握力と死亡リスクの関係は?63〜99歳女性5,472人を8年追跡、7kgごとに12%低下
63〜99歳の女性5,472人を約8年追跡した米国の研究で、握力が7kg高いごとに死亡リスクは平均12%低く、椅子立ち上がりテストが6秒速いごとに4%低かった。観察研究のため因果関係は示されていないが、有酸素運動の目安に届かない女性でも同様の関連がみられた。
握力が7kg強い高齢女性は、死亡リスクが平均12%低かった。米ニューヨーク州立大学バッファロー校のマイケル・J・ラモンテ(Michael J. LaMonte)研究教授らが、63〜99歳の女性5,472人を約8年間追跡した研究を2026年2月13日、米医学誌『JAMA Network Open』に発表した。握力と「椅子からの立ち上がりテスト」という、道具がほとんど要らない2つの筋力測定が、高齢女性の死亡リスクと関連していたという。
どんな研究か?対象者と測定方法
対象は米国の63〜99歳の女性5,472人である。研究開始時に握力と椅子立ち上がりテストを測定し、その後約8年間の死亡を追跡する前向きコホート研究(観察研究)として分析した。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 63〜99歳の女性5,472人 |
| 研究デザイン | 前向きコホート研究(観察研究) |
| 追跡期間 | 約8年 |
| 測定1 | 握力(握力計で測定) |
| 測定2 | 椅子立ち上がりテスト(腕を使わずに5回立ち座りする時間) |
| 掲載誌 | JAMA Network Open(2026年2月13日) |
握力が何kg違うと死亡リスクはどう変わる?
主な結果は次の2点である。
- 握力が7kg高いごとに、死亡リスクは平均12%低かった。
- 椅子立ち上がりテストが6秒速いごとに、死亡リスクは4%低かった。
研究チームは、身体活動量、座っている時間、歩く速さ、炎症の指標であるC反応性たんぱく(CRP)などを統計的に調整しても、これらの関連は残ったと報告している。さらに、成人向けの目安とされる「中強度の有酸素運動を週150分」に届いていない女性でも、筋力が高いほど死亡リスクが低いという関連がみられた。
なぜ筋力が大事なのか?研究者のコメント
ラモンテ氏は大学の発表で「椅子から立ち上がって動き回れなくなると、困ったことになる」と述べている。また、立ち上がるだけの筋力がなければ、65歳以上の米国人で最も多い余暇活動であるウォーキングのような有酸素運動も難しくなると指摘した。大学は、筋力を鍛える手段としてダンベルやマシンのほか、壁を使った腕立て伏せや膝の曲げ伸ばしなどの自重運動も挙げている。
女性の筋トレ効果については、年齢や閉経の前後で筋力の伸びに差がなかったとするメタ分析も出ている(閉経後も筋トレ効果は同じ?女性4,019人のメタ分析)。
研究の限界:因果関係は証明されていない
この研究は観察研究であり、「握力を鍛えれば寿命が延びる」という因果関係を示したものではない。もともと健康状態のよい人ほど筋力が高い、という可能性を完全には排除できない。また、対象は米国の高齢女性に限られ、男性や若い世代、日本人にそのまま当てはまるかは分からない。
よくある質問
握力は死亡リスクと関係がある?
63〜99歳の女性5,472人の研究では、握力が7kg高いごとに死亡リスクが平均12%低かった。ただし観察研究のため、因果関係までは分からない。
椅子立ち上がりテストとは?
椅子に座った状態から、腕を使わずに5回立ち座りをする時間を測るテストである。この研究では6秒速いごとに死亡リスクが4%低かった。
有酸素運動をしていれば筋トレは不要?
不要とは言えない。この研究では、有酸素運動の目安に届かない女性でも筋力の高さと死亡リスクの低さに関連がみられ、筋力そのものが独立した指標になりうることが示された。
KINNIKU TIMESの視点
握力と椅子立ち上がりは、自宅でも測れる手軽な「筋力の健康診断」である。とくに親世代の運動を考えるときは、歩くことに加えて、スクワットや椅子からの立ち座りといった脚の筋トレを習慣にしたい。男女を対象にした別の研究では、週90〜120分の筋トレで死亡リスクが13%低かったとする報告もある(筋トレ週90〜120分で死亡リスク13%低下)。持病がある人や久しぶりに運動する人は、医師などに相談してから始めるのが安全である。
出典:University at Buffalo(2026年2月18日)/LaMonte MJ, et al. Muscular Strength and Mortality in Women Aged 63 to 99 Years. JAMA Network Open(2026)/ScienceDaily(2026年5月11日)