THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 論文解説・新常識  › 記事
論文解説・新常識

1日3秒の筋トレで筋力は伸びる?ゆっくり下ろす動作を週5日・4週間で11.5%向上

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
ジムでダンベルを持つ男性
SUMMARY|この記事の要約

重りをゆっくり下ろす「エキセントリック収縮」を1日1回・3秒、週5日続けただけで、4週間後の腕の筋力は合計11.5%向上したと豪州と日本の研究チームが報告した。同じ回数を週1回にまとめると筋力は伸びず、週3日では伸びが小さく、週2日では変化がなかった。

1日たった3秒、重りをゆっくり下ろす動作を全力で行うだけでも、4週間で腕の筋力は伸びた。オーストラリアのエディス・コーワン大学(ECU)の野坂和則(Ken Nosaka)教授と、新潟医療福祉大学の中村雅俊(Masatoshi Nakamura)氏らの研究チームが、2022年から2023年にかけて『Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports』誌と『European Journal of Applied Physiology』誌に発表した一連の研究である。短時間でも「頻度」が筋力の伸びを左右することを示した点で、忙しい人の筋トレを考えるうえで今も参照される成果だ。

ダンベルを持つ人の腕
写真はイメージです(Unsplash)

「1日3秒」の研究とは?対象者と方法

2022年2月に発表された最初の研究では、健康な大学生52人のうち39人が、腕を曲げる筋肉(肘屈筋)に対して最大努力の筋収縮を1日1回・3秒、週5日・4週間行った。4週間の運動時間は合計60秒である。収縮の種類は、重りをゆっくり下ろすときの「エキセントリック(伸張性)」、持ち上げるときの「コンセントリック(短縮性)」、動かさずに力を出す「アイソメトリック(等尺性)」の3通りで比べ、残る13人は運動をしない対照群とした。

収縮の種類 4週間後の筋力の変化
エキセントリック(下ろす) 短縮性筋力+12.8%、等尺性筋力+10.2%、伸張性筋力+12.2%(合計で+11.5%)
コンセントリック(持ち上げる) 等尺性筋力のみ+6.3%
アイソメトリック(止める) 伸張性筋力のみ+7.2%
対照群(運動なし) 変化なし

3種類の中で、3つの筋力すべてが伸びたのはエキセントリックだけだった。

まとめて週1回やるのではダメ?

同じ2022年の8月に発表された研究では、週あたりの回数をそろえて頻度だけを変えた。1日6回を週5日(週30回)行う群、30回を週1日にまとめて行う群、週1日に6回だけ行う群を4週間比べた結果は次のとおりである。

  • 6回×週5日:筋力が10%超向上し、筋肉の厚さ(筋厚)も増えた
  • 30回×週1日:筋厚は5.8%増えたが、筋力は伸びなかった
  • 6回×週1日:筋力・筋厚とも変化なし

野坂教授は大学の発表で「筋肉はより頻繁に刺激されることを好むようだ」と述べている。

週何日やれば効果が出る?

2023年7月に発表された研究では、1日1回・3秒のエキセントリック収縮を週2日または週3日、4週間行う群(各13人、計26人)を比べた。

頻度 短縮性筋力 伸張性筋力
週2日 有意な変化なし 有意な変化なし
週3日 +2.5% +3.9%
週5日(2022年の研究) +12.8% +12.2%

週3日でも伸びはみられたが、週5日の結果より明らかに小さかった。野坂教授は「筋肉の適応は休んでいる間に起こる」として、休養日の必要性にも触れている。

研究の限界は?

いずれも対象は健康な若い成人で、各群13人前後と小規模である。鍛えた部位は肘屈筋だけで、筋力は専用の測定機器で測った。期間は4週間と短く、脚など大きな筋肉や、筋トレ経験者で同じ結果になるかは分かっていない。週5日群と週3日群の比較は別々の研究どうしの比較である点にも注意が必要だ。

よくある質問

エキセントリック収縮とは?

筋肉が力を出しながら引き伸ばされる動きで、ダンベルカールならダンベルをゆっくり下ろす局面に当たる。この研究では3種類の収縮のうち、筋力の伸びが最も大きかった。

週1回まとめてやっても意味がない?

筋力に限れば、30回を週1回にまとめた群は4週間で伸びなかった。ただし筋厚は5.8%増えており、筋肉が育たないという意味ではない。

週何日やればいい?

一連の研究では、週2日は変化なし、週3日で小さな伸び、週5日で10%を超える伸びだった。ごく短い運動ほど、頻度を確保することが大切だといえる。

KINNIKU TIMESの視点

この研究は「3秒で十分」という話ではなく、「刺激の質と頻度がそろえば、ごく短い運動でも体は反応する」ことを示したものだ。普段のトレーニングでも、ダンベルやバーベルを下ろす局面を雑にせず、2〜3秒かけてコントロールする意識は取り入れやすい。ジムに行けない日も、椅子からゆっくり座る、階段をゆっくり下りるといった下ろす動作を毎日少しずつ積み重ねる価値はあるだろう。ただし研究は機器で安全に負荷をかけた条件であり、いきなり最大努力の重さで行うと筋肉痛やけがにつながりやすい。軽めの重さから始めたい。短時間の運動を1日に分ける方法については、スクワットを1日3回に分けた8週間試験も参考になる。下ろす動作を重視した筋トレの別の効果は筋トレでも筋肉は柔らかくなる?で紹介している。


出典:EurekAlert!/エディス・コーワン大学発表(2022年2月1日)/EurekAlert!/エディス・コーワン大学発表(2022年8月14日)/EurekAlert!/エディス・コーワン大学発表(2023年7月28日)/Yoshida R, et al. European Journal of Applied Physiology(2023年)