筋トレ後の飲酒、タンパク質合成を最大37%低下させると8人調査で判明
アルコールを摂取すると、筋トレ後の筋タンパク質合成速度が最大37%低下することが、豪州の研究チームによる試験で示された。プロテインと一緒に飲んでも、合成速度の低下を防ぐことはできなかったという。
筋トレ直後にお酒を飲むと、筋肉の材料となる筋タンパク質合成の速度が最大37%低下することが、オーストラリア・カトリック大学などの研究チームが2014年に米医学誌「PLoS ONE」で発表した試験で示された。プロテインを同時に摂取しても、アルコールによる低下を防ぐことはできなかったという。
どんな研究で分かったのか
この研究は、Evelyn B. Parr氏らオーストラリア・カトリック大学(Australian Catholic University)とディーキン大学などの共同研究チームが実施し、2014年2月に学術誌「PLoS ONE」(doi:10.1371/journal.pone.0088384)に発表した。身体的に活動的な男性8人を対象に、レジスタンス運動と持久系運動を組み合わせた「コンカレントトレーニング」を1回行わせたうえで、運動後の栄養摂取条件を変えて筋生検(筋肉組織の採取)を行うランダム化クロスオーバー試験(全員が異なる条件を日を変えて経験する方式)である。
運動後に摂取したものは次の3条件で、いずれも日を変えて同じ8人全員が試している。
- PRO条件:ホエイプロテイン25gのみ
- ALC-PRO条件:ホエイプロテイン25g+アルコール(体重1kgあたり1.5g)
- ALC-CHO条件:マルトデキストリン(糖質)25g+アルコール(体重1kgあたり1.5g、プロテインなし)
ここでのアルコール摂取量(体重1kgあたり1.5g)は、論文中で「標準的なアルコール飲料にして12±2杯に相当する」と説明されており、日常的な「軽く一杯」のレベルではなく、かなりまとまった量の飲酒を再現した実験条件である点に注意が必要である。筋生検は運動前の安静時、運動後2時間、運動後8時間の3回行われた。
結果:タンパク質合成はどれだけ落ちたか
論文が報告した筋原線維タンパク質合成速度(MPS、数値が高いほど筋肉の材料が活発に作られていることを示す)は次の通りだった。
| 摂取条件 | MPS(%・時間) | PRO条件比 |
|---|---|---|
| PRO(プロテインのみ) | 0.052±0.008 | 基準 |
| ALC-PRO(プロテイン+アルコール) | 0.039±0.008 | 24%低下 |
| ALC-CHO(アルコールのみ、プロテインなし) | 0.032±0.005 | 37%低下 |
研究チームは論文中で「アルコール摂取は、プロテインと一緒に摂取した場合でも、コンカレント運動後の筋タンパク質合成速度を低下させるという新しい知見を示した」と結論づけている。プロテインを飲んでもアルコールの悪影響を打ち消せなかった、という点がこの研究の主な発見である。
なぜ運動後の飲酒が良くないとされるのか
筋肉は、運動による刺激をきっかけに筋タンパク質の合成が高まり、そこに材料となるアミノ酸(プロテイン由来)が供給されることで修復・増強されていくと考えられている。この研究では、アルコールがその合成反応の信号伝達を妨げている可能性が示唆されているが、論文自体は信号伝達の詳細な分子メカニズムまでは特定していない。あくまで「運動後のタンパク質合成という指標が、アルコール摂取によって下がった」という結果を示したものである。
この研究の限界として知っておきたいこと
結果を読む際は、以下の点に注意する必要がある。
- 対象者はわずか8人の小規模な試験であり、女性は含まれていない。
- 測定されたのは筋タンパク質合成速度という短期的な生化学指標であり、実際に数週間・数カ月単位で筋肉量や筋力がどう変化するかを直接測定したものではない。
- 使われたアルコール量(標準飲料12±2杯相当)は、通常の「晩酌」を大きく上回る量であり、少量の飲酒でも同程度の影響が出るかはこの研究だけでは分からない。
- 運動の種類もレジスタンス運動のみではなく持久系運動と組み合わせた「コンカレントトレーニング」であり、筋トレのみを行った場合に同じ結果になるとは限らない。
このように、観察された関連が実際の筋肥大・筋力の結果にそのまま直結すると断定することはできない点に留意してほしい。飲酒の習慣やペースについて不安がある場合は、自己判断で極端な制限や過剰摂取をせず、医師や管理栄養士に相談することをすすめる。
よくある質問
筋トレ後にお酒を飲むのは絶対にダメなのか
この研究が示したのは「まとまった量(標準飲料12±2杯相当)のアルコールを運動直後に摂取した場合、筋タンパク質合成が下がった」という一例であり、少量の飲酒まで一律に禁止すべきという結論を出した研究ではない。筋肥大を優先したいトレーニング期は、運動直後の多量の飲酒は避けた方が無難だと考えられる。
プロテインを飲んでから酒を飲めば問題ないのか
この研究では、プロテイン25gと一緒にアルコールを摂取したALC-PRO条件でも、プロテインのみのPRO条件に比べて合成速度が24%低かった。プロテインを摂取すればアルコールの影響を完全に打ち消せる、という結果にはなっていない。
KINNIKU TIMESの視点
筋肥大や筋力アップの効果を最大化したいトレーニング期であれば、この研究結果を踏まえ、運動直後のまとまった量の飲酒は避け、プロテインや食事による栄養補給を優先する方が無難だろう。一方で、この研究はあくまで8人・1回のみの試験であり、日常的な軽い飲酒や長期的な筋肉量への影響まで証明したものではない。付き合いでの飲酒を含め、量とタイミングを自分なりに調整しながら付き合っていくのが現実的な付き合い方といえそうだ。飲酒量そのものについて心配な場合は医師に相談してほしい。
筋タンパク質合成に関連するテーマとしては、「一晩の睡眠不足で筋タンパク質合成が18%低下、豪州の研究で確認」「筋トレ後の休養日はなぜ必要か、筋タンパク質合成の推移から解説」も参考にしてほしい。
出典:Parr EB, et al. "Alcohol Ingestion Impairs Maximal Post-Exercise Rates of Myofibrillar Protein Synthesis following a Single Bout of Concurrent Training." PLoS ONE 9(2): e88384 (2014)/Australian Catholic University Research Bank(著者所属機関リポジトリ)
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