ダンベルフライのやり方 ひじの角度・下ろす深さ・重量と回数の目安を研究で解説
ダンベルフライの正しい手順と、ひじの角度・下ろす深さのポイントを解説。プレス種目との筋活動を比べた研究をもとに、重量・回数・セット数の目安と初心者・中級者のメニュー例、肩を守る注意点をまとめた。
ダンベルフライの正しいやり方は、ベンチに仰向けになってひじを軽く曲げた角度で固定し、胸を張ったまま両腕を弧を描くように横へ開き、胸の横がほどよく伸びたところから同じ弧で戻す動きである。ひじを曲げ伸ばしして押し上げるとプレス種目になってしまうため、ひじの角度は最後まで変えない。重量はベンチプレスよりかなり軽くし、初心者は10〜15回×2〜3セットを、ベンチプレスなどのプレス種目のあとに補助として行うのが目安である。
ダンベルフライで鍛えられる筋肉は?
ダンベルフライ(Dumbbell Fly)で主に働くのは大胸筋で、肩の前側の三角筋前部が補助として働く。腕を体の前で閉じる「水平内転」という動きを、ひじをほぼ伸ばした状態で行うのが特徴である。ひじの曲げ伸ばしがないぶん、腕の裏側の上腕三頭筋はほとんど使われない。
プレス種目との違いは研究でも調べられている。Solstadらの2020年の研究(Journal of Sports Science and Medicine、筋トレ歴約5年の男性17人)では、6回が限界の重量でバーベルベンチプレスとダンベルフライを比べた。動作全体で見ると、大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋の筋活動はベンチプレスのほうが8〜81%高く、反対に上腕二頭筋の活動はダンベルフライのほうが57〜86%高かった。ひじを曲げた角度で保つために、力こぶの筋肉が支えとして働くためと考えられる。
一方、Welschらの2005年の研究(Journal of Strength and Conditioning Research、大学生の男女12人)では、6回が限界の重量でバーベルベンチプレス、ダンベルベンチプレス、ダンベルフライの3種目を比べ、大胸筋と三角筋前部の筋活動の大きさに有意な差は出なかった。ただしダンベルフライは、動作のなかで筋肉が強く働いている時間の割合が短く、著者らは「補助種目に向く」とまとめている。2つの研究を合わせると、ダンベルフライはプレス種目の代わりではなく、プレス種目のあとに胸をもう一押しする種目として使うのが現実的である。胸全体の種目選びは大胸筋の筋トレの解説で整理している。
ダンベルフライの正しいやり方は?
正しいやり方は、下の7つの手順で「ひじの角度を固定したまま、肩を支点に弧を描く」ことである。最初は片手2〜5kg程度の軽いダンベルで動きを覚える。
- ダンベルを持ってベンチに座る:両手にダンベルを持ち、太ももの上に立てて乗せる。ひざで押し上げる勢いを使いながら、仰向けに寝る。
- 体の位置を決める:頭・肩・お尻をベンチにつけ、足裏全体で床を踏む。ベンチプレスと同じように左右の肩甲骨を寄せて下げ、胸を軽く張る。
- スタートの形を作る:ダンベルを胸の真上へ持ち上げ、手のひらを向かい合わせにする。ひじは伸ばし切らず、軽く曲げて(ひじの内側が少しゆるむ程度)その角度を固定する。
- 息を吸いながら開く:2〜3秒かけて、両腕を左右へ大きな弧を描くように下ろす。ダンベルは肩の高さより少し上、胸の横の延長線上を通す。
- 胸の伸びを感じたところで止める:ダンベルが胸の高さ付近まで下り、胸の外側がほどよく伸びたところで止める。肩の前に痛みや詰まりを感じる手前が下限である。
- 同じ弧で閉じる:胸の筋肉で腕を寄せるつもりで、下ろしたときと同じ軌道で戻す。ひじの角度は変えない。
- 上でダンベルをぶつけない:ダンベル同士が軽く近づいたところで止め、次の回数に入る。終わったらダンベルを胸の上に寄せ、ひざの上へ戻しながら起き上がる。
ベンチを30度ほど起こしたインクラインダンベルフライにすると、胸の上部の比重を変えやすい。Rodríguez-Ridaoらの2020年の研究(International Journal of Environmental Research and Public Health、トレーニング経験者30人)はベンチプレスでの結果だが、胸の上部の筋活動はベンチの角度30度で最も高く、45度を超えると三角筋前部の活動が大きくなった。フライでも角度を上げすぎると肩の種目に近づくため、30度前後にとどめるとよい。
よくある間違いとチェックポイントは?
もっとも多い間違いは、重すぎるダンベルを使ってひじを曲げ伸ばしし、プレス種目になってしまうことである。次の点をセットごとに確かめたい。
- ひじの角度が変わる:下ろすときに曲がり、上げるときに伸びるなら重すぎる。ひじの角度を一定に保てる重さまで下げる。
- 深く下ろしすぎる:腕が床に向かって大きく垂れるほど下ろすと、肩の前側に強い負担がかかる。胸の高さ付近、伸びを感じる手前で止める。
- ひじを完全に伸ばす:ひじをまっすぐ伸ばしたまま開くと、ひじの内側と肩に負担が集まる。軽く曲げた角度を保つ。
- 肩がすくむ・肩甲骨が離れる:肩が耳に近づくと胸から負荷が抜ける。肩甲骨を寄せて下げた姿勢を最後まで崩さない。
- 手首が反る・ダンベルが外へ倒れる:手首はまっすぐ、ダンベルは前腕の延長線上で持つ。
- 反動で振り上げる:下で弾ませると狙った筋肉に効きにくく、ケガのもとになる。下で一瞬止めてから戻す。
何kg・何回・何セットが目安?
重量は、ひじの角度を保ったまま10〜15回できる重さが目安で、ダンベルプレスで使う重さの半分前後から試すと選びやすい。フライは腕を伸ばした位置で肩に大きな負担がかかるため、6回以下の重い設定は向かない。セットの最後で「あと2〜3回できる」程度に止める考え方はRPE・RIRの解説が参考になる。
米国スポーツ医学会(ACSM)の2026年の指針(Currierらによる137本のシステマティックレビューの総括、参加者3万人超)は、筋肥大には部位ごとに週10セット以上の量が有効とまとめた。Schoenfeldらの2017年のメタ分析(15研究)でも、週のセット数を1セット増やすごとに筋肉の増え方が平均0.37%大きくなる関係が示されている。胸の週10セットは、ベンチプレスなどのプレス種目とフライを合わせて数えればよい。
| レベル | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者(週2回) | ダンベルプレス | 8〜12回 | 2〜3 | 2分 |
| 初心者(週2回) | ダンベルフライ | 12〜15回 | 2 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | ベンチプレス | 6〜10回 | 3〜4 | 2〜3分 |
| 中級者(週2回) | インクラインダンベルフライ(30度) | 10〜12回 | 3 | 90秒 |
| 中級者(週2回) | ダンベルフライ(フラット) | 12〜15回 | 2〜3 | 90秒 |
順番は、重い重量を扱うプレス種目を先に、フライをあとに置くのが基本である。理由は筋トレの順番の決め方で解説している。バーベルの基本はベンチプレスのやり方を参照。
ダンベルフライとケーブルフライ・マシンはどう使い分ける?
ダンベルフライは腕を開いた位置で負荷が最も大きく、腕を閉じた位置ではほぼ負荷が抜ける。胸がよく伸びた位置で鍛えられる一方、閉じたところでは効きにくい。閉じた位置まで負荷をかけ続けたい場合は、横から引っ張られるケーブルが向いている。ケーブルクロスオーバーのやり方で、高さを変えた使い分けを解説している。押す動きで胸を鍛えるマシンはチェストプレスマシンのやり方を参照。
伸びた位置で負荷がかかる種目がよいかどうかは、まだ研究が進んでいる段階である。伸ばした位置での部分的な反復の研究は伸ばした位置での半分レップの研究で紹介している。現時点では、痛みのない範囲で大きく動かすことを優先すればよい。
安全に行うための注意点は?
ダンベルフライは肩を大きく開く種目なので、肩の前側を守ることを最優先にする。
- 始める前に、軽い重さで肩回しや1セット目の軽いフライを行い、関節を温める。目的はウォームアップの解説を参照。
- 肩の前やひじの内側に鋭い痛みが出たら、その日は中止する。痛みが続く場合や、肩の脱臼・持病がある場合は医師に相談する。
- 運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休む。
- 重いダンベルを床に落とすように手放すと危険である。終わったら胸の上へ寄せ、ひざに戻してから起き上がる。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨している。胸の種目も週2回を基本に、同じ部位は48時間ほど空けると組みやすい。
よくある質問
ダンベルフライとダンベルプレスはどちらをやるべき?
胸を大きく育てたいなら、まずダンベルプレスやベンチプレスを優先する。研究ではプレス種目のほうが大胸筋の筋活動が高い、または同程度とされており、ダンベルフライはプレス種目のあとに補助として加えるのが現実的である。
ダンベルフライは何kgから始めればいい?
ひじの角度を保ったまま12〜15回できる重さが出発点で、多くの初心者は片手2〜5kgから始められる。ダンベルプレスで使う重さの半分前後を目安に試し、余裕が出たら1〜2kgずつ増やす。
ダンベルフライで肩が痛くなるのはなぜ?
下ろしすぎ、ひじを伸ばし切る、肩甲骨が離れる、重すぎる、のいずれかが多い。胸の高さ付近で止め、ひじを軽く曲げたまま行う。痛みが続く場合は医師に相談する。
ダンベルを上でぶつけたほうが効く?
ぶつける必要はない。ダンベルフライは腕を閉じた位置で負荷がほとんど抜けるため、上でぶつけても胸への刺激は増えにくい。軽く近づけたところで止めて次の回数に入る。
ダンベルフライは自宅でもできる?
ベンチがなくても、床に仰向けで行うフロアフライなら可能である。腕が床に触れたところで止まるため、下ろしすぎを防げる。器具がない場合は腕立て伏せで胸を鍛える方法もある。
KINNIKU TIMESの視点
ダンベルフライは、ひじの角度を固定して肩を支点に弧を描く、という一点さえ守れば、プレス種目とは違う角度から胸を鍛えられる補助種目である。研究ではプレス種目と比べて胸の筋活動は同程度か低いため、メニューの主役はベンチプレスやダンベルプレスに任せ、そのあとに12〜15回できる軽い重さで2〜3セット加えるのが無理のない使い方である。深く下ろすほど効くわけではなく、胸の伸びを感じる手前で止めることが、肩を守りながら続けるための条件になる。
出典:Solstad TE, et al. A Comparison of Muscle Activation between Barbell Bench Press and Dumbbell Flyes in Resistance-Trained Males(J Sports Sci Med, 2020)/Welsch EA, Bird M, Mayhew JL. Electromyographic activity of the pectoralis major and anterior deltoid muscles during three upper-body lifts(J Strength Cond Res, 2005)/Rodríguez-Ridao D, et al. Effect of Five Bench Inclinations on the Electromyographic Activity of the Pectoralis Major, Anterior Deltoid, and Triceps Brachii(Int J Environ Res Public Health, 2020)/Currier BS, et al. ACSM Position Stand: Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults(Med Sci Sports Exerc, 2026)/Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass(J Sports Sci, 2017)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて
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