出典:Zhao S, et al. Journal of the International Society of Sports Nutrition 23(1)(2025年12月23日)/PubMed Central 全文