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論文解説・新常識

軽い重量で20回でも筋肉は育つ。経験者49人の12週間比較で高重量と同等の筋肥大

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 4分
白い背景に置かれたダンベル
SUMMARY|この記事の要約

筋トレ経験のある男性49人を、最大挙上重量の30〜50%で20〜25回行う群と、75〜90%で8〜12回行う群に分けて12週間比較した結果、筋肥大に差はみられなかった。どちらも限界まで行うことが条件である。

筋肉を大きくするには重い重量を扱わなければならない――その常識に一石を投じた研究がある。研究チームが2016年に発表したランダム化比較試験では、筋トレ経験者が軽い重量で20回以上反復しても、重い重量で8〜12回反復した場合と同程度の筋肥大が得られた。条件は、どちらも自分の意思で続けられなくなる限界まで行うことである。

ダンベルを握ってトレーニングする人
写真はイメージです(Unsplash)

研究の背景:経験者でも同じことが言えるか

研究チームは以前、筋トレ未経験者を対象に片脚ずつ条件を変える実験を行い、高重量と低重量で筋肥大と筋力の伸びが同程度になることを報告していた。ただ、「初心者は何をしても伸びる」という反論は根強い。そこで今回は、筋トレ経験のある男性を対象に、全身のトレーニングで同じ問いを検証した。あわせて、トレーニング直後に分泌が高まるホルモンの量が、筋肉の増え方と関係するかどうかも調べた。

研究デザイン:経験者49人、12週間

Robert W. Morton氏、Stuart M. Phillips氏らの研究チームは、筋トレ経験のある若い男性49人(平均23歳)を無作為に2群に分けた。

重量(1RM比) 1セットの回数 人数
高回数群 約30〜50% 20〜25回 24人
低回数群 約75〜90% 8〜12回 25人

1RMは1回だけ挙げられる最大重量を指す。両群とも12週間の全身トレーニングを行い、すべてのセットを自分の意思で続けられなくなるまで反復した。トレーニング前後に筋力測定、DEXA法による除脂肪量の測定、筋肉の組織採取による筋線維の断面積の測定を行い、運動直後のホルモン濃度の変化も調べた。

結果:筋肥大は同等、ベンチプレスの1RMだけ差

両群とも、すべての種目で1RMが有意に向上した。群間で差がついたのはベンチプレスの1RMのみで、伸び幅は高回数群が平均9kg、低回数群が平均14kgと、重い重量で練習した群が上回った。

一方、除脂肪量(脂肪と骨を除いた体重)と、タイプI・タイプII両方の筋線維の断面積は両群とも有意に増加し、群間に有意な差はなかった。また、運動直後にテストステロンなどいわゆる「同化ホルモン」の濃度が上がる程度と、筋力や筋肥大の伸びとの間に有意な相関はみられなかった。研究チームは、限界まで行う場合、使用する重量は筋肥大を左右せず、筋力についてもおおむね左右しないと結論づけている。

研究の限界

対象は筋トレ経験のある若い男性に限られ、女性や高齢者に同じ結果が当てはまるかは分からない。期間は12週間で、より長期間での比較は行われていない。また、両群ともすべてのセットを限界まで行っており、余力を残す一般的なやり方で同じ結果になるかは、この研究だけでは判断できない。軽い重量で限界まで行うには強いきつさを伴うため、実際のジムでは本当に限界近くまで追い込めているかが結果を左右する可能性もある。

KINNIKU TIMESの視点

筋肥大が目的なら、「重さ」そのものにこだわりすぎる必要はない。関節に不安がある人や、自宅で重い器具がない人でも、軽めの重量で回数を増やし、限界近くまで行えば筋肉を育てられる可能性がある。

ただし、ベンチプレスの1RMは重い重量で練習した群がより伸びた。ビッグ3の記録を伸ばしたい人は、高重量の練習を外さないほうがよいだろう。実践的には、多関節種目は中〜高重量、単関節種目やマシン種目は中〜軽重量と使い分け、いずれも限界に近いところまで丁寧に反復するのが現実的な落としどころである。


出典:Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, Mazara N, McGlory C, Quadrilatero J, Baechler BL, Baker SK, Phillips SM. Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. Journal of Applied Physiology(2016)