筋トレの順番はどう決める?種目の正しい並べ方を研究とACSM指針で解説
筋トレの種目はどの順番で行うべきか。11研究のメタ分析とACSMの公式見解をもとに、大きい筋肉・多関節種目から並べる理由、伸ばしたい種目を最初に置く考え方、初心者・中級者の順番の例をまとめた。
筋トレの種目は「大きい筋肉・複数の関節を使う種目から、小さい筋肉・1つの関節の種目へ」が基本の順番である。ただし研究では、筋力は「先に行った種目」ほど伸びやすい一方、筋肥大は順番による差がほとんど見られていない。いちばん伸ばしたい種目を最初に置き、そのあとを大きい順に並べるのが、実践での答えになる。
筋トレの種目は、どの順番でやればいい?
一般的な推奨は、米国スポーツ医学会(ACSM)の2009年の公式見解に示された3つの原則である。「大きい筋群の種目を小さい筋群の種目より先に」「複数の関節を使う種目(多関節種目)を1つの関節の種目(単関節種目)より先に」「強度の高い種目を低い種目より先に」。理由は、疲れていない状態で最も重い負荷を扱える種目を先に行うと、セッション全体の強度を保ちやすいからである。
たとえば胸の日なら、ベンチプレス(Bench Press)→インクラインダンベルプレス(Incline Dumbbell Press)→ダンベルフライ(Dumbbell Fly)の順になる。先にフライで胸を疲れさせると、ベンチプレスで扱える重量や回数が落ちてしまう。
順番を変えると、筋力や筋肉のつき方は変わる?
筋力は変わり、筋肥大はほとんど変わらない、というのが現時点の研究のまとめである。Nunesらの2021年のメタ分析(11研究、『European Journal of Sport Science』)では、すべての筋力テストを合わせると順番による差はなかった。しかし多関節種目の筋力は多関節種目から始めた場合に(効果量0.32)、単関節種目の筋力は単関節種目から始めた場合に(効果量0.58)有意に大きく伸びていた。一方、筋肥大については順番による有意な差がなかった(効果量0.03)。著者らは「筋力の伸びはセッションの最初に行った種目で最も大きい」と結論づけている。
2026年に改定されたACSMの公式見解(137本の系統的レビュー、3万人超を統合)でも、筋力を高める要素の一つとして「セッションの最初に行うこと」が挙げられた。Simãoらの2012年の総説(『Sports Medicine』)は、順番は各セットでこなせる回数に影響し、筋肉の大きさに関係なく最初に置いた種目ほど総回数が多くなると報告している。各種目のレップ数がどう減るかの研究は種目順序とレップ数のレビュー解説で詳しく紹介している。
1回のトレーニングの順番はどう組み立てる?
次の手順で並べると、目的と基本原則の両方を満たしやすい。
- ウォームアップ:5〜10分の軽い有酸素運動のあと、1種目めを軽い重量で2〜3セット行い、動きを確かめる。
- 最優先の種目を最初に置く:記録を伸ばしたい種目、苦手な部位の種目、技術の難しい種目を一番元気なときに行う。
- 跳ぶ・速く動かす種目があるなら先に:ジャンプやメディシンボール投げのように速さが大切な種目は、疲れていない状態で行う。
- 多関節種目を大きい筋肉から:スクワット(Squat)、デッドリフト(Deadlift)、ベンチプレス、懸垂(Pull-up)、ロウ(Row)など。
- 単関節種目で仕上げる:アームカール(Arm Curl)、レッグエクステンション(Leg Extension)、サイドレイズ(Side Raise)など。
- 体幹種目は最後に:腹筋や背筋を先に疲れさせると、スクワットやデッドリフトで体を支えにくくなる。
よくある間違いとチェックポイントは?
- 腹筋を最初にやる:体幹が疲れた状態で高重量を扱うと姿勢を保ちにくい。体幹種目は最後に回す。
- 「事前疲労法」で大きな筋肉に効かせようとする:単関節種目で先に疲れさせてから多関節種目を行う方法である。Simãoらの総説は、ペックデックフライのあとにベンチプレスを行っても大胸筋の動員が高まるとは言えないとしている。
- 好きな種目ばかり最初にする:最初に置いた種目ほど伸びやすいなら、伸ばしたい種目や苦手な種目を最初にしたほうが合理的である。
- 毎回まったく同じ順番に固定する:筋肥大が主な目的なら順番の影響は小さいため、数週間ごとに入れ替えて、後半に回りがちな種目を先にする週をつくってもよい。
- 有酸素運動を筋トレの前に長く行う:筋トレと有酸素運動の順番は別の問題で、筋トレと有酸素の順番のレビューで解説している。
上半身の日や全身の日は、部位の順番をどう決める?
複数の部位を1回で鍛える日は、同じ筋肉が続けて疲れないよう、押す種目と引く種目、上半身と下半身を交互に並べると総量を保ちやすい。たとえば上半身の日なら、ベンチプレス→懸垂→ショルダープレス(Shoulder Press)→ロウ→腕の種目という並びである。ベンチプレスのあとにすぐショルダープレスを行うと、肩の前側と上腕三頭筋が続けて使われ、2種目めの重量が落ちやすい。
全身の日は、下半身の多関節種目を最初に置くことが多い。脚は扱う重量が大きく、疲れた状態で行うとフォームが崩れやすいからである。ただし上半身を優先したい時期なら、ベンチプレスを最初にしてスクワットを2番目にしても問題はない。部位の分け方そのものは分割法の組み方で比べている。
スーパーセットのときの順番は?
2種目を休みなく交互に行うスーパーセットでも、順番によって総量が変わることがある。Balsamoらの2012年の研究(『International Journal of General Medicine』、経験者12人)では、レッグカール(Leg Curl)→レッグエクステンションの順のほうが、逆の順より総量が多く、主観的なきつさも低かった。拮抗する筋肉を組み合わせる場合は、重要なほう、または高重量を扱いたいほうを先にするとよい。スーパーセットの効果そのものはスーパーセットのメタ分析を参照してほしい。
初心者・中級者の順番の例は?
| 対象 | 順番 | 種目 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|---|
| 初心者(全身) | 1 | スクワット(Squat) | 8〜12回 | 3 | 2分 |
| 初心者(全身) | 2 | ダンベルベンチプレス(Dumbbell Bench Press) | 8〜12回 | 3 | 2分 |
| 初心者(全身) | 3 | ラットプルダウン(Lat Pulldown) | 8〜12回 | 3 | 1〜2分 |
| 初心者(全身) | 4 | アームカール、プランク(Plank) | 10〜15回/30秒 | 各2 | 1分 |
| 中級者(下半身の日) | 1 | バーベルスクワット(Barbell Squat) | 4〜6回 | 4 | 3分 |
| 中級者(下半身の日) | 2 | ルーマニアンデッドリフト(Romanian Deadlift) | 6〜10回 | 3 | 2〜3分 |
| 中級者(下半身の日) | 3 | ブルガリアンスクワット(Bulgarian Split Squat) | 8〜12回 | 3 | 2分 |
| 中級者(下半身の日) | 4 | レッグカール、カーフレイズ(Calf Raise) | 10〜15回 | 各3 | 1〜2分 |
お尻の発達を最優先したい中級者なら、ヒップスラスト(Hip Thrust)を1番目に移す、という具合に入れ替えればよい。セット間の休憩時間の決め方はインターバルの目安を種目別にまとめたガイドで紹介している。回数の決め方はレップ数の目安を解説した記事が参考になる。
安全に行うための注意点は?
- 技術が難しい高重量の種目は、疲れていない前半に行う。後半に回すとフォームが崩れやすい。
- 腰や膝、肩などに痛みがある場合は、その部位に負担の大きい種目を外す。痛みが続く場合や持病がある場合は医師に相談する。
- 練習中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまいが出たら、すぐに中止する。
よくある質問
腹筋は筋トレの最初と最後、どちらがいい?
最後が基本である。腹筋や背筋は、スクワットやデッドリフトで体を支える役割を担うため、先に疲れさせると高重量の種目で姿勢を保ちにくくなる。
大きい筋肉から鍛えないと筋肉はつかない?
筋肥大については、順番による差はほとんど見られていない。ただし筋力は最初に行った種目で伸びやすいため、記録を伸ばしたい種目があるならそれを先にするとよい。
小さい筋肉を先に鍛えてもいい場面は?
腕や肩など、伸び悩んでいる小さな部位を優先したい場合である。研究でも、単関節種目の筋力は単関節種目から始めたときに大きく伸びていた。その日は後半の多関節種目の重量が落ちることを前提に組む。
マシンとフリーウェイトはどちらを先にやる?
技術が必要で、扱う重量が大きいフリーウェイトの多関節種目を先にするのが一般的である。マシンは軌道が安定しているため、疲れてきた後半でも比較的安全に行いやすい。
毎回同じ順番でやるべき?
筋力の記録を伸ばしたい種目は最初に固定したほうがよい。筋肥大が目的の補助種目は、数週間ごとに順番を入れ替えて、後半に回りがちな種目を先に行う週をつくるのも一つの方法である。
KINNIKU TIMESの視点
種目の順番は「大きい筋肉・多関節から小さい筋肉・単関節へ」を土台にしつつ、最初の枠には自分が最も伸ばしたいものを置く、という2段階で考えると迷わない。研究は、筋力は最初の種目ほど伸びやすく、筋肥大は順番に大きく左右されないことを示している。順番に正解を一つだけ求めるより、目的に合わせて最初の1種目を選ぶことに時間を使うほうが、結果につながりやすい。
出典:ACSM Position Stand: Progression models in resistance training(Med Sci Sports Exerc, 2009)/ACSM Position Stand(Currier ら, Med Sci Sports Exerc, 2026)/Nunes ら(Eur J Sport Sci, 2021)/Simão ら(Sports Med, 2012)/Balsamo ら(Int J Gen Med, 2012)
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