リフティングストラップの効果は?30人の測定で引く力の最大値が約22〜27%高く
リフティングストラップを使うと、太もも中ほどの高さで固定したバーを引く力の最大値が約22〜27%高くなった。台湾の研究チームが柔道選手と筋トレ経験者の男子30人で測定し、2026年9月3日に『PLOS ONE』で報告した。
リフティングストラップを使うと、全身で引く力の最大値が約22〜27%高くなることが、台湾の研究チームの測定で示された。国立宜蘭大学と国立台湾体育運動大学の研究者らが、柔道の黒帯選手15人と筋トレ経験者15人の男子大学生計30人を対象に、ストラップの有無で「アイソメトリック・ミッドサイ・プル(IMTP)」の測定値を比べた。結果は2026年9月3日、オープンアクセス誌『PLOS ONE』に掲載された。

IMTPとは?どんな方法で比べたのか
IMTPは、太ももの中ほどの高さで固定したバーを全力で引き上げ、足元のフォースプレート(床反力計)で力を測る方法である。バーは動かないため、デッドリフトの引き始めに近い姿勢で全身の最大筋力を測れる。研究チームは参加者ごとにストラップあり・なしの両条件を無作為な順番で実施し、それぞれ4回の全力試技を行った。使用したストラップはゴム素材で幅約5cmのものである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 男子大学生30人(柔道初段の黒帯選手15人、筋トレ歴6カ月以上15人) |
| 平均年齢 | 柔道群22.06歳、筋トレ群20.06歳 |
| 方法 | ストラップあり・なしでIMTPを測定(順番は無作為) |
| 主な指標 | 最大筋力、力の立ち上がり速度(RFD)、力積 |
ストラップでどれだけ力が上がったのか
体重あたりの最大筋力は、柔道群でストラップなし3.30に対しストラップあり4.01、筋トレ群で2.05に対し2.60だった。編集部が平均値から計算すると、上昇率はそれぞれ約21.5%と約26.8%になる。2元配置分散分析では、ストラップ条件の主効果が最大筋力、引き始め250ミリ秒時点の力、RFD、1秒間の力積で有意だった。一方、5秒間の力積は有意差に届かなかった(p=0.07)。
- 最大筋力(体重比):柔道群 3.30→4.01、筋トレ群 2.05→2.60
- 250ミリ秒時点の力(体重比):柔道群 2.36→3.08、筋トレ群 1.64→2.25
- グループとストラップ条件の交互作用:いずれの指標も有意差なし
握力の強い柔道選手でも効果があったのはなぜか
利き手の握力は柔道群が平均51.31kg、筋トレ群が44.65kgで、柔道群が有意に強かった。それでもストラップによる向上は両群でみられ、群による違いは統計的に認められなかった。著者らは、握力が全身で発揮できる力の上限を決める要因になっている可能性を指摘している。握力の重要性については、握力と死亡リスクを調べた研究の記事も参考になる。
研究の限界は?
対象は若い男性30人と小規模で、測定も1回のみである。ストラップを長期間使った場合の筋力や筋肥大への影響は調べていない。IMTPは静止した姿勢での測定のため、実際のデッドリフトや柔道の動きにそのまま当てはまるとは限らない。筋電図の測定もなく、神経や筋肉のどの仕組みで力が増えたのかは不明である。
よくある質問
ストラップを使うと筋力は伸びなくなりますか?
今回の研究は1回の測定で「発揮できる力」を比べたもので、長期的な筋力の伸びへの影響は分からない。
握力が強い人にもストラップは意味がありますか?
握力が平均51kgの柔道選手でも最大筋力は約21.5%高く、握力の強い人でも効果がみられた。
筋力テストのときはストラップを使うべきですか?
著者らは、ストラップの有無で結果が変わるため、測定ごとに条件をそろえるべきだとしている。
KINNIKU TIMESの視点
引く種目で「背中より先に握力が尽きる」と感じる人にとって、ストラップは狙った筋肉に負荷を集中させる道具になり得る。ただし今回わかったのは一時的に出せる力の差であり、握力そのものの強化は別に取り組む必要がある。メインセットはストラップを使い、アップや軽めのセットは素手で握るなど、目的に応じて使い分けるのが現実的である。記録を比べるときは、同じ条件で測ることも忘れないようにしたい。高重量の引きの記録についてはデッドリフト世界記録511kgの記事も参照してほしい。