ボディリコンポジションとは 減量しながら筋肉は増える?条件とやり方
減量しながら筋肉を増やす「ボディリコンポジション」は可能か。Barakat らの2020年のレビュー、たんぱく質2.4g/kgで除脂肪量が1.2kg増えた試験、500kcalの不足で筋肉の増加が止まったメタ分析をもとに、起きやすい人とやり方をまとめた。
減量しながら筋肉を増やすボディリコンポジションは、研究上起こりうる。初心者や体脂肪が多い人で起きやすく、経験者でも可能とされる。条件は漸進的な筋トレ、十分なたんぱく質、小さめのカロリー不足だ。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
「筋肉をつけたいなら増量、脂肪を落としたいなら減量」と分けて考えるのが従来の常識だった。一方で、体重はあまり変わらないのに体脂肪が減り、筋肉が増える例は試験でも報告されている。本記事は、PubMed などで要旨を確かめた論文をもとに、ボディリコンポジション(以下、リコンプ)が起きる条件と、起きやすい人、具体的な進め方を整理する。高たんぱく食で維持カロリーと減量の両方で筋肉が増えた2026年の試験は高タンパクなら減量でも維持カロリーでも筋肉は増える、30人のRCTで確認で詳しく紹介している。
ボディリコンポジションとは何か
ボディリコンポジションは、筋肉(除脂肪量)を増やしながら体脂肪を減らすことを指す、現場発の言葉だ。2020年に Strength and Conditioning Journal に掲載された Barakat らのレビュー「Body recomposition: Can trained individuals build muscle and lose fat at the same time?」は、筋肉の増加と脂肪の減少が同時に起きることを、実践者がこう呼んできたと説明している。
体重だけを見ていると、リコンプはほとんど見えない。筋肉が1kg増えて脂肪が1kg減れば、体重は変わらないからだ。そのため、リコンプを確かめるには体組成の測定が欠かせない。研究では DEXA 法(二重エネルギーX線吸収測定法)や4成分モデルなどが使われる。家庭用の体組成計は手軽だが、体内の水分量の影響を受けやすく、小さな変化の判定には向かない。
Barakat らのレビューは、筋肉の増加と脂肪の減少を同時に起こすことは初心者や肥満の人にしか無理だという通説に対し、筋トレ経験者でもリコンプは起こりうると結論した。そのうえで重要な要素として、漸進的な筋トレ(扱う重量や回数を少しずつ伸ばすこと)と、根拠に基づく栄養戦略の2つを挙げ、睡眠などの要因にも触れている。
減量しながら筋肉は増えるのか:主な研究
リコンプが実際に観察された試験と、反対に減量が筋肉の増加を妨げることを示した分析を表にまとめた。
| 研究 | 対象・期間 | 条件 | 体組成の結果 |
|---|---|---|---|
| Longland ら(2016、American Journal of Clinical Nutrition) | 若い男性40人・4週間 | 必要量より約40%少ない食事+週6日の筋トレと高強度インターバル。たんぱく質1.2g/kg と2.4g/kg を比較 | 2.4g/kg 群は除脂肪量が1.2kg増え、脂肪は4.8kg減。1.2g/kg 群は除脂肪量0.1kg増、脂肪3.5kg減 |
| Garthe ら(2011、IJSNEM) | エリート選手24人 | 週に体重の0.7%(ゆっくり)と1.4%(速く)を目標に減量。週4回の筋トレ | ゆっくり群は除脂肪量が2.1%増え、速い群は変化なし(-0.2%) |
| Antonio ら(2015、JISSN) | 筋トレ経験者48人 | たんぱく質2.3g/kg と3.4g/kg。重い筋トレのプログラム | 除脂肪量は両群とも+1.5kg。3.4g/kg 群は脂肪量が1.7kg減り、体重はほぼ変わらず(-0.1kg) |
| Ribeiro ら(2022、MSSE) | 未経験の高齢女性130人・24週間 | 週3回の全身の筋トレ。普段のたんぱく質摂取量で3群に分けて解析 | 全群で骨格筋量が増え脂肪量が減少。たんぱく質が少ない群は筋量の増加が小さかった(2.3%対5.1〜5.4%) |
| Murphy ら(2022、Scand J Med Sci Sports) | エネルギー不足下で3週間以上筋トレをしたランダム化試験のメタ分析 | エネルギー不足あり/なしの比較とメタ回帰 | エネルギー不足で除脂肪量の増加は妨げられたが筋力の伸びは同等。1日約500kcal の不足で除脂肪量の増加が見られなくなった |
Longland らの試験は、約40%という大きなカロリー不足でも、たんぱく質を多くとり、強度の高い運動を毎日のように行えば、4週間で除脂肪量が増えうることを示した。ただし、若い男性が研究者の用意した食事をとり、週6日運動するという厳しく管理された条件であり、著者自身も「原理の証明」の試験と位置づけている。
一方で、Murphy らのメタ分析は、エネルギー不足が続くと筋肉の増え方は落ちると示した。リコンプは起こりうるが、減量幅を大きくするほど起きにくくなる、と理解するのが妥当だろう。Garthe らの試験で、ゆっくり減量した群だけ除脂肪量が増えたこととも合う。
リコンプが起きやすい人の条件は
研究の結果と Barakat らのレビューの整理から、リコンプが起きやすいのは次のような人だと考えられる。
| 起きやすい人 | 理由・根拠 |
|---|---|
| 筋トレを始めたばかりの人 | 筋肉の伸びしろが大きい。未経験の高齢女性130人の24週間の解析でも、全群で筋量増と脂肪減が同時に起きた(Ribeiro ら) |
| 体脂肪が多めの人 | 体に蓄えたエネルギーが多く、食事のカロリーを減らしても筋肉の材料と燃料を確保しやすいと考えられている |
| しばらく休んでいて再開した人 | 一度ついた筋肉は取り戻しやすいとされ、初心者に近い伸びしろがあると考えられる(編集部の整理。直接比べた試験は今回確認していない) |
| たんぱく質が足りていなかった人 | たんぱく質を増やした群で除脂肪量の増加が大きかった(Longland ら、Ribeiro ら) |
| 筋トレのやり方を見直した経験者 | Antonio らの試験では、経験者でも重いプログラムと高たんぱく食で脂肪減と除脂肪量増が同時に起きた |
反対に、すでに体脂肪が少なく、長年きちんと鍛えてきた上級者では、リコンプの幅は小さくなる。この場合は、増量期と減量期を分けたほうが効率がよいことが多い。どちらを選ぶかは、今の体脂肪率と目的で決めるのが現実的だ。体脂肪率ごとの見た目の目安は体脂肪率と見た目の関係(男性)で整理している。
ボディリコンポジションのやり方
1. カロリーは「小さめの不足」から「維持」まで
Murphy らのメタ回帰では、1日約500kcal の不足で除脂肪量が増えなくなった。リコンプを狙うなら、不足は500kcal より小さく抑えるか、維持カロリー前後にとどめるのが安全側の選択になる。体重で言えば、週に体重の0.5%程度までのゆるやかな減少、あるいはほぼ横ばいが目安だ(Garthe らの試験では週0.7%目標の群で除脂肪量が増えた)。
2. たんぱく質は体重1kgあたり1.6g以上
Barakat らは、リコンプの条件として十分なたんぱく質を挙げる。国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2026年10月に公表した減量食の公式見解は、筋トレと組み合わせた1日1.6〜2.2g/kg で筋肉の同化を最適化できる可能性があり、体脂肪が少ない筋トレ経験者がカロリー不足の状態にあるときは1.9〜3.2g/kg で除脂肪量の維持を最大化できるとしている。体重70kgなら1日112g以上が一つの目安だ。
3. 筋トレは漸進的に
リコンプの土台は筋トレだ。同じ重量・回数を繰り返すだけでなく、重量か回数を少しずつ伸ばす。Murphy らの分析で、エネルギー不足でも筋力の伸びは保たれていたので、減量中でも記録の更新を狙う意味はある。
4. 体重ではなく体組成と記録で判断する
リコンプ中は体重がほとんど動かないことがある。月に1回、同じ条件でウエストを測り、体組成計を使うなら測定条件をそろえる。写真や、扱う重量の記録も合わせて見ると変化が分かりやすい。
よくある質問
リコンプ中、体重が変わらないのは失敗ですか?
失敗とは限らない。筋肉が増えて脂肪が減れば、体重は横ばいになりうる。Antonio らの試験の高たんぱく群は、体重がほぼ変わらない(-0.1kg)まま脂肪量が1.7kg減り、除脂肪量が1.5kg増えた。ウエストや筋力の記録で判断したい。
リコンプと増量・減量を分けるのは、どちらが効率的ですか?
直接比べた決定的な研究はない。始めたばかりの人や体脂肪が多い人はリコンプの恩恵が大きく、体脂肪が少ない上級者は増量期と減量期を分けたほうが筋肉を増やしやすいと考えられる。
有酸素運動はしてもいいですか?
してよい。Longland らの試験は筋トレに高強度インターバルを組み合わせていた。筋トレと有酸素運動の両立については17のメタ分析を統合した記事で解説している。
家庭用の体組成計でリコンプは確認できますか?
大まかな傾向は追えるが、水分量で数字が動くため、1回ごとの小さな変化では判断しにくい。毎回同じ時間・同じ条件で測り、数週間の平均で見るのがよい。
KINNIKU TIMESの視点
リコンプは「楽して両方手に入る方法」ではなく、カロリー収支を小さく保ち、たんぱく質を十分にとり、筋トレを伸ばし続けるという地道な条件がそろったときに起きる現象だ。体重は標準的なのに体脂肪が多めで筋肉が少ない人にとって、大きく減量するよりも、維持カロリー付近で筋トレとたんぱく質を整えるリコンプは理にかなった選択肢になる。
初心者は、まず体重1kgあたり1.6gのたんぱく質と、週2〜3回の筋トレを3か月続け、体重ではなく腹回りと扱う重量の変化を見てほしい。目安の計算にはPFC計算が使える。体脂肪が少なく伸び悩んでいる経験者なら、リーンバルクで上乗せを小さくした増量を検討するとよい。
出典
- Barakat C, et al. Body recomposition: Can trained individuals build muscle and lose fat at the same time? Strength Cond J. 2020(書誌情報:BISp LIDA)
- Longland TM, et al. Higher compared with lower dietary protein during an energy deficit combined with intense exercise promotes greater lean mass gain and fat mass loss. Am J Clin Nutr. 2016
- Garthe I, et al. Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2011
- Antonio J, et al. A high protein diet (3.4 g/kg/d) combined with a heavy resistance training program improves body composition in healthy trained men and women. J Int Soc Sports Nutr. 2015
- Ribeiro AS, et al. Moderate and Higher Protein Intakes Promote Superior Body Recomposition in Older Women Performing Resistance Training. Med Sci Sports Exerc. 2022
- Murphy C, Koehler K. Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength. Scand J Med Sci Sports. 2022
- Aragon AA, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: diets for body weight reduction. J Int Soc Sports Nutr. 2026
筋メシナビ
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