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ビタミンDサプリで運動能力は上がる?男性27人の二重盲検、21日で無酸素パワーは差なし

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
木の葉の間から差し込む日の光
SUMMARY|この記事の要約

ビタミンD3を1日1万IU(250μg)21日間飲んだ男性は血中濃度が約56%上がったが、30秒全力こぎの平均パワー・最大パワーは偽薬と差がなかった。一方で安静時の炎症性指標IL-6が9.4%下がるなど、炎症に関わる血液指標には変化がみられた。

ビタミンDを3週間補っても、短時間の全力運動のパワーは上がらなかった。ポーランドのグダニスク体育スポーツ大学などの研究チームが、日常的に運動する若い男性27人を対象に、ビタミンD3を1日1万IU(250μg)21日間摂る群と偽薬群を比べた二重盲検試験の結果を、2026年9月4日に学術誌『Frontiers in Physiology』で発表した。血中のビタミンD濃度は大きく上がった一方、30秒の全力こぎを2本行うテストの成績は変わらず、変化がみられたのは炎症に関わる血液指標だった。

ジムに並ぶエアロバイク
写真はイメージです(Unsplash)

どんな研究か?対象者と方法

対象は19〜25歳で、週2〜3回、1回45分以上の運動(球技・ジョギング・ジムなど)を習慣にしている男性。30人が参加し、脱落を除く27人が解析された。運動テストには、30秒間の全力ペダルこぎを30秒の休憩を挟んで2本行う「ウィンゲートテスト」を使い、補給の前後で成績と血液を比べた。

項目 内容
研究デザイン ランダム化二重盲検・偽薬対照試験
対象者 運動習慣のある男性27人(ビタミンD3群14人、偽薬群13人)
摂取量・期間 ビタミンD3 1日1万IU(植物油5mLに溶かしたもの)を21日間。偽薬群は植物油のみ
運動テスト 30秒全力こぎ×2本(間に30秒休憩)
採血 運動前・直後・3時間後・24時間後

ビタミンDの血中濃度はどれだけ上がった?

ビタミンDの体内量の目安となる血中25(OH)D濃度は、ビタミンD3群で27.72ng/mLから43.18ng/mLへ55.7%上昇した。偽薬群は25.35ng/mLから25.47ng/mLで、ほぼ変わらなかった。

無酸素パワー(瞬発力)は上がった?

1本目の全力こぎの成績は、どちらの群も補給前後で大きく変わらず、群の間に有意な差はなかった。

1本目の成績(体重1kgあたり) ビタミンD3群(前→後) 偽薬群(前→後)
平均パワー 7.85W→7.77W 7.62W→7.58W
最大パワー 10.26W→10.35W 10.11W→9.52W

炎症の指標はどう変わった?

差がみられたのは血液中の「サイトカイン」と呼ばれる炎症に関わる物質だった。

  • 安静時:ビタミンD3群で炎症を促すIL-1βが15.8%、IL-6が9.4%低下し、炎症を抑える方向に働くIL-10は17.2%上昇した。偽薬群ではいずれも有意な変化はなかった
  • 運動後:偽薬群ではIL-1βが運動直後に47.3%上がったが、ビタミンD3群では有意な上昇がなかった。24時間後のIL-1βは偽薬群のほうが82.3%高かった
  • IL-6は運動直後に両群とも上がり、群の間に差はなかった

同じビタミンDでも、骨折予防については大規模なメタ分析で効果がほぼ確認されていない(ビタミンD・カルシウムで骨折は防げる?69試験のメタ分析)。目的ごとに根拠を分けて見る必要がある。

この研究の限界は?

著者らは次の点を限界として挙げている。27人と小規模で、対象は若い男性のみ。食事の栄養素は客観的に記録していない。筋肉痛や筋力の戻りといった「回復の実感」に当たる指標は測っておらず、血液指標の変化が回復の早さにつながるかは分からない。参加者を元のビタミンD濃度で分けておらず、不足している人に限った効果も検証していない。また21日間という期間は、長期的な運動能力への影響をみるには短い可能性がある。

よくある質問

ビタミンDは1日どれくらい摂ればいい?

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の目安量は1日9.0μg、耐容上限量は100μgである。今回の試験の1日250μg(1万IU)は研究用の量で、上限を大きく超えるため自己判断でまねるべきではない。

ビタミンDを飲むと筋力やパワーは上がる?

この試験では、21日間の補給で30秒全力こぎの平均・最大パワーは上がらなかった。変化したのは炎症に関わる血液指標で、運動成績の向上は確認されていない。

ビタミンDで筋肉痛は早く治る?

この試験は筋肉痛や筋力の回復を測っていないため、分からない。血液指標の変化が体感の回復につながるかは今後の検証が必要である。

KINNIKU TIMESの視点

「ビタミンDで力が出る」という期待には、今回の結果は応えなかった。一方で、血中濃度はしっかり上がり、炎症に関わる指標は動いた。筋トレをする人にとっての現実的な結論は、ビタミンDを「パフォーマンスを上げる道具」ではなく「不足させないための栄養素」と捉えることだろう。日光を浴びる機会が減る秋冬や屋内中心の生活では、魚やきのこなど食事からの摂取を意識し、サプリを使う場合も耐容上限量の範囲に収めたい。回復を目的にした食品の研究では、タルトチェリーのように「筋力は早く戻るが筋肉痛は差なし」と結果が分かれた例もある(タルトチェリーの効果は?19試験のメタ分析)。血液指標と体感の回復は別物として見るのが賢明である。


出典:Grześkiewicz K, et al. Effects of 21-day vitamin D supplementation on sports performance and exercise-induced inflammation: a randomized double-blind trial. Frontiers in Physiology(2026年9月4日)/健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版)