THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 論文解説・新常識  › 記事
論文解説・新常識

階段を上る習慣で心血管死が39%低い 9研究・48万人のメタ分析

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 4分
コンクリートの階段を上るスニーカーの足元
SUMMARY|この記事の要約

日常的に階段を上る人は心血管病による死亡リスクが39%、すべての原因による死亡リスクが24%低かったことが、9研究・約48万人のメタ分析で示された。観察研究を含むため因果関係は証明されていないが、階段は座りすぎを減らす手軽な身体活動として注目される。

日常的に階段を上る人は、上らない人に比べて心血管病による死亡リスクが39%低かった。英イースト・アングリア大学(University of East Anglia)などの研究チームが、9件の研究・約48万人のデータをまとめたメタ分析を、国際誌「American Journal of Cardiovascular Drugs」に2026年8月13日付で発表した。すべての原因による死亡リスクも24%低かった。

コンクリートの階段を上る女性
写真はイメージです(Unsplash)

階段を上る習慣で死亡リスクはどれだけ下がる?

研究チームは、階段の上り下りを調べた研究をPubMedとEmbaseで2025年4月8日まで検索した。1,873件の文献から9件、計48万479人を分析対象とした。対象者は35〜84歳で、53%が女性。追跡期間の中央値は14年で、健康な人だけでなく心臓病の既往がある人も含まれている。

評価項目 統合した研究 相対リスク(95%信頼区間) リスクの差
心血管病による死亡 5件・45万5,619人 0.61(0.48〜0.79) 39%低い
すべての原因による死亡 同上 0.76(0.62〜0.94) 24%低い

論文によると、心筋梗塞や脳卒中、心不全といった病気の発症リスクの低さとも関連がみられた。

なぜ階段が注目されるのか

階段を上る動作は、体重を片脚ずつ持ち上げる運動であり、短時間でも心拍数が上がりやすい。筆頭著者のソフィー・パドック(Sophie Paddock)博士は、階段は自宅でも職場でも外出先でも日常に取り入れやすく、時間がない人に向いた選択肢だと述べている。

共著者のヴァシリオス・ヴァシリウ(Vassilios Vassiliou)教授も、階段を使うことは日常生活に身体活動を組み込む実用的な方法でありながら、見過ごされがちだと指摘している。

この研究の限界:因果関係は示せない

今回の分析には観察研究が含まれており、「階段を上ったから死亡リスクが下がった」という因果関係を証明したものではない。もともと体力があり健康な人ほど階段を使いやすい、という逆の関係が結果に影響している可能性もある。

また、1日に何段・何階分上ればよいかという「最適な量」はまだ分かっていない。研究チームは、今後はウェアラブル機器を使ってより正確に活動量を測る研究が必要だとしている。膝などの関節に不安がある人や、移動に制限がある人には向かない場合がある点も研究チームは認めている。

よくある質問

階段を上ると寿命は延びる?

階段を日常的に上る人はすべての原因による死亡リスクが24%低かったが、観察研究を含む分析のため寿命が延びると断定はできない。健康的な生活習慣の目印の一つと考えるのが妥当だ。

1日何階分上ればよい?

今回のメタ分析では最適な量は示されていない。研究チームも、今後の研究で適切な量を明らかにする必要があるとしている。

筋トレをしていれば階段は不要?

筋トレは週に数回の運動、階段は毎日の小さな身体活動であり、役割が異なる。両方を組み合わせることで、座っている時間を減らしやすくなる。

KINNIKU TIMESの視点

ジムでの筋トレが週に数時間でも、残りの時間を座って過ごせば活動量は大きく不足しうる。当メディアでも座りっぱなしの時間とがん死亡リスクの関係を取り上げたが、階段は「座りすぎ」を減らす最も手軽な手段の一つである。駅や職場でエスカレーターの代わりに階段を選ぶ、2〜3階ならエレベーターを使わないといった小さな選択から始めたい。筋トレの健康効果については約15万人を追跡したハーバード大の研究も参考になる。脚の筋力が上がれば階段も楽になり、日常の活動量も自然に増えるという好循環が期待できる。


出典:Paddock S ほか. Evaluating the Impact of Stair Climbing on Cardiovascular Risk Reduction: A Systematic Review and Meta-analysis. American Journal of Cardiovascular Drugs(2026年8月13日オンライン公開)/ScienceDaily(2026年8月14日)