筋トレ後の『ホルモン急上昇』は筋肥大の鍵ではない 56人調査で判明
筋トレ直後に急上昇するテストステロンや成長ホルモンは、筋肥大・筋力アップの「鍵」ではないとする研究結果がある。
56人の男性を12週間追跡した学術論文で、急性ホルモン反応と筋力・除脂肪量の増加に明確な相関は見られなかった。
筋トレ直後に分泌されるテストステロンや成長ホルモンの「急上昇」は、筋肉を大きくする直接の原動力とは言えないとする研究結果が、学術誌「European Journal of Applied Physiology」に掲載されている。カナダ・マクマスター大学のウェスト氏らの研究チームが、56人の若い男性を12週間のレジスタンストレーニングで追跡し、運動直後の急性ホルモン反応と筋力・筋肥大の変化との関連を検証した。
「ホルモンが急上昇するほど筋肉が育つ」という通説
高強度のセットを追い込んで「パンプ」や「追い込み」を重視するほどテストステロンや成長ホルモンが大量に分泌され、それが筋肥大を後押しする、という考え方は筋トレ愛好者の間で広く語られてきた。実際、高強度の筋トレ直後には血中のテストステロンや成長ホルモンが一時的に上昇することが知られている。問題は、この急性の上昇が「筋肉が大きくなるかどうか」を実際に左右しているのかという点だ。
56人・12週間の追跡調査でわかったこと
この論文では、12週間の高強度レジスタンストレーニングプログラムに参加した56人の若年男性を対象に、トレーニング7週目の時点で運動後の急性ホルモン反応(テストステロン、成長ホルモン、IGF-1など)を測定し、それが最終的な筋力増加・除脂肪体重の増加・筋線維の断面積の変化とどう関連するかを横断的に分析した。
その結果、運動によって誘発されるホルモンの急性上昇は、筋力の増加と有意な相関を示さなかった。成長ホルモンとコルチゾールについては筋線維断面積の増加とわずかな正の相関が見られたものの、その関連性が生物学的にどれほど意味を持つのかは不明確だとされている。テストステロンの急性上昇については、トレーニングへの適応と相関していなかった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 56人の若年男性 |
| 期間・内容 | 12週間の高強度レジスタンストレーニング |
| 測定方法 | 7週目に運動後の急性ホルモン反応(テストステロン・成長ホルモン・IGF-1等)を測定 |
| テストステロン急性反応 | 筋力・筋肥大の増加と有意な相関なし |
| 成長ホルモン・コルチゾール | 筋線維断面積増加とわずかな正の相関(生物学的意義は不明確) |
| 掲載誌 | European Journal of Applied Physiology(2012年7月、オンライン公開2011年11月) |
研究デザインの限界も押さえておきたい
この研究は、ホルモン反応の大きさと筋肥大・筋力の変化を横断的に関連づけた観察研究であり、ホルモンを人為的に操作して比較する実験ではない。したがって「急性ホルモン反応が筋肥大の原因ではない」と完全に証明したものではなく、「急性ホルモン反応の大きさと、実際に起きた筋肥大・筋力増加との間に、はっきりした相関が見当たらなかった」という関連研究として理解するのが正確である。
筋肥大を左右する本当の要因は何か
では筋肥大を決めている要因は何か。KINNIKU TIMESの過去記事「筋肥大の3つの仕組み」で解説した通り、メカニカルテンション(筋肉にかかる力学的な張力)、筋損傷、代謝的ストレスの3つが主要なメカニズムとして挙げられている。また、週あたりのセット数などトレーニングボリュームの管理も重要で、こちらは「筋肥大には週何セットが必要か」で詳しく取り上げている。
よくある質問
筋トレ後にホルモンの分泌量を増やす工夫は意味がないのですか?
今回の研究からは、急性のホルモン反応の大きさそのものと筋肥大・筋力の増加の間に明確な相関は見られなかった。ホルモンの急上昇を狙うよりも、トレーニングの量・強度を継続的に管理することの方が重要だと考えられる。
この研究は「ホルモンは筋肥大に関係ない」と証明したのですか?
いいえ。トレーニング適応とホルモン反応を関連づけた観察研究であり、因果関係を直接証明したものではない。成長ホルモンとコルチゾールには弱い相関も報告されており、単純に「無関係」と言い切れるものではない。
KINNIKU TIMESの視点
「追い込んでホルモンを出す」ことそのものを目的にするより、長期的に漸進的な過負荷をかけ続け、トレーニングボリュームを適切に管理することの方が筋肥大への影響は大きいと考えられる。市販サプリメントの中には「テストステロンを急増させる」といった訴求をするものもあるが、急性のホルモン反応自体が筋肥大の決定的な鍵ではないという今回の知見を踏まえると、過大な期待は避けたい。ホルモンバランスに不安がある場合や、サプリメント利用を検討する際は、自己判断ではなく医師に相談することをおすすめする。
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