MCTオイルは持久力を上げない システマティックレビューで判明
MCTオイルは持久系の運動パフォーマンスを高めない。2022年のシステマティックレビューで、血糖・脂質酸化・呼吸交換比のいずれにも効果は確認されなかった。
MCTオイル(中鎖脂肪酸油)を摂取しても、持久力パフォーマンスは向上しない。米ベイラー大学のTomas J. Chapman-Lopez氏とYunsuk Koh氏が2022年9月、学術誌「Journal of Obesity & Metabolic Syndrome」に発表したシステマティックレビューで、そう結論づけられたことが分かった。MCTオイルは「体脂肪になりにくい」「運動中のエネルギー源になりやすい」として筋トレ愛好者や市民ランナーの間で人気のサプリメントだが、少なくとも持久系の運動パフォーマンスを押し上げる効果は確認できなかったという。
MCTオイルとはそもそも何か
MCTオイルは、ヤシ油やパーム核油に含まれる中鎖脂肪酸(Medium-Chain Triglyceride)を精製した油である。一般的な油脂(長鎖脂肪酸)より分解・吸収が速く、肝臓でケトン体に変換されやすいという代謝的な特徴を持つ。この特徴から、「運動中に素早くエネルギーとして使われ、持久力を高めるのではないか」という期待が、スポーツ栄養の分野で長く語られてきた。
システマティックレビューでは何が調べられたのか
Chapman-Lopez氏らは、PubMed・Embase・CINAHL・Cochrane Libraryの主要データベースを横断的に検索し、健康な成人を対象にMCTオイル摂取と持久系の運動パフォーマンス・基質利用(体がエネルギー源として糖質と脂質のどちらを使うか)との関係を調べた複数の研究を統合・精査した。対象はいずれも一過性(急性)の持久運動を伴う試験である。
結果はどうだったのか
レビューの結論は明確である。MCTオイルの摂取は、持久系の運動パフォーマンスを改善せず、呼吸交換比(体が糖質と脂質のどちらを主に燃やしているかを示す指標)・血糖濃度・脂質および糖質の酸化量のいずれにも、有意な影響を与えなかった。興味深いのは、MCTオイル摂取によって血中ケトン体の濃度自体は上昇していた点である。しかし論文は、「運動中、体はMCTオイル由来のケトン体を主要なエネルギー源として十分に利用できていなかった」と指摘している。つまり、ケトン体は増えても、それが持久力の向上という形では現れなかったということだ。
なぜ「効く」というイメージが広まったのか
MCTオイルが脂肪燃焼やケトン体生成を促す代謝的な特徴を持つこと自体は事実である。ただし、代謝指標が変化することと、実際の運動パフォーマンス(走行タイムや疲労困憊までの時間など)が向上することは別の問題である。今回のレビューは、代謝面での変化が必ずしも競技力の向上に直結しないことを示した一例といえる。なお本レビューはシステマティックレビューであり、個々の対象者数や研究の質にはばらつきがある点には留意が必要である。
よくある質問
Q. MCTオイルを摂ると太りにくいというのは本当か。
A. 今回のレビューは運動パフォーマンスへの影響を扱ったものであり、体重管理や脂肪蓄積への影響を直接検証したものではない。体重管理の効果を期待する場合は、医師や管理栄養士に相談した上で判断するのが望ましい。
Q. MCTオイルは筋トレのパフォーマンスにも効果がないのか。
A. 今回のレビューが対象としたのは持久系の運動であり、筋力トレーニングへの影響を直接検証したものではない。筋トレへの効果について結論づけるには、別途その分野の研究を確認する必要がある。
KINNIKU TIMESの視点
「MCTは速攻でエネルギーになるから持久力が上がる」という説明は、代謝の仕組みとしては筋が通っているように聞こえる。しかし今回のレビューが示すように、体内でケトン体が増えることと、実際の運動パフォーマンスが向上することは必ずしもイコールではない。サプリメントを選ぶ際は、「作用機序のもっともらしさ」ではなく、実際にパフォーマンスを測定した研究で効果が確認されているかどうかを基準にしたい。オメガ3のように「体に良さそう」というイメージが先行しがちなサプリメントについては、オメガ3は筋肥大に効く?筋トレ経験者46人・14週の二重盲検、1日6.3gでも上乗せなしも参考にしてほしい。
出典:
Chapman-Lopez TJ, Koh Y. "The Effects of Medium-Chain Triglyceride Oil Supplementation on Endurance Performance and Substrate Utilization in Healthy Populations: A Systematic Review." Journal of Obesity & Metabolic Syndrome, 2022, Vol.31 No.3. DOAJ(オープンアクセス論文情報)
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