NEATとは 運動以外の活動で使うカロリー、人による差と歩数・増やし方
NEAT(運動以外の日常の活動で使うエネルギー)とは何かを、Levine 1999の過食実験や2005年の姿勢の研究など論文で解説。座る・立つ・歩くの消費量の表、令和6年国民健康・栄養調査の歩数、身体活動ガイド2023の約8,000歩、増やし方をまとめた。
NEAT(非運動性活動熱産生)とは、睡眠・食事・スポーツのような運動以外の、日常のあらゆる活動で使うエネルギーのこと。通勤で歩く、立つ、家事をする、体を小刻みに動かすといった動作が含まれ、体格が同じ人どうしでも1日最大2,000kcal違うと報告されている。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
週に数回ジムに通っても、それ以外の時間をほとんど座って過ごせば、1日の消費カロリーは思ったほど増えない。逆に、運動習慣がなくても立ち仕事や徒歩移動が多い人は、多くのエネルギーを使っている。この差を説明する言葉がNEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)だ。本記事は、NEATを提唱した米メイヨー・クリニックのJames Levineらの研究をPubMedで確認し、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」と国民健康・栄養調査の歩数データと合わせて、人による差、歩数との関係、増やし方を整理した。
NEATとは何か 1日の消費カロリーの中での位置づけ
Levineの総説(Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism、2002年)は、NEATを「睡眠、食事、スポーツのような運動以外のすべての活動で使うエネルギー」と定義している。職場まで歩く、キーボードを打つ、庭仕事をする、農作業をする、そわそわと体を動かす(フィジェッティング)といった動作がすべて含まれる。ささいな動作でも代謝はかなり上がり、その積み重ねが1日のNEATになる。
1日の総エネルギー消費量(TDEE)は、基礎代謝、食後の熱産生、身体活動の3つに分けられる。身体活動のうち、筋トレやランニングなど意図的に行う運動を除いた部分がNEATに当たる。
| 1日の消費の内訳 | 中身 | NEATとの関係 |
|---|---|---|
| 基礎代謝 | 目覚めた状態で生きるために必要な最小限のエネルギー | 含まない |
| 食後の熱産生 | 食べたものの消化・吸収などで使うエネルギー | 含まない |
| 運動 | 筋トレ、ランニング、スポーツなど意図的な運動 | 含まない |
| 運動以外の活動 | 通勤・通学の歩行、家事、立ち仕事、姿勢の保持、そわそわした動き | これがNEAT |
総説はまた、NEATが個人の安静時以外のエネルギー消費の大部分を占めると述べ、農業や肉体労働に従事する人ではNEATが高く、豊かさや工業化はNEATを減らす方向に働くようだとしている。基礎代謝とTDEEの目安は基礎代謝の平均とTDEEの計算の記事で扱った。
NEATは人によってどれくらい違うのか
NEATの個人差は大きい。Levineの2007年の総説(Journal of Internal Medicine)は、職業や余暇の過ごし方の違いによって、同じくらいの体格の2人の間でNEATが1日2,000kcal違うことがあると述べている。2006年の総説(Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology)も、同じ体重の人でも活動量が大きく異なるため、NEATは人によって最大1日2,000kcal違うとしている。
Levine 1999:食べすぎても太りにくい人の正体
NEATが注目されるきっかけになったのが、Levineらが1999年にScienceに発表した研究だ。肥満ではない16人に、体重を維持できる量より1日1,000kcal多く8週間食べてもらい、エネルギーの蓄積と消費の変化を測った。
- 増えた1日の総エネルギー消費量のうち、3分の2はNEATの増加によるものだった
- 体脂肪の増え方には人によって10倍の差があり、その差はNEATの変化で説明できた
- NEATの増加は、食べすぎても脂肪がつきにくいかどうかを直接予測した(相関係数0.77)
著者らは、食べすぎたときにNEATが活発になって余分なエネルギーが消費され、体が太りにくく保たれる可能性があり、NEATが上がらない人は脂肪がつきやすいのかもしれないと考察している。「同じように食べているのに太る人と太らない人がいる」という日常の実感に、1つの説明を与えた研究だ。
Levine 2005:座っている時間が1日2時間違った
Levineらは2005年のScienceで、座りがちな生活の痩せ型10人と軽度肥満10人の姿勢と動きを、0.5秒ごとに10日間記録した。肥満の人は痩せ型の人より1日平均2時間長く座っていた。この姿勢の配分は、肥満の人が減量しても、痩せ型の人が体重を増やしても変わらず、著者らは生物学的に決まっている可能性を示した。肥満の人が痩せ型の人と同じような動き方をすれば、1日約350kcal多く消費できるかもしれないと推定している。
座る・立つ・歩くで消費カロリーはどれだけ変わるのか
NEATを構成する一つひとつの動作は、どれくらいエネルギーを使うのか。Levineらの2000年の研究(American Journal of Clinical Nutrition)は、24人(女性17人、男性7人、平均体重76kg)を対象に、軽いマスク型の間接熱量計で姿勢と動作ごとのエネルギー消費量を測った。仰向けで安静にしたときの1分当たり5.4kJ(約1.3kcal)を基準にした増加率は次のとおりだ。
| 姿勢・動作 | 仰向け安静からの増加 | 1時間当たりの目安(編集部試算) |
|---|---|---|
| 仰向けで安静 | 基準 | 約77kcal |
| 座ってじっとしている | +4% | 約81kcal |
| 立ってじっとしている | +13% | 約88kcal |
| 座ったまま体を動かす(そわそわ) | +54% | 約119kcal |
| 立ったまま体を動かす | +94% | 約150kcal |
| 時速1.6kmで歩く | +154% | 約197kcal |
| 時速3.2kmで歩く | +202% | 約234kcal |
| 時速4.8kmで歩く | +292% | 約304kcal |
1時間当たりの値は、論文の平均値(5.4kJ/分)と増加率から編集部が計算した平均体重76kgの人の目安で、体重や動き方で変わる。論文も、自分で選んだそわそわした動きのエネルギー消費には人による差が大きいとしている。それでも、ゆっくり歩くだけで安静時の2〜3倍のエネルギーを使うことは分かる。
立つだけではあまり増えない
「スタンディングデスクで痩せる」という話には注意が要る。Saeidifardらのシステマティック・レビューとメタ分析(European Journal of Preventive Cardiology、2018年)は、46研究・1,184人のデータから、立つことと座ることのエネルギー消費の差を1分当たり0.15kcal(95%信頼区間0.12〜0.17)と算出した。男性で0.19kcal、女性で0.1kcalだった。著者らは、体重65kgの人が1日6時間座る代わりに立つと1日54kcal多く消費し、食事が増えなければ1年で体脂肪約2.5kg分のエネルギーになると試算している。
1日54kcalは、6時間立ち続けてようやく得られる量だ。立つことには座りすぎを防ぐ意味があるが、消費を増やす効果の中心は、立った状態から歩き出すことや、体を動かし続けることにある。ただし、1年で体脂肪2.5kg分という単純計算は、体重の減少に伴う消費の減少を考えていない点にも注意したい(1kg=7200kcalは本当かを参照)。
NEATと歩数の関係 日本人は1日何歩歩いているか
NEATを日常で把握するいちばん身近な指標は歩数だ。厚生労働省の資料によると、令和6年国民健康・栄養調査で20歳以上の歩数の平均値は7,071歩(年齢調整値7,231歩)で、男性7,763歩、女性6,495歩だった。調査には三次元加速度センサー式の歩数計が使われている。
| 区分(令和6年国民健康・栄養調査) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 20歳以上の平均 | 7,763歩 | 6,495歩 |
| 20〜64歳の平均 | 8,564歩 | 7,287歩 |
| 65歳以上の平均 | 6,667歩 | 5,429歩 |
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は成人に対し、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うことを推奨し、これを1日約8,000歩以上に相当するとしている。60分の歩行が約6,000歩、3メッツ未満の家事などの生活活動が1日約2,000歩に相当し、合計で約8,000歩になるという計算だ。ガイドは、座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないよう注意することも推奨事項に含めている。平成25年の国民健康・栄養調査では、平日1日の総座位時間が8時間以上と答えた人が男性で38%、女性で33%いたと紹介している。
歩数と健康の関係については、15のコホート研究・4万7,471人を統合したPaluchらのメタ分析(Lancet Public Health、2022年)がある。1日の歩数が最も少ない群(中央値3,553歩)と比べ、総死亡のハザード比は5,801歩の群で0.60、7,842歩の群で0.55、10,901歩の群で0.47だった。60歳以上では1日6,000〜8,000歩まで、60歳未満では8,000〜10,000歩まで、歩数が増えるほど死亡リスクが下がっていた。座りっぱなしの時間と健康の関係は座りっぱなしとがん死亡の研究でも紹介している。
NEATを増やすにはどうすればよいか
Villablancaらの総説(Mayo Clinic Proceedings、2015年)は、そわそわした動き、歩くこと、立つことといったNEATの動作が、体重や活動レベルによっては基礎代謝に加えて1日最大2,000kcalの消費になりうると述べ、体を起こしていること、歩くこと、職場や余暇の環境をNEATが増えるように作り替えることを勧めている。研究の内容を踏まえた具体策は次のとおりだ。
| 方法 | 根拠となる研究・資料 | ポイント |
|---|---|---|
| 歩数を記録し、今より1,000〜2,000歩増やす | 身体活動・運動ガイド2023、Paluch 2022 | 成人の目安は1日約8,000歩以上 |
| 座る時間を区切って歩く | Levine 2005(座位時間の差が約2時間) | 電話は立って歩きながら、1駅歩く、階段を使う |
| 立って作業する時間を作る | Saeidifard 2018 | 立つだけの上乗せは小さい。歩行と組み合わせる |
| 家事・買い物を自分で動いて行う | 身体活動・運動ガイド2023 | 3メッツ未満の生活活動も1日約2,000歩分に相当 |
階段の利用は手軽な方法の1つで、健康面の研究は階段を上る習慣と心血管死のメタ分析にまとめた。
減量中はNEATが下がりやすい
Levineの2002年の総説は、NEATが過食で増え、食事制限で減るというエネルギーバランスへの反応を紹介している。減量中に「なんとなく動かなくなる」のは珍しいことではなく、計算どおりに体重が減らない原因の1つになりうる。減量中こそ歩数計やスマートフォンで歩数を記録し、意識して維持したい。停滞期の原因の見分け方は停滞期の記事で解説した。
よくある質問
NEATと運動はどちらが大事ですか
役割が違う。NEATは毎日の積み重ねで消費量の差を生み、筋トレは筋肉量の維持・増加という別の効果がある。身体活動・運動ガイド2023も、1日約8,000歩相当の身体活動と週2〜3日の筋力トレーニングを別々に推奨している。どちらか一方ではなく両方を続けるのがよい。
1日1万歩は必要ですか
Paluch 2022のメタ分析では、60歳未満で8,000〜10,000歩まで、60歳以上で6,000〜8,000歩まで死亡リスクの低下が続いた。日本のガイドの成人の目安は約8,000歩以上だ。1万歩にこだわるより、今の歩数から少しずつ増やすことが現実的である。
貧乏ゆすりのような動きでも効果はありますか
Levine 2000の測定では、座ったまま体を動かすと仰向け安静より平均54%多くエネルギーを使った。ただし動き方による個人差が大きく、ほかの人の迷惑にならない範囲でという前提もある。歩く時間を増やすほうが確実に消費は増える。
スマートウォッチの消費カロリーはNEATを正しく測れていますか
市販の機器の推定値には誤差があり、機種によっても違う。日々の比較には、推定のカロリーよりも歩数のほうが分かりやすい指標になる。最終的には、体重の推移で消費と摂取のバランスを確かめるのが確実だ。
KINNIKU TIMESの視点
筋トレをしている人ほど、「ジムで頑張ったから今日は十分」と考えて残りの時間を座って過ごしがちだ。しかしLevineらの研究が示したように、1日の消費の差を生むのは、多くの場合ジムの1時間ではなく、それ以外の15時間前後の過ごし方である。週3回の筋トレに加えて歩数を1日数千歩増やせば、1日の消費は着実に上乗せされる。
初心者への助言は単純だ。まず1週間、いつもどおりの生活で歩数を記録し、自分の平均を知る。次に、その平均より1日1,000〜2,000歩多いことを目標にする。日本人の平均(令和6年で男性7,763歩、女性6,495歩)やガイドの約8,000歩は、そのときの比較の物差しになる。減量中は特に、食事を減らすと同時に歩数が落ちていないかを確認してほしい。筋トレが減量に果たす役割は筋トレのダイエット効果、目標カロリーの配分はPFC計算で確かめられる。
出典
- Levine JA, et al. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science. 1999(PubMed)
- Levine JA, et al. Interindividual variation in posture allocation: possible role in human obesity. Science. 2005(PubMed)
- Levine JA. Non-exercise activity thermogenesis (NEAT). Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2002(PubMed)
- Levine JA. Nonexercise activity thermogenesis--liberating the life-force. J Intern Med. 2007(PubMed)
- Levine JA, et al. Non-exercise activity thermogenesis: the crouching tiger hidden dragon of societal weight gain. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2006(PubMed)
- Levine JA, et al. Energy expenditure of nonexercise activity. Am J Clin Nutr. 2000(PubMed)
- Saeidifard F, et al. Differences of energy expenditure while sitting versus standing. Eur J Prev Cardiol. 2018(PubMed)
- Villablanca PA, et al. Nonexercise activity thermogenesis in obesity management. Mayo Clin Proc. 2015(PubMed)
- Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health. 2022(PubMed)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版(PDF)
- 厚生労働省 健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料2-1「各目標項目のベースライン値(案)」令和6年国民健康・栄養調査の結果(PDF)
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