腹筋ローラーのやり方 初心者が腰を痛めない手順と回数・段階の上げ方を研究で解説
腹筋ローラーは、ひざつきでおなかを固め、腰を反らさない範囲だけ転がすのが基本。初心者が腰を痛めない手順、よくある間違い、回数とセット数、段階の上げ方を研究で整理した。
腹筋ローラーの正しいやり方は、ひざをついた姿勢でおなかを固め、腰を反らさずに転がせる範囲だけ前へ伸ばし、おなかの力で戻ってくる動きである。初心者がいきなり立ったまま行うと腰を反らせて痛めやすいため、ひざつきで前方の壁に当てて止める方法から始めるのが安全である。目安は5〜10回×2〜3セットを週2〜3回で、腰が反らない範囲を少しずつ広げていく。
腹筋ローラーで鍛えられる筋肉は?
腹筋ローラー(アブローラー、英語ではロールアウト Rollout と呼ぶ動き)で主に使うのは、おなかの前の腹直筋と、わき腹の外腹斜筋・内腹斜筋である。体が前へ伸びていくのを、おなかの筋肉が「反らないように」止めながら支えるため、体を丸めるクランチとは使い方が異なる。腕を前に伸ばした姿勢を保つため、背中の広背筋や肩、胸、腕の筋肉も働く。
米国のEscamillaらによる2010年の研究(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy、18人)では、バランスボールの上で前腕を転がすロールアウトは、腹直筋上部で最大筋力の63%、下部で53%、外腹斜筋と内腹斜筋で46%の活動を示し、クランチを含む多くの種目より高かった。一方、腰の筋肉は10%未満、太ももの前の大腿直筋は6〜10%と低く、おなかに集中して負荷がかかる動きであることが分かる。腹筋の種目全体の選び方は腹筋の鍛え方で解説している。
腹筋ローラーの正しいやり方は?
正しいやり方は、ひざつきの姿勢で「おなかを固める→腰を反らさず伸ばす→おなかで引き戻す」の順に行うことである。最初はひざの下にタオルやマットを敷く。
- ひざをついて構える:床にひざをつき、ひざの真下より少し前にローラーを置いて、肩の真下で両手で握る。腕はまっすぐ伸ばす。
- 骨盤を少し後ろへ傾ける:お尻を軽く締め、おへそを背骨に近づけるように、腰の反りを消す。背中はやや丸めた状態でよい。
- 息を吸っておなかを固める:おなか周り全体に力を入れ、この形を最後まで崩さない。
- 前へ転がす:腕を伸ばしたまま、肩から先へ体を送るようにゆっくりローラーを前へ転がす。股関節も伸びていき、ひざから肩までが斜めの一直線に近づく。
- 腰が反る手前で止める:腰が落ちて反りそうになる手前が、その日の限界の位置である。無理に床まで伸ばさない。
- おなかの力で引き戻す:みぞおちを丸めるようにおなかに力を入れ、ローラーを手前へ引き戻す。お尻を先に後ろへ引いて戻らないようにする。
- 息を吐きながら元の位置へ:構えの位置まで戻ったら、もう一度おなかを固め直して次の回に入る。
前に転がしすぎるのが不安な人は、壁から1m前後の位置でひざをつき、ローラーが壁に当たって止まるようにすると、伸ばす距離を一定に保てる。距離を少しずつ遠くしていけば、それが負荷を上げる段階になる。
初心者がやりがちな間違いは?
最も多い間違いは、腰を反らせたまま伸ばすことである。次の項目を1回ごとに確かめるとよい。
- 腰が反る・おなかが落ちる:おなかの力が抜けて腰で支えている合図。伸ばす距離を短くする。
- お尻が上がったまま動く:股関節を曲げたまま腕だけ動かすと、おなかへの負荷が小さくなる。前へ伸びるにつれて股関節も伸ばす。
- 腕を曲げる:ひじを曲げて引き戻すと腕の運動になる。腕は伸ばしたまま、おなかで戻す。
- 勢いで転がす:速く転がすと止められなくなり、顔から床へ倒れやすい。伸ばす局面は2〜3秒かける。
- 首を反らして前を見る:顔を上げると腰も反りやすい。目線は斜め下の床に置く。
- いきなり立ったまま行う:立ち姿勢のロールアウトは上級者向けである。ひざつきで床近くまで制御できるようになってから挑戦する。
何回・何セットが目安?
初心者は、腰が反らない範囲で5〜10回×2〜3セットを週2〜3回行うのが目安である。回数をこなせない段階では、伸ばす距離を短くするか、壁で止める方法を使う。10回を3セット正しくできるようになったら、距離を伸ばす、戻る前に1〜2秒止める、と段階を上げていく。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2〜3回) | プランク(ひじつき) | 20〜30秒 | 2 | 60秒 |
| 初心者(週2〜3回) | ひざつきロールアウト(壁で止める) | 5〜10回 | 2〜3 | 60〜90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | ひざつきロールアウト(床近くまで) | 8〜12回 | 3 | 90秒 |
| 中級者(週2〜3回) | ひざつきロールアウト(伸ばした位置で2秒止める) | 5〜8回 | 3 | 90秒 |
| 上級者 | 立ったままのロールアウト(壁で止める) | 3〜6回 | 3 | 2分 |
腹筋は毎日行わなければならないものではない。ほかの筋肉と同じく、負荷をかけた日と休む日を組み合わせればよい。おなかを丸める種目と組み合わせるならクランチのやり方、下腹部を狙うならレッグレイズのやり方も合わせて読みたい。
クランチやプランクとどう違う?
クランチは体を丸めて腹直筋を縮める動き、プランクは姿勢を止めて体幹を支える動きであり、腹筋ローラーはその中間で「伸ばされながら反らないように耐える」動きである。Escamillaらの2006年の研究(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy、14人)では、市販の腹筋器具7種類とクランチ、ひざを曲げた上体起こしを比べたところ、車輪で前後に滑らせるタイプの器具は、腹直筋上部・下部と腹斜筋の活動がクランチと並んで最も高い部類に入り、腰の筋肉や大腿直筋の活動は低く抑えられていた。同じく2006年のEscamillaらの別の研究(Physical Therapy、21人)でも、車輪を使うロールアウトは腹直筋、腹斜筋、広背筋の活動が最も高い種目の一つだった。
プランクとの関係では、スペインのCalatayudらによる2017年の研究(American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation、大学生20人)が、ロールアウトの姿勢で止めるプランクなど8種類を比べ、吊り具を使ったロールアウト姿勢のプランクで腹直筋下部の活動が最も大きかったと報告した。プランクで姿勢を保てるようになったら、ロールアウトへ進むという段階づけは理にかなっている。プランクのやり方はプランクの効果と時間の目安、体幹全体の考え方は体幹トレーニングの効果とやり方で解説している。
腹筋ローラーでおなかは割れる?
腹筋ローラーで腹筋は鍛えられるが、おなかの脂肪がどれだけ落ちるかは、食事を含めた体全体のエネルギー収支で決まる。特定の部位を鍛えてその部分の脂肪だけを落とす「部分やせ」は、研究でほとんど支持されていない。詳しくは部分やせの効果を検証した記事を参照したい。腹筋の形を見せたい場合は、腹筋ローラーで筋肉を育てつつ、食事と全身の運動で体脂肪を減らすことが前提になる。
安全に行うための注意点は?
- ひざの下にマットやタオルを敷き、滑りにくい床で行う。ローラーの車輪がぐらつく場合は使わない。
- 腰に痛みが出たら中止する。腰痛がある人、出産後まもない人、おなかや腰の手術を受けた人は、始める前に医師に相談する。
- 伸ばした位置で息を止め続けない。息を止めて強く力むと血圧が上がりやすいため、高血圧の人は特に注意する。
- 運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休む。
床でできる体幹の種目としては、自重トレのチームがまとめたデッドバグのやり方も、腰を反らさずにおなかを固める練習として相性がよい。自宅の器具を増やすならトレーニングチューブの筋トレメニュー、全身の連動を鍛えるならケトルベルスイングのやり方もある。
よくある質問
腹筋ローラーは初心者でもできる?
ひざをついた姿勢で、腰が反らない範囲だけ転がす方法なら初心者でも始められる。前方の壁に当てて止めると伸ばす距離を一定にでき、安全に練習できる。立ったまま行うのは、ひざつきで床近くまで制御できるようになってからでよい。
腹筋ローラーで腰が痛くなるのはなぜ?
おなかの力が抜けて腰が反った状態で伸ばしていることが多い。伸ばす距離を短くし、骨盤を少し後ろへ傾けておなかを固めてから行う。痛みが続く場合は中止して医師に相談する。
毎日やってもいい?
毎日行う必要はなく、週2〜3回が目安である。筋肉痛が残っている日や、腰に張りがある日は休む。回数を増やすより、腰を反らさずに伸ばせる距離を少しずつ広げることを優先する。
1回もできない場合はどうする?
まずひじつきのプランクで20〜30秒姿勢を保てるようにする。次に、壁の近くでひざをつき、短い距離だけ転がしてすぐ壁で止める方法から始め、距離を少しずつ遠くしていく。
腹筋ローラーだけで腹筋は割れる?
腹筋ローラーで腹筋は鍛えられるが、おなかの脂肪の量は食事を含めた体全体の収支で決まる。特定の部位だけ脂肪を落とす部分やせは研究でほとんど支持されていないため、食事の管理と全身の運動を組み合わせることが前提になる。
KINNIKU TIMESの視点
腹筋ローラーは、おなかの筋肉を大きく働かせられる一方、腰を反らせたまま行うと負担が腰に移りやすい種目である。ひざつき、壁で止める、腰が反る手前で止める、という3つの約束を守り、伸ばせる距離を少しずつ広げることが上達の道筋になる。回数を競うより、毎回同じ形で戻ってこられるかどうかを基準にしたい。
出典:Escamilla RF, et al. Core muscle activation during Swiss ball and traditional abdominal exercises(J Orthop Sports Phys Ther, 2010)/Escamilla RF, et al. An electromyographic analysis of commercial and common abdominal exercises(J Orthop Sports Phys Ther, 2006)/Escamilla RF, et al. Electromyographic analysis of traditional and nontraditional abdominal exercises(Phys Ther, 2006)/Calatayud J, et al. Progression of Core Stability Exercises Based on the Extent of Muscle Activity(Am J Phys Med Rehabil, 2017)
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