レップは速くても遅くても筋肥大は同等。14研究・278人のメタ分析で差はごくわずか
1回の動作にかける時間(テンポ)と筋肥大の関係を調べた14研究・278人のメタ分析で、平均約1秒の速いテンポと平均約3.5秒の遅いテンポの差はごくわずかだった。「ゆっくり挙げるほど筋肉が育つ」という根拠は乏しく、幅広いテンポで筋肥大を狙える可能性が示された。
「下ろすときは3秒かけて、ゆっくり」――ジムでよく聞くこの教えは、筋肥大にとって本当に必要なのか。レップのテンポ(1回の動作にかける時間)と筋肥大の関係を検証したメタ分析が、米国ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の学術誌『Journal of Strength and Conditioning Research(JSCR)』に掲載された。論文名は「How Slow Should You Go?(どれくらい遅くすべきか)」。結論は、速いテンポと遅いテンポの差はごくわずかというものだった。
対象と方法:14研究・278人を統合
エネス氏(A. Enes)やブラッド・ショーンフェルド氏らの研究チームは、テンポの違いを比較した14の比較試験、計278人のデータを統合した。比較は大きく「速いテンポ」(1回あたり平均約1秒)と「遅いテンポ」(同約3.5秒)に分けて行われた。対象の多くは若年成人で、試験期間はおおむね6〜12週間、週2〜4回のトレーニングが中心だったという。
結果:効果量0.43と0.34、差は0.09
トレーニング前後の筋肥大の大きさを効果量で表すと、速いテンポが0.43、遅いテンポが0.34と、どちらも中程度の筋肥大がみられた。両者を直接比べた差は0.09で速いテンポがわずかに上回ったが、実用上は無視できる程度の差と評価されている。つまり「ゆっくり挙げるほど筋肉が育つ」という裏付けは得られなかったことになる。
| 比較 | 1回あたりの時間(平均) | 筋肥大の効果量 |
|---|---|---|
| 速いテンポ | 約1秒 | 0.43 |
| 遅いテンポ | 約3.5秒 | 0.34 |
10年前のメタ分析とも一致
この結論は、ショーンフェルド氏らが2015年に学術誌『Sports Medicine』で発表したメタ分析とも一致する。当時は、限界まで行い、6週間以上続けた8研究を分析し、「1回あたり0.5〜8秒の範囲であれば筋肥大は同程度」と結論づけている。一方、1回に10秒を超えるような極端に遅い動作は筋肥大の面で劣る可能性があるとも指摘した。ただし、この点を調べた比較試験は少なく、確定的な結論は出せないとも述べている。
限界:対象の偏りと試験の少なさ
対象は若年成人が中心で、測定された筋肉も太ももの前側や上腕など一部に限られる。長年高いレベルで途切れなくトレーニングを続けてきた人でも同じ結果になるかは、今後の検証が必要だ。また統合された試験は14本で、一つひとつの規模も大きくない。
KINNIKU TIMESの視点
筋肥大が目的なら、テンポを厳密に数えることに注意を割く必要は薄い。大切なのは、収縮と伸張の両局面で重量をコントロールし、十分な可動域と限界近くまでの追い込みを確保することだ。「挙げるのに約1秒、下ろすのに1〜3秒」といった自然なリズムで十分と考えてよい。
逆に、極端に遅いテンポは扱える重量や回数を大きく減らす。フォーム習得やケガ明けのリハビリ、軽い重量しか使えない環境など、ゆっくり行う理由がある場合を除けば、「遅いほど効く」と考えてテンポを落とす必要はないだろう。テンポよりも、週のセット数や漸進的な負荷の増加を安定して積み上げることが優先と言える。
出典:Enes A, et al. How Slow Should You Go? A Systematic Review With Meta-Analysis of the Effect of Resistance Training Repetition Tempo on Muscle Hypertrophy. Journal of Strength and Conditioning Research/Schoenfeld BJ, et al. Effect of repetition duration during resistance training on muscle hypertrophy. Sports Medicine(2015年4月)/Strength Science「Lifting Tempo and Muscle Growth: How Slow Should You Go?」