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握力の鍛え方 前腕を強くする種目と回数・メニューを研究とともに解説

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 9分
懸垂バーにぶら下がる男性の後ろ姿
SUMMARY|この記事の要約

握る力の多くは前腕の筋肉が生む。保持系と手首の種目の正しいやり方、回数・時間の目安、ストラップとの使い分けを、握力と死亡リスクを調べた大規模研究とあわせて解説する。

握力と前腕は、重いものを「握って保持する」種目(デッドハング、ファーマーズウォーク)と、手首を曲げ伸ばしする種目(リストカール、リバースリストカール)を組み合わせて鍛えるのが基本である。週2〜3回、保持系は20〜45秒、手首の種目は12〜20回を2〜3セットが目安になる。握力は全身の筋力の目安として健康研究でも使われる指標であり、5kg低いごとに死亡リスクが高い傾向が大規模研究で報告されている。

握力と前腕の筋肉はどう関係しているのか?

指を握る力の多くは、手のひらではなく前腕の筋肉が生み出している。前腕の手のひら側には指と手首を曲げる屈筋群、手の甲側には手首と指を伸ばす伸筋群があり、それぞれの腱が手首を通って指につながっている。握力を鍛えることは、そのまま前腕の筋肉を鍛えることでもある。

握力にはいくつかの種類がある。ものをつぶすように握る力(クラッシュグリップ)、重いものをぶら下げて保持する力(サポートグリップ)、指先でつまむ力(ピンチグリップ)である。デッドリフトや懸垂で手が先に疲れる、という悩みの多くはサポートグリップの問題であり、種目選びもこの区別で考えると分かりやすい。

握力が弱いと何が問題なのか?研究で分かっていること

握力は全身の筋力を手軽に測れる指標として、多くの研究で使われている。Leong らが2015年に Lancet に発表した PURE 研究(17か国、約14万人、追跡期間の中央値4年)では、握力が5kg低いごとに全死亡のリスクが1.16倍、心血管死のリスクが1.17倍高かった。英国の約50万人を対象にした Celis-Morales らの2018年の研究でも、握力5kg低下あたりの全死亡のハザード比は女性1.20、男性1.16だった。

アジアのサルコペニア診断基準(AWGS 2019)では、握力が男性28kg未満、女性18kg未満を「筋力低下」の目安としている。ただし、これらは観察研究であり、握力そのものを鍛えれば寿命が延びると示したものではない。握力は「全身の筋力や健康状態を映す鏡」と捉え、前腕だけでなく全身の筋トレを続けることが大切である。高齢女性のデータは握力と死亡リスクの関係でも紹介している。

握力を鍛える種目のやり方は?

まずは保持系の種目から始めるのが効率的である。重さを持つだけなので覚えやすく、デッドリフトや懸垂など引く種目にもつながりやすい。

デッドハング(Dead Hang)

  1. 懸垂バーを肩幅で、親指まで巻きつけてしっかり握る。
  2. 足を床から離し、肩をすくめずに腕を伸ばしてぶら下がる。
  3. 20〜45秒を目標に保持する。難しければ足先を台に乗せて体重の一部を逃がす。
  4. 余裕が出たら時間を延ばすか、片手や太いタオルを巻いたバーで行う。

ファーマーズウォーク(Farmer's Walk)

  1. 重めのダンベルかケトルベルを左右に1つずつ持つ。
  2. 胸を張り、肩をすくめずに背すじを伸ばす。
  3. 小さめの歩幅で20〜30mほど歩くか、30〜45秒その場で保持する。
  4. 手が開きそうになったら、落とす前に床に置く。

リストカール(Wrist Curl)とリバースリストカール

  1. ベンチに座り、前腕を太ももに乗せて手首から先を膝の外に出す。
  2. 手のひらを上に向けて軽いダンベルを持ち、手首を曲げて巻き上げる(リストカール)。
  3. 2秒かけて下ろし、指先まで軽く開いてから再び握り込む。
  4. 手のひらを下に向けて同じ動作を行うと、手の甲側の伸筋群を鍛えるリバースリストカールになる。

よくある間違いとチェックポイントは?

  • 重すぎる手首の種目:手首は小さな関節で、反動をつけると痛めやすい。12〜20回できる軽めの重さで行う。
  • 屈筋ばかり鍛える:握る種目に偏ると手の甲側とのバランスが崩れやすい。リバースリストカールも加える。
  • 肩がすくむ:デッドハングやファーマーズウォークで肩が耳に近づくと、首や肩に負担がかかる。
  • 毎日限界まで追い込む:前腕もほかの筋肉と同じく回復の時間が必要である。肘の内側や外側に痛みが出たら頻度と量を減らす。
  • 補助具を一切使わない、あるいは常に使う:両極端は避けたい。下の項目を参考に使い分ける。

リストストラップは握力を弱くする?使い分けの考え方

ストラップは「背中や脚を鍛える日」に握力が先に尽きるのを防ぐ道具であり、握力を鍛える日とは目的が違う。研究では、ストラップを使うと引く力の最大値が約22〜27%高くなったと報告されている(リフティングストラップの効果)。握力の強い柔道家でも最大筋力が伸びたという試験もある(ストラップと柔道家の試験)。

実践では、ウォームアップや軽いセットは素手で行って握力も使い、重いメインセットだけストラップを使う。そのうえで週2〜3回、この記事の握力種目を別に入れれば、背中や脚への負荷と握力の強化を両立しやすい。

何回・何セットが目安?初心者・中級者のメニュー例

初心者は保持系1種目と手首の種目1〜2種目を、週2〜3回、ほかの筋トレの最後に加える形で始めるとよい。厚生労働省の運動ガイド2023は筋トレを週2〜3日推奨しており、米国スポーツ医学会(ACSM)の2009年の指針は、筋持久力を狙う場合に1RMの40〜60%の軽〜中程度の負荷で15回を超える回数、90秒未満の短い休憩を勧めている。手首の種目はこの考え方に近い設定である。

レベル 種目 回数・時間 セット 休憩
初心者 デッドハング(足を台に乗せてもよい) 15〜30秒 2〜3 60〜90秒
初心者 リストカール 15〜20回 2 60秒
初心者 リバースリストカール 15〜20回 2 60秒
中級者 ファーマーズウォーク 20〜30mまたは30〜45秒 3〜4 90〜120秒
中級者 デッドハング(片手交互またはタオル) 20〜40秒 3 90秒
中級者 リストカール/リバースリストカール 12〜15回 各3 60秒

前腕は懸垂やデッドリフトなど引く種目でも使われるため、背中の日の後半に入れると組みやすい。メニュー全体の組み方は分割法の組み方を参考にしてほしい。下半身や体幹と合わせて全身を鍛える場合は、体幹トレーニングのやり方やお尻の筋トレメニューも組み合わせるとよい。

安全に行うための注意点は?

痛みを我慢して続けないことが前提である。関節や筋肉に鋭い痛み・しびれが出た場合はその種目を中止し、持病(高血圧、心疾患、腰や膝の既往など)がある人や痛みが続く人は、始める前に医師に相談してほしい。トレーニング中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまい、動悸が出たときはただちに中止し、症状が治まらなければ医療機関を受診する。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、血圧の急な上昇を抑えるために息をこらえないよう呼びかけている。重さを持ち上げるときに息を吐き、下ろすときに吸うリズムを基本にするとよい。

よくある質問

握力の平均はどのくらい?

年齢や性別で大きく異なる。目安の1つとして、アジアのサルコペニア基準(AWGS 2019)は男性28kg未満、女性18kg未満を筋力低下としている。測定は握力計で左右それぞれ行い、高い方の値を見ることが多い。

ハンドグリッパーだけで握力は鍛えられる?

ハンドグリッパーは「つぶす力」を鍛えやすい一方、重いものを保持する力や手首の力は鍛えにくい。デッドハングやファーマーズウォーク、リストカールと組み合わせる方がバランスよく鍛えられる。

前腕を太くするにはどうすればよい?

前腕も他の筋肉と同じく、適切な負荷で限界近くまで行い、少しずつ重さや回数を増やすことが基本である。手首の曲げ伸ばしに加え、ハンマーカールのように親指を上にして肘を曲げる種目も前腕の外側に負荷がかかる。

握力を鍛えると長生きできる?

握力が高い人ほど死亡リスクが低い傾向は大規模研究で示されているが、観察研究であり、握力を鍛えたこと自体が寿命を延ばすとは証明されていない。握力は全身の筋力の目安と考え、全身の筋トレを続けることが大切である。

肘の内側が痛くなったら?

握る動作や手首を曲げる動作の繰り返しで肘に痛みが出ることがある。痛む種目は中止し、数日休んでも痛みが続く場合や悪化する場合は医師に相談してほしい。

KINNIKU TIMESの視点

握力は手のひらではなく前腕の力であり、「保持する」「手首を動かす」という2種類の種目で鍛えると分かりやすい。大規模研究では握力の低さと死亡リスクの関連が示されているが、これは全身の筋力を映す指標としての意味が大きい。前腕だけを特別に鍛えるより、全身の筋トレの最後に保持系と手首の種目を数セット足す方が続けやすい。ストラップは重いセットで背中や脚を鍛えるための道具として、握力トレーニングと役割を分けて使えばよい。


出典:Leong DP, et al. Prognostic value of grip strength: findings from the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study. Lancet. 2015/Celis-Morales CA, et al. Associations of grip strength with cardiovascular, respiratory, and cancer outcomes and all cause mortality. BMJ. 2018/Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020/American College of Sports Medicine. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて

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